介護者の心のケア必要・認知症長寿社会パート5
認知症長寿社会パー5
(信濃毎日新聞より)
臨床心理士・上智大教授 黒田由紀子さんに聞く
介護者の心のケア必要
認知症を介護している家族が自殺や心中を考えてしまうことは介護関係者の間でよく指摘されているが、アンケートでは6人に1人が考えたことがあるとしており、その多さを改めて感じた。認知症の人に接するとき、多くの専門家は笑顔で寄り添うことを求める。でも、家族がそうるのは簡単ではない。
認知症になる前、それぞれの家族に怒ったり喜びあったりの日常を送ってきた歴史がある。その上に介護の日々が積み重なっている。大切な家族が記憶障害を伴って急速に衰えていく。それはとてもつらい喪失体験で、精神的なダメージは計り知れない。
アンケートには多くの介護者が切実な訴えを生々しく伝えてきた。兄弟など身近な人の理解が得られずに孤立感を強めたり、、福祉関係者や地域からさげすまれたと感じたりする家族の姿が読み取れた。「アンケートをしてくれてありがとう」と書いた人もいるという。厳しい状況に置かれた介護者が、気持ちを伝える場がまだ限られていることがうかがえる。
こうした現状からみて、介護者の心をケアする仕組みを整える必要がある。家族会の組織は各地にあるが、臨床心理士らとマンツーマンで4回、5回と継続的に話すことができる場も必要だ。介護上の問題に限らず、介護によって抑圧された家族介護者自身の生き方、生活、人生について、その思いを受け止める場もあるべきだ。
東京都世田谷区などにそうした動きがあるが、全国的にはまだまだ足りない。「『認知症になりたくない』と簡単には言ってほしくない」と書いた人がいた。私もこれまで認知症の人と出会って多くのことを教わった。失われる能力がある一方、残っている力にその人の奥深い機微や歴史を感じてきた。
老いの姿は、その人が歴史を重ねてきたことを表すと同時に、未来の私たちの姿も示している。お年よりは人生のフロンティア(最前線)を歩む存在といえる。それは認知症になっても変わらない。認知症の人にまずできることは、そうした意識を持ちながら認知症の人と家族を温かく見守っていくこと、気軽に普通に、そして自然に声を掛けていくことではないだろうか。
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