杉山ドクターのやさしい医学講座
第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
(
認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)
6.膀胱留置カテーテル、導尿法
膀胱に尿が溜まってくると、膀胱壁の進展受容体からの刺激が骨盤神経を介して大脳にある高位排尿中枢に伝達され、尿意が発生します。高位排尿中枢から脳幹部の上位排尿中枢を介して下位排尿中枢に指令が伝えられると、排尿反射がおこり、膀胱の筋肉が収縮し、内尿道括約筋が弛緩して尿が尿道を通って体外に排出されます。これが排尿のメカニズムです。
尿の出方が悪くなり(排尿困難)、尿が出なくなる、(尿閉)になると、不快感、苦痛、不眠などの辛い症状が出現し、尿路感染症、水腎症、腎不全、膀胱破裂など命に関わる状態にもなる可能性があります。このような場合には、カテーテルを使って膀胱から尿を排泄する必要があります。これを導尿と呼びます。
導尿の必要となる疾患は、①.脊髄損傷・脳卒中・骨盤内手術後・糖尿病性神経症や神経難病などによる神経障害②.膀胱腫瘍、膀胱損傷などの膀胱疾患③.前立腺肥大、前立腺がん、尿道狭窄などの尿道疾患などがあります。また、薬物による排尿困難や、尿による汚染が問題になる場合(褥創など)、介護上の問題でおむつ交換が困難な場合などが、一時的あるいは相対的適応といえます。
導尿法としてしては、膀胱にカテーテル(バルンカテーテル)を留置する方法と、導尿後カテーテルを抜き去る間歇的導尿法があります。間歇的導尿法は、本人あるいは家族が1日5~6回実施しなければならない手間がかかりますが、感染症などの合併症が少ないこと、カテーテル留置する不快感がないこと、尿をためる膀胱機能が維持されることなどのメリットがあります。脊髄損傷などの患者さんなどが、使いやすい導尿キットを使って実施します。
一般的な方法が、抜けないように滅菌蒸留水を入れたバルンカテーテルを膀胱に留置する膀胱留置カテーテル法です。手間がかからないのですが、不快感があること、尿路感染症や膀胱結石をおこしやすいこと、カテーテルが詰まったり、接続部が抜けたりするトラブルが発生しやすいことなどのデメリットがあります。カテーテルの交換は2~4週間に1回で、医師あるいは看護師が行います。沈殿物の除去やカテーテルがつまらないように、生理食塩水などで膀胱洗浄する場合があります。
膀胱カテーテルを留置している利用者に接するヘルパーが留意しなければならない点をあげます。
①.認知障害や意識障害のある利用者が、カテーテルを引き抜かないように注意すること。
②.清拭や更衣、シーツ交換、移動などのケア中に、カテーテルや導尿チューブを引っ張らないこと。
③.カテーテルなどのねじれや折れ曲がりに注意して、スムーズに尿が流れていることを確認すること。
④.蓄尿バックなどを身体より高い位置に置くと、尿の流失が妨げられるだけでなく、尿が膀胱に逆流して感染症の原因にもなるので注意をすること。
⑤.尿が濁ったり血液が混じるようなことがあれば、速やかに医師・看護師に連絡をすること。
⑥.陰部の清潔に特に注意すること。
⑦.尿道口に膿や血液が付着している場合、速やかに医師・看護師に連絡をとること。
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