杉山ドクターのやさしい医学講座

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2010年01月09日 09:22

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

11.薬の話

高齢者のケアや病気の治療については、薬を除いて考えることはできません。多くの生命を奪ってきた肺炎や結核が抗生物質によって治療できるようになり、麻酔薬の登場により高齢者の手術が安全に行なわれるようになりました。しかし、その一方で、血液製剤によるエイズ感染といった薬害は、薬が必ずしも安全なものばかりではないということを示しています。



薬というものは、長い歴史の中で人類が選択してきた食べ物とは本質的に違い、体に入るとどのような作用を示すか分からない性質を持つ「異物」です。多くの薬は人工的に合成されたものです。漢方薬に使われる生薬にしても、治療として使われるほど高濃度で体内に取り入れられたことはなかったものです。



ですから、薬を上手に使って病気を治すのが治療とは言うものの、期待する効果の「主作用」とともに、「副作用」も起こり得るものだという認識が必要です。




膠原病や湿疹、重い喘息発作などの治療では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)は非常に有効ですが、感染症や糖尿病の誘発・増悪、消化性潰瘍、骨租しょう症、高血圧症などの重大な副作用があります。鎮痛消炎剤による消化性潰瘍は決して少なくありません。痛み止めがよく効く人ほど副作用も出やすい印象があります。



認知症の相談に関わっていますと、高齢者には実にたくさんの薬が処方されているのに驚かされます。ご本人やご家族が、薬の効果に期待する一方、不安を感じる人も少なくありません。




高齢者は若い人と比べて、薬の副作用が出やすく深刻な問題につながりやすい傾向があります。その理由をあげると、①.肝臓や腎臓の働きが低下してくるため、薬の代謝・排泄がスムーズにいかない②.複数の病気や症状を持つため多種類の薬が処方されやすい。③.高齢者は若年者と比較して個人差が大きいため適量を決めるのが難しい。④.症状が出現しにくく、副作用による症状と本来の症状とが区別しにくい。⑤.服用の仕方や注意を守りにくい、などあげることができるでしょう。



「軽い睡眠薬を飲んだら食欲が落ち、酔っぱらったようにふらふらした」「吐き気を止め食欲を刺激する薬で、手が震えるようになった」「強心剤を指示通りのみはじめたら動悸や不整脈が出現した」などの例は良くあります。



★心がけておきたいこと


しかし、薬の副作用ばかり心配して大事な薬の服薬を中止してしまうのも困りものです。特に、心臓の薬や抗生物質、副腎皮質ホルモンなどをやめると致命的になる場合があります。ヘルパーは医療行為が禁止されているので、薬についての知識はさほど必要ないという人もいると思いますが、訪問している間に副作用などで身体状況が変ることもあります。



ですから、ヘルパーとして最低限、①.薬の作用を医師や看護師に聞く②.病気や症状について正しい知識を持つ③.家族が判断して管理する④.薬を飲んで変った症状が出たり、効果がなければ、医師や看護師に伝える⑤.漢方薬や民間薬といっても必ずしも安全ではなく、薬は体にとって原則的に異物であり、副作用があるものだということを理解しておく、といったことを心がけておきたいものです。









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