医師の目・人の目 第42条 薬で進行穏かに

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2011年11月07日 20:31

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」 パート42

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。





薬で進行穏かに




認知症に対して使われている薬を取り上げてみたい。塩酸ドネベジル(商品名アリセプト)は、アルツハイマー病の原因を治療するものでnはないが、病気の進行を穏かにする効果が期待できる。作用は、シナプスという脳の神経細胞同士のつながりを改善することであって、神経細胞を再生したり「老人斑」と呼ばれる脳の異常な変化を消したりするものではない。したがって脳の萎縮が進行すると効果はなくなる。





塩酸ドネベジルを服用してから、物忘れや判断力低下が改善して、家事などがスムーズにできるようになった例がある。効果が期待できるのは数ヶ月から1~2年といわれている。できるだけ早い時期から治療を始めることが大切だ。5㎎を1錠、朝食後に服用するのが基本だが、現在は10㎎まで増量できるようになった。私の経験では副作用はあまり見られないが、ときに下痢、嘔吐などの胃腸症状が出ることがある。しかし、興奮、不安、うつ状態などの精神症状がまれに出ることがあるので注意が必要だ。





認知症の介護が大変なのは、幻覚、妄想、興奮、暴力、徘徊など、いわゆる「周辺症状」が出ている場合だ。認知症の人の世界を理解して、その世界に合わせて対応するのがよいのだが、現実的には介護者がこれらの症状に振り回されて疲労困憊(こんぱい)する場合が多い。激しい症状に対しては統合失調症などに使われる向精神薬、また、不安、緊張、不眠などに対しては抗不安薬・睡眠薬が使われることがある。しかし、パーキンソン症状や意欲低下、ふらつき、食欲低下といった、副作用が見られることが少なくないので、注意が必要だ。





幻覚、攻撃性、興奮などの激しい症状などに対して、漢方薬の「抑肝散」が使われることがある。特に「レビー小体型認知症」のの幻視に対して、副作用が少なく、効果があるという報告がある。それ以外に脳の血流や脳神経細胞の活動性を高める目的で、脳循環・代謝改善薬が処方されることもある。これから登場を予想される新薬としては、塩酸ドネベジルとほぼ同じ作用を持つ臭化水素酸ガランタミン(内服薬)、リバスチグミン(貼り薬)がある。脳細胞を保護する塩酸メマンチン(内服薬)は治験中だ脳に蓄積し、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の老廃物「ベーターアミロイド」を取り除くワクチン療法も開発中で、将来期待されている。









<ホーム長のつぶやき>


今日は認知症の人と家族の会が参加している平成23年度「認知症の家族講座が」第3回が磐田(アイプラザ)で開催されました。静岡県認知症介護指導者の会生座本磯美(おざもといそみ)さんの講演もありました。私は男性介護者(息子)のグループで生座本さんのお話の感想と自分の介護に結びつけて話していただきました。来月は最終回です。とてもいい集まりができており、このメンバーがつながっていけたらと思います。介護の苦労話を吐き出す場が磐田にも欲しいと思いました。




今年の4月から新薬が出ております。先日アルツハイマーデーの講演にお越しいただいた片山先生の講演内容も合わせてご覧下さい。目次欄をクリックすると見ることができます。新薬についても(私信として)資料でふれていますので紹介します。




アリセプト⇒世界のアルツハイマー病スタンダード、記憶学習効果上昇、レビー小体型認知症への効能追加かの可能性

レミニール使用時⇒言葉が出にくい人、昼夜逆転を示す人、脳血管障害をある人、副作用はアリセプトと同じと考えてよい。

イクセロンパッチ使用時⇒投与を的確に介護者が安心して行なえる、比較的引っ込み思案な活動性低下を示す患者さんに効果が分かりやすい。行動改善に効果を認めやすい。過敏な行動は制御されやすい。副作用として消化器症状は最も少ない。皮膚の保湿を保つことが必要。痛み発赤はその都度、対応で重症化しにくい。

アリセプト、レミニール、イクセロンパッチは併用できない。

メマリー使用時⇒なるべく負の外的環境を排除する。負の外的因子が出現しているときは投与を考慮する。できれば正の外的環境を整えるとよりよい。注意力が上昇することでも、症状の進行が遅くなる。長期的な症状の進行が遅くなることも期待される。中止時2週間で症状憎悪、不安、不穏、怒り出現。高度に入り、全身状態増悪、睡眠薬などにより心理テスト増悪。抗精神病薬内服中の場合、傾眠などの症状に応じて、抗精神病薬の減量を指示しておく。

*アリセプト、レミニール、イクセロンパッチのどれか一つと併用可能















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