杉山ドクターのやさしい医学講座
第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
(
認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)
2.経管栄養法、及び胃瘻(いろう)
経口からの栄養摂取が困難な患者に対して行なわれるのが、経管栄養法や中心静脈栄養法です。中心静脈栄養法は次回に取り上げることにして、今回は経管栄養法について考えてみましょう。経管栄養法には栄養注入の経路により、経鼻経管法と胃瘻増設がありますが、まれには小腸(空腸)に直接注入する空腸瘻もあります。それぞれの利点・欠点や予後(経口摂取できるようになるかどうかなど)を考慮して患者・家族に十分説明した上で選択が行なわれます。
自己抜去や嚥下性肺炎などのトラブルの発生しやすい経鼻経管法よりも、手術が必要ですが、肺炎などの合併症が少なく、外から見えにくい胃瘻が最近ではよく選択されるようになっています。経口摂取の併用の可能性や、将来抜去できる可能性などが志唆されると、経管栄養を受け入れること自体に非常な精神的な負担を感じている当事者にとって精神的な救いになることもあります。
経管栄養法の適応は、脳血管障害、パーキンソン病や神経変性疾患などの難病、口腔や食道などの消火器疾患などより、嚥下障害が起こっているものを対象としています。しかし、最近は老衰などにより、衰弱が進行して、点滴などの治療をしていても、食欲の改善しない患者さんも対象とされて範囲が非常に広がっています。
ホームヘルパーは医療的ケアである経管栄養などの管理はできないとされていますが、現場ではしばしば遭遇するもので、家族や看護師が対応しているものですから、管理に関する基本的な理解は必要でしょう。チューブの管理は、閉塞、脱落、抜去が重要です。
薬剤や高濃度の流動食を注入したときに閉塞が起こりやすいので、沈殿しやすい薬剤などの注入は注意しなければなりません。脱落を見逃して、流動食を注入すると、口内逆流や誤嚥を起こすので、カテーテルの位置を確認することや、注入時の抵抗感があるときには注入を見合わせることが必要です。
カテーテルが長期に留置されると圧迫による粘膜びらんや潰瘍を作りやすくなります。また、カテーテルそのものも汚れて感染を引き起こす原因にもなるので、経鼻経管カテーテルは2~4週間に1回程度の交換が必要です。胃瘻カテーテルはそれぞれの製品によって決められていますが3~4ヶ月に1回程度です。
胃瘻部位は皮膚が欠落しカテーテルの脇から胃液などが浸出してくるため、感染を起こしやすいため、浸出物の除去とイソジン綿棒による消毒を定期的に行なう必要があります。体外に出ているカテーテルの部分と皮膚とが密着して皮膚にびらんなどを起こすようであれば、切り込みガーゼなどをはさみます。
経管栄養法に合併しやすい呼吸器感染症に対する注意が必要です。誤嚥性肺炎の予防と、嘔吐したとき窒息にすばやく対応するために、吸引機の準備と適切な使用が必要になります。
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