杉山Drのやさしい医学講座
第1章 高齢者の疾病と主な症状
(
認知症の人家族の会 副代表杉山孝博医師より)
4.心不全とは
心臓の働きが低下して、全身に血液を十分に送り出せなくなった状態をいい、3大死因(がん、心疾患、脳血管疾患)の1つです。血液の循環が悪くなるため、動悸や息切れ、咳や痰、むくみ、食欲不振などの多彩な症状を示し、症状がさらに悪化すると、呼吸困難、意識障害を起こし死に至ります。
[心不全を起こす主な病気]
高齢者の場合、心不全の原因となる基礎疾患は、狭心症、心筋梗塞などの心疾患、呼吸器感染症、腎臓病、過労、貧血等となっています。「人は血管と共に老いる」と言われますが、老化に伴い動脈硬化が進行して様々な病気を引き起こします。心臓の筋肉に血液を供給している冠状動脈に動脈硬化が起こり、狭くなったり詰まったりすると狭心症や心筋梗塞が出現します。
高齢者は、老化による肺活量の低下、痰の喀出(痰を吐き出す)機能低下、さらに免疫力の低下などにより、肺炎等呼吸器感染症を起こしやすいのです。このとき心不全を起こしやすいのです。心不全を合併すると呼吸器感染症は治りにくくなるので、悪循環となりがちです。また、心機能、腎機能、呼吸機能などの予備力の低下から、輸液や輸血の量が適切でないと心不全を起こすことがあります。ステロイド剤や心臓の薬によっても心不全は発生します。
[心不全の治療]
ここでは専門的な治療(急性期の心筋梗塞など)については触れず、一般的な治療について考えて見ます。
肺炎など原因疾患がある場合、その治療が第1です。心不全は、水分や食塩の成分であるナトリウムが体内にたまっている状態ともいえますから、塩分制限が基本的には必要です。主な薬物療法は利尿剤、強心剤、血管拡張剤などの投与です。これらを適切に使用すれば症状は大きく改善します。呼吸困難の強いときには起座位(水平でなく体を起こした状態)をとると症状は軽くなります。急性期や慢性期の呼吸不全を合併した心不全では酸素吸入も必要になります。同時にタバコなどの悪化因子を出来るだけ取り去ることも大切です。
[介護ポイント]
(1).高齢者の心不全では、若い人と比較するといろいろな要素がからみあっているため、まず、心不全を疑う症状(息切れ、 咳、痰、むくみ、食欲低下、呼吸困難など)がでてきたら、正確な状態の把握と治療方針を立てるために医療機関を速やかに受診することが大切です。
(2).突然の胸痛、発汗・顔面蒼白・苦悶感などが現れた場合は、ためらうことなく救急車を呼ぶことです。
(3).高齢者ははっきりした症状を表さないことも多いので、元気がない、食欲が落ちた、尿が少ない、呼吸が荒い等の場合に は、一応心不全を疑ってみます。
(4).状態が安定したからといって、勝手にに治療を中断しないことです。
日頃から以上のことに注意して観察が行えるよう、医療チームのスタッフと連携しながら介護していきましょう。
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