医師の目人の目認知症・第35条上手な割り切りで楽に
医師の目・人の目
「知ってますか?認知症」 パート35
公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
川崎幸(さいわい)病院 杉山孝博
共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。
上手な割り切りで楽に
多くの認知症の人は、家族が一生懸命お世話しても、否、お世話すればするほど認知症の症状をひどくするものだ。家族はまじめで熱心であるあまり、精神的にも身体的にも消耗しきってしまう。こんなとき、誰かが別の見方、考え方を教えてあげて、家族が上手に割り切れるようになると、介護はずっと楽になる。
「冬でも裸に近い状態で、一晩中動き回っていて、何回着せてあげてもすぐ脱いでしまいます。夏は夏で午後3時頃になると、雨戸を閉めてしまい、厚着をしています。汗をかいて暑そうなのに着物を脱ぐようにいっても、聞きいれてくれません。風邪を引いたりするのが心配です」「お風呂に入るのを嫌がって困ります。主人に手伝ってもらってやっと入れてもらっているのですが、毎日がまるで戦争です」
快適で文化的な生活を楽しんでいるわたしたちは、認知症の人に対しても、自分達と同じ基準や感じ方を当てはめようとしがちだ。そのこと自体は、「思いやり」という点では、大変重要なことだ。しかし、さまざまな規制や拘束から抜け出た認知症の人にとっては、介護者の気持ちを理解できず、かえって煩わしいこと、余計なこと、無理やり押し付けられること、と感じられることが多い。
そんなとき、次のような考え方をすると、混乱から早く抜け出すことができる。「せいぜい数十何年前での日本、あるいは世界各地の現実を見れば、清潔な環境、豊富な衣食、安全快適な生活、毎日の入浴などは異例であって、現生人類の長い歴史から見れば“異常”とも言える。普通でないのは、むしろ私たちのほうで、認知症の人は正常な行動をしているのだ」過酷な状態で裸に近い状態で生活している人が、皆風邪を引くわけではない。テーブルや床の上に落とした物を食べただけで、おなかをこわすことはない。介護に行き詰ったらこんなふうに発想の転換をすることが大切だ。
発想の転換は一人では難しい。認知症相談や、「認知症の人と家族の会」での話し合い、介護教室や本などで、他人の経験を聞き、適切なアドバイスを受けることで、容易になることが多い。「割り切り上手は介護上手」である。介護者は上手に割り切って負担を軽くし、長続きする介護を心がけるのがよい。介護者の気持ちに余裕が生まれ、認知症の人にとっても、良い結果をもたらすものだ。
<ホーム長のつぶやき>
今日は小規模多機能型居宅介護の職員が集まって、センター方式基礎研修の勉強会を行いました。認知症の人本人はどうしているのか。その本人の発する言葉や言動から、本人の気持ちになり代わって、本人の気持ちを探り、ケアのヒントやアイディアを話合いの場面で出し合い、他の職員の関わり方やケアのヒントを見つけていきました。常に自分だったらどうなのか。「今日は気分が悪いからお風呂はやめておこう」認知症の方は自分で気分不快を訴えられませんので訴える手段として入浴拒否になります。私たちは、認知症の人に自分達と同じ基準や感じ方をしていないだろうか、と思いました。今日は「認知症の人と家族の会」メンバーと京都本部の総会に出席し、杉山先生にもお会いします。
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