アルツハイマー病国内10年ぶり新薬・効果は従来並み

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2011年11月23日 07:00

アルツハイマー病国内10年ぶり新薬
「効果は従来並み」

                  浴風快病院精神科医 須貝佑一氏



今年はアルツハイマー病の新薬が国内で相次ぎ発売された。アリセプト以来10年ぶりの新薬だけに、認知症予防財団にも相談の電話が寄せられるなど関心を集めている。新薬の実力について認知症介護研究・研修東京センターの須貝佑一副センター長(老年精神医学)は「効果はアリセプト並み。新薬新薬というのは騒ぎすぎ」と冷静な対応を求めている。





須貝副センター長は、新薬のレミニール、メマリー、イクセロンパッチ、リバスタッチが出そろった時点で、、期待する声が大きいことに違和感を覚え、発言する機会をうかがっていたという。その1つが9月8日東京都品川区内で開かれたNPO法人敬寿主催の「認知症新薬のメリット、デメリット」と題するセミナー。話は老化と認知症の違いから始まり、認知症の種類、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドベーターの脳内の仕組みへと進んだが、今回はセミナーの後半部分、新薬の薬価中心に採録する。





●アルツハイマー病ワクチン


今日のテーマ「アルツハイマー病の治療」というのは、アミロイドベーターが脳内にたまらないようにすること、もしたまったらアミロイドベターを追い出すことです。これらができたらアルツハイマー病は克服できるかもしれない。その退治に最も効果を期待されているのが、アルツハイマー病ワクチンです。アミロイドベーターを動物に接種し、抗体を作らせてまた人間に接種する。もうインフルエンザワクチンと同じ原理でやっているわけです。




アメリカでこのワクチンが開発されて、アミロイドベーターを追い出すことはできたのですが、脳炎を起こしてしまった。イギリスでもワクチンを新しく作り接種した。何人か亡くなられた方を解剖すると明らかにアミロイドベーターはなくなっていた。つまりワクチンは上手くいったけれど症状はよくならなかった。最近はアルツハイマー病=アミロイドベーター原因説を懐疑的に見ている人も増え、ワクチンはまだ研究段階といえます。5年後に「上手くいきました」と言っても、それを製剤化するにはやはり10年~15年先になります。






●アリセプト



アリセプトにはアミロイドベーターをやっつけるという作用はありません。アリセプトは神経細胞の伝達物質、アセチルコリンという、記憶とか注意力とか暗記力に関する神経の脳内物質を一生懸命出そうとします。ですから残された神経細胞が多ければ多いほど役に立つ薬です。アルツハイマーの初期から中期にかけて役に立つ。しかし、アミロイドベーターのたまり方は、止められませんから、一時的に症状の進行を遅らせることはできても、病気は着実に進行する薬だというふうにご理解いただければいいです。






認知レベルに差なし
アリセプトと新薬比較




●海外10年前に承認




日本では新薬といってますが、海外では10年近く前に承認されてます。なぜ日本では承認が遅れたかというと、治験がうまくいかなかったからです。患者さんに実際に使いデーターも編集しましたが、偽薬との間に差が出ないため、なかなか申請ができなかった。そこで薬事審議会は日本のデーターだけではなくて、海外のデーターも一緒にして有効性を立証し、ようやく通りました。





レミニールは残された神経細胞の末端で、分解酵素を阻害して、アセチルコリンをいつまでもとどまらせて「働け働け」と言う薬なのでアリセプトと原理は同じです。イクセロンパッチとりバスタッチパッチも原理的にはアリセプトと同じですが、貼り薬なので飲めない人や、一人暮らしの人が飲んだかどうか外見で分かるという利便性はわかります。メマリーは細胞の興奮性を抑制する薬です。気分的にイライラすることを抑えたり、眠気を取り、神経細胞の興奮作用もあり、アリセプトと違う効果があるとして認可されました。





●効果期待は禁物



どっちが優れているか試した治験ですが、薬害比較ではアリセプトと新薬に認知レベルの差はない。一方、症状がどれほど変わったかというClinical Impression、つまり医者から見てどうかという評価では、やはりみんなほぼ互角。なので、どの薬がいいというわけではありません。ただ、貼り薬は飲めない人が使い、アリセプトを使っていたけどどうも肌に合わない、吐き気が強いという人には選択の幅が広がった。効果は同じですから、変えることができるというのが、メリット、新しい薬がアリセプトより効くという期待をされては困ります。使い勝手の良さで新しい薬は役に立つ、効果という点では互角、こう患者さんに説明しています。





●周辺症状には




認知症の薬というのは、認知症そのもの、つまり見当識・物忘れ・理解力に働きかける薬ですが、認知症で困っているのは、実は行動と精神の変調、つまりBPSDと呼ばれている周辺症状ですが。物を盗られる妄想とか、人を攻撃するとか、ないことをあるように思っているとか、だんだん進行すると夜中徘徊する、大声を出すとか、それで困るんです。新薬はそういう症状に対する力はあまりありません。これはもう新しい介護上の工夫と、認知症に対する対症療法、主に向精神薬だとか、うつ病の薬をうまく調整しながら、使うと非常に役に立ちます。これもまた重要な治療の一つだと考えていただければ、大体新しい認知症の治療薬のメリット、デメリットがわかるのではないかと思います。













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