認知症の人と家族の会発行のぽ~れぽ~れ介護体験記より
認知症の人と家族の会発行のぽ~れぽ~れ
北から南から 介護体験記
2011.3 368号
母を看取って
広島県支部 田中道子
思い起こせば20年近い介護でした。母の変化に毎日毎日戸惑い、どう対応していけばいいか分からず、母のことで頭がいっぱいの中、3人の子育てと介護の同時進行でした。
●母への対応から・・・
同じことを何度も何度も聞いてくる。特にお金のこと、お金のことだからと思い丁寧に説明し、紙に書きとめ渡すが、すぐ不安そうに聞きにくる。1時間かけて説明したのにまたかと、ため息の連続。こんな状態になってくると、隣の姉が、「おかあさんはおかしい、ボケ始めた」と認識し始め、夫も私の話を聞いてくれるようになり、私もこれがボケかと認識し始めました。思い返せば、まだらボケの時期が、一番しんどかったように思います。夫は時にはプッツンと切れてしまい、母と強い口調で言いあっていました。
<ホーム長のつぶやき>
認知症を体験した家族は誰でもこのような過程をたどります。ほんとに不安で不安で一杯になり、自分と葛藤しているのです。この時期お医者さんにかかる人もおられますが、高齢になると余りかかりません。早期発見、早期治療すれば混乱が減ります。軽度の認知症(MCI)でくい止めることができます。皆さんが認知症の知識を持つことによって本人の苦しみを取ってあげられ、また、本人が自ら自分の異変に気づき認知症をしっかり診断してくれる医者にかかることによって、進行の度合いが違ってきます。今、しっかりと病気について知識を得て、万が一自分が患ったとき混乱のないようにしたいものです。いま、地域の皆さんに向けて、認知症のお話をさせてもらっています。長寿社会となり、誰でもこの病気なる可能性が高いのです。地道に活動していこうと思います。
●不安いっぱいの母・・・
不安いっぱいの母の母の気持ちを少し方向転換しようと夫の提案で、夕食後家族全員で円陣を組み、童謡を皆で歌ったり、紙風船で風船バレーをしたり楽しい時を過ごすようにしていました。皆で笑える楽しい時間でした。これは幼い子がいたからこそ、そして介護の手伝いをしてくれたことに感謝しています。また、母の質問攻めが始まるとまず私が対応するのですが、私が疲れると次は夫にバトンタッチ。夫が疲れると子どもにバトンタッチ。「今日は誰だれがおばあちゃんと波長があったね」とゲームの勝者を讃えるような会話をして楽しんだりもしました。どんな時でも介護は人数と常々感じていました。
<ホーム長のつぶやき>
家族の中でデイサービスをしているようなほのぼのとした心温まる光景が目に浮かんできます。そう、バトンタッチいいですね。余り何度も言われるとさっきも言ったでしょう!と語尾が荒くなってしまい、かえってその声のトーンで怖くなり、注意されたその人のことが嫌な人というイメージだけが残り、会話しなくなります。楽しい思い出嫌な思い出はしっかりと頭の中に残っているのです。夕食後の団欒はおばあさんの居場所作りができていてとてもいいですね。また、子どもさんにとってもいい教育の場になり、おもいやりのある優しいお子さんに成長されたことでしょう。介護は一人で抱えこまない、これが鉄則です。
●骨折から・・・
87歳で大体骨頚部骨折をし身体機能はガタッと落ち、質問攻めや徘徊に代わって身体介護が必要になりました。それと同時に夫が積極的に介護に関わるようになり、私としてはずいぶん気分が楽になりました。90歳になると日々の生活の中で歩行・嚥下・発語などの身体機能の衰えを眼に見えて感じるようになりました。そうなると、毎日ヤレヤレと思っていた私たちが少しづつ優しくなり、母の体調の変化を気遣うようになりました。
●94歳の母との絆
94歳の秋、ひどい肺炎になりもうダメかと覚悟をしたのですが、何とか退院、しかし寝たきりの状態になりました。夫と私は専門看護師さながら毎日母の様子を伝えあい共有し、子ども達も加わり宝物のように大切に、大切に介護しました。母が家族の絆を強くしてくれたと感謝しています。一瞬一瞬、母の命を大切にしている私たちがいる。それは命の尊さ・重みを一生懸命生きることで、母が私たちに教えてくれたからです。在宅で24時間接することができたからこそ、大きな財産がもらえたんだなと思います。原爆を体験し厳しい時代を乗り越え、最後の最後まで一生懸命生き抜いた母に感謝します。ありがとうございます。おかあさん。
<ホーム長のつぶやき>
長い長い介護生活お疲れさまでした。この記事を見て本当に素晴らしい家族ですね。いずれ高齢となり介護が必要になっても田中さんのご家族なら協力しあい社会資源をたくさん使いながら支えてくれでしょうね。介護は一人ではできません。命の大切さをかみ締めながら、自分が選んだ仕事を精一杯頑張ろうと思いました。核家族が多くなった昨今、自分達の生活で精一杯、しかし介護の方法や認知症の病気、高齢者がかかる病気を学ぶことによって少しは手助けにつながるでしょうか。ふと、ひとり言いってみたくなりました。
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