杉山Drのやさしい医学講座

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2009年12月31日 12:02

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                  (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

9.MRSA

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は多数の抗生物質に耐性をもった細菌で、化膿性皮膚疾患をはじめ多様な感染を引き起こすため、病院内感染や、施設内感染の原因菌として近年大きく取り上げられてきました。



黄色ブドウ球菌は、化膿性皮膚疾患、中耳炎、肺炎、食中毒・腸炎、敗血症、尿路感染症などの広範な感染を引き起こす代表的な化膿性菌です。1940年代以降、ペニシリンG、クロマイ、テトラサイクリンなどの抗生物質の登場により、黄色ブドウ球菌に対して目覚しい効果がえられるようになりましたが、それらの抗生物質に耐性をもつブドウ球菌も次々と出現しました。1980年なって多種類の抗生物質に耐性をもったMRSAが急速に増加したのです。





MRSAの検出例としては①.鼻腔や咽頭に定着しているが、臨床症状は示さない例(キャリー:保菌していても発生していないこと)、②.気管、尿路、褥創表面に定着し、慢性の軽度の炎症を持続するもの、③.深部膿瘍を形成し敗血症を繰り返したり、手術後の致死的な感染症に発展するもの、などがあります。介護サービスで関わるのは、①と②の状態でしょう。どのような病態をとるかは感染部位やその人の感染を防御する力によって決まってきます。



一般的に健康な保菌者が重篤な感染症に陥った例はありません。MRSAに対しては、バンコマイシンをはじめ、いくつかの種類の抗菌剤が有効ですから、体力のよほど低下したものでなければ、また治療の開始が遅れなければ治療は可能です。




感染予防法としては、まず手洗いです。通常は流水と石鹸による手洗いのみで十分です。流水による手洗いが不可能な場合に、消毒剤による手指消毒を行います。消毒剤としては、短時間殺菌効果が強い消毒用エタノールを基礎とした消毒剤の使用が基本となります。ウエルパス(0.2%塩化ベンザルコニュウム+消毒用エタノール+皮膚保護剤)などが市販されています。



排泄物、その他の取り扱いとしては、痰や膿などが付着したものは、ビニール袋などに密閉して捨て、洗濯物ものは、熱湯などで一度殺菌してから、洗濯するとよいでしょう。分泌物が多い場合には、使い捨てのシーツ等を使用します。



時には手袋などを使用しますが、膿や痰等に直接接触しないように注意していれば、福祉サービスを利用しているMRSA保菌者に対しては、個室管理、ガウンテクニック、手袋着用は原則として不要です。



室内の清掃を確実に遂行することは、重要ですが、むやみに消毒剤を使うことは逆にその消毒薬に耐性をもつ細菌を作ることもあるので控えるべきです。最後にMRSAなど感染症保菌者であるという理由だけで、サービスを利用できない状況が現実にあります。



正しい知識をもち、過剰な対策を取ることなく困っている利用者の立場に立って必要なサービスを提供することが、私たちの使命であるとことを思い起こすことが必要です。



最後までブログを読んでいただき有難うございました。
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