医師の目・人の目 パート14 こだわり、抜け出せない

2人3脚

2010年08月25日 08:00

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症 」パート14

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




こだわり、抜け出せない




こだわり、抜け出せない認知症には「一つのことに集中すると、そこから抜け出せない。周囲が説明したり説得したり否定すればするほど、こだわり続ける」という特徴もある。これを「こだわりの法則」と呼ぶ。『買い物に行くと毎日同じものを買ってくるし、夕方になると家に帰るといって出かけようとします。毎日毎日繰り返されるのでたまりません。この状態がいつまで続くかと思うとますますイライラしてきます」。この言葉に共感しない介護者はいないだろう。





こだわりに対してどのように対応したらよいだろうか。まず丁寧に説明する、説得する、駄目なものは駄目と禁止する、という普通の方法を試みる。この方法でうまくいくならばそれでよい。しかし説得してもすぐに忘れて効果がない、説得に一切応じない、駄目というと興奮する。という反応であれば、別の方法が必要になる。





本人のこだわり続ける気持ちを理解しこだわりを軽くするにはどうしたら一番よいのかという観点で、割り切って対応するのがよい。それには次の八つの方法がある。
①.こだわりの原因を見つけて対応する ②.そのままにする ③.第三者に登場してもらう ④.場面転換をする⑤.地域の協力理解を得る ⑥.一手だけ先手を打つ ⑦.本人の過去を知る ⑧.長期間は続かないと割り切る―という方法だ。






それぞれ具体例を通して考えてみよう。まずは「こだわりの原因を見つけて対応する」。認知症の人がこだわりを示すとき、その背景となる原因が見つかる場合がある。原因に対して適切な手を打つことで症状が軽くなることがある。「夫が私に浮気妄想を持つようになりました。先日たまたま息子と一緒に帰宅したら、息子と関係しているとまで言いだしました。どうしたらよいでしょうか」「何かきっかけはありませんでしたか」「心あたりはありません。ただ、物忘れが目立ってきたので、預金通帳を私が管理することにしましたが、最近、通帳を返せと強く言ってくるようになりました」







「大事な財産を妻が勝手に使っている、浮気をしているに違いないとご主人は考えたと思います。紛失しても再発行すればよいので、こだわりの原因である通帳を渡したらどうでしょう」1カ月後、再度受診して「先生の言う通りにしましたら、浮気妄想がすっかりなくなりました。本当に認知症の症状だったのですか」と報告してきた。













にほんブログ村ランキング参加中!よかったらクリックして下さい

にほんブログ

関連記事