認知症の人と家族の会「ぽ~れぽ~れ」リレーエッセイから
「ぽ~れぽ~れ」認知症の人と家族の会月刊誌・リレーエッセイ
新しい薬剤の手応え
「家族の会」青森県支部顧問・広前大学 神経内科 教授東海林幹夫
昨日も認知症の新薬のお話を載せました。より理解が深まると思います。
昨日は群馬の前橋市で開かれた研究会にお邪魔し、認知症の新しい薬剤についての講演をしてきました。1昨日は、和歌山市に呼ばれ、帰りの青森空港に着くとその足でつくしが丘病院で介護福祉士と勉強会を行いました。最近の土日はこのような日々が続いています。何故このようなことになったかというと、アルツハイマー病の3つの新薬の処方が全国的に始まったからです。
震災の影響で実質的に5月からの開始となりましたが、パッチ薬の発売も7月にあり、専門医の間でこれらの薬剤をどのように使い分けるのかが話題となっています。発売前にはマスコミでも大きく取り上げられ、患者・家族の方々の関心も私ども以上でした。
アリセプトに似た作用の薬剤が2つ、別の作用のものが1つと外来で申しあげますと、アリセプトをすでに使われている方は、メマンチンの併用を望まれ、新たの外来にこられた方はレミニールやパッチ薬の処方を希望される傾向があります。いづれの薬剤も週から月ごとの増量スケジュールであるため、効果や副作用の評価は来年の春ぐらいまでになるとは思いますが、これまでに2~3気付いたことがありました。.
まずは、アセチルコリン分解を阻害する薬剤はアリセプトと同様に自発性低下などの陰性症状に効果が見られました。消化器症状や除脈などの困った副作用も案外少なく、外来での増量が順調に進んでいるようです。最大量に増やして数ヶ月経った時点の効果の手ごたえを医師ばかりでなく、患者さんと家族の方々も持たれているのではないでしょうか。
メマンチンは興奮などの陽性症状に効果がみられ、家族から感謝されることも多いのですが、10mgから15mgに増量時に一部の方に眠気が出ることがあり、注意が必要でした。
アリセプトの発売と介護保険の開始によって認知症の診療はこの10年は大きな変化がみられましたが、2011年は今後の10年の認知症診療の新たな節目の年です。まず、日本の認知症診療ガイドラインが10年ぶりに改定され、欧米でもバイオマーカーなどの最近の研究成果を取り入れたアルツハイマー病や軽度認知障害の診断基準が27年ぶりに改訂されました。基本的な治療法の開発は第3相臨床試験で足踏み状態ですが、確実に研究は進んでいます。現在開発されている根本的な薬剤の1つ以上が現実に使用できるようになり、今後の10年間に認知症診療に大きな発展が見られることを切に願っています。
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