医師の目・人の目 認知症 第24単身には地域家ア必要
医師の目・人の目
「知ってますか?認知症 」パート24
公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
川崎幸(さいわい)病院 杉山孝博
共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。
単身には地域ケア必要
厚生労働省の統計よると、単身の高齢者世帯は約373万世帯と推測されている。65歳以上の認知症の出現率は約9%なので、単純に計算すると、一人暮らしの認知症の人は全国で43万人いることになる。もちろん認知症になると一人暮らしが難しくなり、家族と同居したり施設に入所したりするので、この数字のままでないだろうが、かなりの数に上回るのは間違いない。
ところで一人で暮らす認知症の介護には次のような特徴がある。まずは24時間の見守りや、生活全体を支える援助が必要だ。生活障害を起こしている自らの状態を認めないため、医療や介護サービスを受けるのを拒否する傾向がある。近隣の人とのかかわりが不可欠であるのに、そういう人たちとあつれきが生じやすい。
一人暮らしの認知症高齢者は一般的に金銭や物に対する執着が強く、身近な人に強い認知症の症状を示す特徴がある。そのためよく世話をしてくれる民生委員や知人、親戚に「物取られ妄想」などを示し、そういう人たちがかかわれきれなくなることが少なくない。一方時々にしか会わない家族に対してはしっかりした言動をするので、認知症の程度が家族に理解されにくい。
いわゆる「遠距離介護」のため、家族の介護の負担が大きく、栄養摂取不良や不慮の事故が発生しても発見されにくい、といった問題がある。ごみ出しや騒音など、社会生活上のルールが守れないために、トラブルが絶えなくなり、火の不始末で火事を出すのではないかと近所から強い懸念が出され、自宅に住めなくなる場合が非常に多い。
家の中がひどく汚れていても、食事の支度ができなくても「毎日掃除しています」「栄養を考えて毎日自分で料理しています」と言い張るので、周囲がそれ以上踏み込めなくなるケースも少なくない。危篤に近い状態になって初めて訪問診療を依頼されることもある。こうした問題を解決するには普段から地域でなじみの人間関係をつくることが必要だ。
誰もが一人暮らしの認知症高齢者の問題を理解し、解決のために助け合う地域づくりが、今後重要な課題になることは間違いない。その意味で2006年4月の介護保険改定で、地域密着型サービスとして、制度化された「小規模多機能型居宅介護」は一人暮らしの認知症の人の地域ケアという課題の解決を目指す第一歩といえる。
<ホーム長のつぶやき>
今年の夏の暑さは記録的な猛暑となった。多くの方が熱中症になったり脱水を起こし、亡くなられた方も多くいた。特に一人暮らしの方が目立った。また、100歳以上の高齢者が亡くなっているにもかかわらず、不正に年金を受け取り逮捕者がでた。これらは氷山の一角に過ぎないと思う。今後、地域のきずなが大きく左右されるだろう。
杉山孝博先生が「小規模多機能型居宅介護」は一人暮らしの認知症の方を地域で支えていく第一歩と提唱されていることは嬉しい。昨日のテレビで、一人暮らしの方が自宅で暮らしたいと願っている方が94%もいたことは、住み慣れた地域で、住み慣れた自宅で介護を受けたいと願っている。その手助けができるのが小規模多機能型居宅介護、24時間365日、通い、泊り、訪問介護で支えていくシステムだ。まだまだ知らない人が多く小規模多機能型居宅介護の良さを知ってほしい!利用者本人や介護家族のことを考え、大きな力となる介護保険サービスである。
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