杉山ドクターのやさしい医学講座
第1章 高齢者の疾病と主な症状
(
認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)
15.筋肉の牽引痛と、胸痛
知って得する身近な病気や症状 その2
○胸痛
強い咳をした後や、体をねじった後、あるいは胸を抱きかかえられた後などに、胸がずきんと痛くなることがあります。また、原因が思いあたらなくても、呼吸をしようとすると胸が痛くて呼吸ができないような苦しさが出る場合があります。起き上がろうとしたときや物を取るため体を曲げたときに胸痛の症状が現れることも珍しくありません。
左胸に症状を感じたときには、狭心症や心筋梗塞ではないかと疑って、心電図、胸部エックス検査、心カテーテル検査などの検査が行われる場合もあります。しかし、結果は異常なし、と説明されても症状が治まりません。また、骨折ではないかと疑って整形外科で肋骨などのエックス線検査を受けても、骨折はありませんと言われます。
このような患者さんの場合、肋骨を一本一本押してみますとはっきりした痛みを訴える場合が少なくありません。肋骨は、胸椎と関節を作り、胸骨とも動きの悪い関節を作っています。第6肋骨以下では肋骨どうしが肋軟骨によりつながっています。ところが肋骨と胸骨の関節は力を受けると変形して、ある程度の力が加わると小さながひびが入ってしまいます。
また、肋軟骨は高齢になると石灰化してもろくなり、ひびが入りやすくなりなります。骨の表面には痛覚が分布していますから、ひびが入ったところに力が加わると、痛みが発生するのです。
上記の症状が出ていて肋骨に圧痛が認められる場合には肋骨の亀裂骨折と診断して、バストバンドなどで肋骨の動きを固定すると、症状が見事に軽くなります。約3週間固定すると症状がなくなります。もちろん、狭心症、心筋梗塞、解離性大動脈瘤破裂、自然気胸、悪性腫瘍の骨転移等の可能性がありますから、医療的な診断は必要です。
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