男性の介護 働き盛りに負担重く
男性の介護
働き盛りに負担重く
家事に不慣れ、近隣関係も希薄
(財団法人認知症予防協会 新時代より)
超高齢化社会の進展に伴って、親や妻らを介護する男性が増えている。女性に比べて介護に不慣れで、近隣とのかかわりも薄い。一人で介護を抱え込む人も多く、肉体的、身体的に追い込まれ、最悪の場合は、殺人や心中にいたる悲劇も起きている。高齢者の一人暮らしや、高齢者夫婦だけの家庭が増える中、どう家族の負担を減らしていくかが問われている。
年間25000人が離職、転職
「田舎の父親が脳梗塞で倒れた」「妻が交通事故にあった」
介護はある日突然、前触れもなしにやってくる。家事に不慣れな男性が家族の介護に直面したらどうなるのか。厚生労働省の調査によると、介護に占める男性の割合は、約3割にも達するという。妻が倒れた場合は夫が介護するケースは珍しくないが、親を介護する場合は、息子が担うケースが最近増えているようだ。
特に近年40代、50代になっても結婚しない男性が増え、2009年の国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料」によれば、50歳時の男性の未婚率は約16%、10年前に比べ7ポイントも上昇している。しかも、少子化で子供は、長男一人という家庭も結構ある。親が倒れれば当然のように息子の肩にかかってくる。
男性は食事、掃除、洗濯など家事を妻や母親に任せがちだ。お湯をガスコンロで沸かせない人だっている。団塊の世代であればなおさらだ。そんな人が突然、介護を背負わされたどうなるか。ただでさえ、介護は大変なのに、これではパニックに陥っても不思議ではない。しかも、40代、50代といえば働き盛りで、会社で責任ある地位や立場の人も多い。介護休暇の制度はあっても、なかなか、取りづらいのが実情ではないだろうか。結局、介護や看病のために退職に追い込まれるケースが後を立たない。
総務省での終業構造基本調査でも06年10月から1年間に介護などのために男性25000人が離職や転職に追い込まれている。慣れない介護に加え、親や妻が認知症で徘徊や妄想など症状が出れば、負担はさらに重くなる。
悲劇・・・・その前に
特に男性は、女性に比べ一人で介護を抱え込みがちといわれる。介護疲れなどから虐待に走るケースも増えている。厚労省の調査によると、「高齢者を虐待している」と相談や通報を受け、自治体が虐待と判断したケースは20008年度だけで1万4889件で前年度より12%増えた。このうち、同居者による虐待が9割を占め、その多くが息子(40%)夫(17%)である。
介護による悲劇をなくすためには、どうすればよいか。一人で抱え込まず、兄弟がいたら、全員で分担する。困ったときは、近くの地域包括支援センターに相談してアドバイスを受けるもよいだろう。また、悩みはストレスを解消したい場合は、近くの「認知症の人と家族の会」に参加し、悩みを打ち明けるのも手だ。さらに、家族の会や認知症予防財団などが行っている電話相談を活用するのも一つの方法かもしれない。
最近、介護する男性の集まりが各地に続々、誕生しつつある。昨年には、男性介護者の全国組織として「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」が発足した。男同士気軽に介護の悩みを打ち明け、情報交換するだけでも肩の荷が軽くなるはずだ。ケア友がいれば、介護の励みにもつながるだろう。
介護は出口が見えないトンネルを手探りで進むようなもの、といわれる。周囲の力を借りながら、気負わずに長い介護生活を乗り切りたいものだ。
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