医師の目・人の目パート12 コツは「ほめる」「同情」
医師の目・人の目
「知ってますか?認知症」
公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
川崎幸(さいわい)病院 杉山孝博
共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。
コツは「褒める」「同情」
「本人のことを受け入れて、穏かに対応するのがよいと先生は言われますが、介護する身にもなってください。言うことを聞かず、迷惑なことばかりする人にいい顔はできませんよ」と多くの介護者は訴える。それに対して、私は「毎日慣れない介護をし続けなければならない、あなたの気持ちはよく分かります。しかしこの時間は介護者にとっても、本人にとっても一番つらい時期なのです。良い感情を与えるようにしたほうが、結局、あなたにとっても楽になるはずです」と答えている。
介護に慣れてくれば多くの家族は感情をあらたてずに介護ができるようになるが、少しでも早く楽な介護をするには4つのコツがある。第1のコツは「ほめる、感謝する」。どのようなことをされても「ありがとう。助かったわ」などと言い続けていると、次第に本人の表情や言葉が落ち着いてくる。
ぬれた洗濯物を見て、「お母さん、乾いていないのに取り込んで!洗いなおさなければいけないでしょう。どうしてこんなことをするの」と言うと「手伝ってあげたのに怒るなんて、嫌な人だ」となってしまう。それよりも「お母さん手伝ってくれてありがとう。あとは私がしますから、居間でお茶でも飲んでいてください」と言った方がよい。
第2は「同情」で「ああそう」「そういうことがあったのですか」「大変ですね」のように相づちをうつこと。多くの家族や介護職は正しく答えなければいけないとまじめに思って、教え込んだり、聞き返したり、うるさい人、嫌な人だととらええられる場合も少なくない。それよりもいかにもよく聞いてているような印象を与えながら、適当に相づちをうつ方が楽であるし、本人も穏かになる。
本人が正気に返って「私の言うことを聞いてくれない」と言うときには「うっかりしてごめんね」などと、とぼければよい。施設などで認知症の2人が楽しそうに話している光景はよく見られるが、互いに自分の言いたい事を言って、話の内容が全く合っていないこともよくある。
「うんうん」「そうだ」と互いに相づちをうっているから楽しいのだ。だから私は介護する人に「介護者はすべからく認知症になるべし!」とも言っている。残る一つのコツは次回に紹介したい。
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