杉山ドクターのやさしい医学講座
第3章 介護保険における特定疾患
(
認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)
2.後縦靭帯(こうじゅうじんたい)骨化症
介護保険で第2号被保険者の加齢に伴う障害の原因として認められている特定疾病のひとつで、脊椎の圧迫による症状が特徴です。私たちの体を支える脊椎は椎体と椎弓によってできていますが、その椎体後面と椎弓によって作られる空間(椎孔)を上下に脊髄が走っていて脊柱管を作っています。一つ一つの脊椎は靭帯と呼ばれる強い繊維性の組織で結びつけれています。
椎体の前面あるいは後面を結びつけている靭帯を前縦靭帯あるいは後縦靭帯と呼びます。後縦靭帯は脊髄に接しているため、老化などにより後縦靭帯が肥厚、骨化すると脊髄が圧迫され、しびれ、疼痛、運動障害などの神経症状が出現します。これが後縦靭帯骨化症です。
後縦靭帯の骨化は頚椎に最も多く、男性が女性より多く見られます。逆に胸・腰椎後縦靭帯骨化症は女性に多いといわれます。年齢的には中年以降の50歳代、60歳代に多くみられ、30歳代未満の発症はきわめて稀です。また、肥満の人に多くみられ、耐糖機能異常を示すことが知られています。
通常は、片側の手指のしびれ、肩、上肢の疼痛、上肢の脱力などの症状が徐々に出現します。進行すると、四肢・躯幹のしびれ、痛み、知覚異常、四肢・躯幹の運動障害、脊柱の可動域制限、膀胱直腸障害などが出現します。進行すると寝たきりの原因になります。首を曲げたりねじったりしたとき、運動が制限され、上肢などにピリットした痛みを感じる(根性疼痛)ことがあります。
5年以上経過すると、後縦靭帯の骨化は徐々に増大し、骨化病変の長さも厚さも増大するために脊柱管は狭窄し、脊髄がひどく障害されることになります。障害が著しくくなると、後方から脊柱管を拡大する手術が必要になります。長期的にみると脊髄麻痺の予後は不良です。
後縦靭帯骨化症患者の約20%は日常生活に介助を必要とし、約40%は介助不要でも日常生活は不自由であるといわれています。変形性脊椎症、脊椎圧迫骨折、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症等の疾患によっても同じような症状が出現します。
診断は脊椎エックス線撮影やMRIなどによって後縦靭帯の骨化像と脊椎管の圧迫像を確認するすることに行なわれます。日常診療の場では脊椎エックス線撮影をする機会がよくありますが、後縦靭帯骨化が認めれても、症状がまったくないことがよくあります。
介護にあたって、①.首や股関節を強く屈曲すると、神経症状が強くなり、時には四肢麻痺を引き起こす場合がありますので注意すること②.知覚障害と筋力低下のため手に持ったものを落としたり、ふらついて、転倒したりすることがあるので、注意深く観察すること、③.廃用性筋萎縮を防ぐため自分でできることは自分で行なうよう援助すること などが必要です。
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