認知症患者さんの体験世界
認知症患者さんの体験世界
(アルツハイマー病ケアの要点 Eisai・Pfizerより)
体験世界 1
「何?どこ?いつ?なんで?」不可解なことの連続、現実の世界がわからなくなり見知らぬ世界へ迷い込んだよう、不安と緊張の連続
記憶や判断、見当識の力が薄れつつあるために現実の世界を適切に把握できなくなり、周囲の環境や出来事が不可解でなりません。まるで見知らぬ「ワンダーランド」に迷い込んだような体験をしています。わくわく楽しい「ワンダーランド」ならいいのですが、現実は不可解と恐怖感で「誰か助けて!」と叫んでしまいたくなるような身も凍るような体験といいます。当然、不安も強く緊張しながら過ごしています。その為何もしていなくても消耗して疲れやすい特徴が見られます。
体験世界 2
「世界が飛ぶようで追いつけない、世界をつかめない、世界がぐらぐらする」現実の世界の動きについていけない、あせり、混乱、心身の動揺
情報処理や見当識の力が落ちてくると、現実の世界のスピードについていけなくなります。ごく自然な日常生活の出来事やケアする人のスピードによって本人は焦らされ混乱させられています。周囲と上手く伝え合ったり関わったりできないもどかしさ、憤り、孤独も強く体験しています。周囲のスピードに常に悩まされ、体がぐらぐら揺れてしまうような体験もします。私たちがビデオの3倍速をずっと見続けたり、ジェットコースターに乗り続けているような体験なのかもしれません。
体験世界 3
「回りの世界から不可解な何かが次々と攻撃してくる」周囲の些細な攻撃が自分を脅かす
認知症の患者さんはストレスに耐える力が低下しています。ケアする人や周囲の人の声、生活雑音、光や陰、色や模様、空間の広がり、空気の流れ・・・そんなありふれた生活の刺激がまるで自分に降り注ぐ矢のように感じられ、怯えたり怒っています。それから何とか逃れよう、振り払おうともがいたり、懸命に戦う体験もしています。周囲の脅威を避けるために自分の世界に引きこもる体験もみられます。
体験世界 4
「自分の体が自分を脅かす」身体の不快が侵襲となる
痛み、痒み、便がたまった感覚、空腹やのどの渇き眠気やだるさ・・・そんな身体の不快に自分ではうまく対処できなくなり、不快が引き金となって、混乱、嫌悪、怒りを体験しています。
体験世界 5
「自分自身が壊れていく、おぼろになっていく」
見当識の弱まりに加え、前述のような体験の積み重ねの中で、不安や混乱、動揺が絶えず起こり、自分が粉々になったり、ぼんやりおぼろになるような体験をしています。
体験世界 6
「大切な出来事や大切な人が、今までここに存在する」逆行性の体験
新しいことは記憶になく、過去に刷り込んだ記憶、特に本人にとって意味ある記憶を転々とつなぎ合わせて自分の世界を保とうとします。
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