杉山ドクターのやさしい医学講座

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2010年04月05日 09:00

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


4.多系統萎縮症


2006年3月までは「シャイ・ドレーガー症候群」となっていましたが、これに「線状体黒質変性症」「オリーブ橋小脳萎縮症」が追加されました。いずれも小脳、脳幹部、脊髄の一部の変性が認められます。原因は不明で、根治的治療はなく、対症療法が行なわれます。




「シャイ・ドレーガー症候群」は1960年にシャイとドレーガーにより報告。30歳代から60歳代にかけて、立ちくらみや失神、尿が出にくいなどの排尿障害で発症し、自立神経系の変成が徐々に進行する原因不明の疾患です。




主な症状としては、立ちくらみや失神などの起立性低血圧による症状が代表的で、その他、発汗異常(汗が出にくい、皮膚が乾燥しやすい)、排尿困難、尿失禁、便秘、インポテンツなどの自立神経症状が重なって出てきます。病気が進行し運動失調(ろれつが回らない、酔っぱらったようなふらつき歩行など)や、パーキンソン症状(筋肉のこわばり、手足のふるえ、小刻み歩行など)、睡眠時無呼吸症候群などの症状が加わってきます。




自立神経系の神経細胞だけでなく、運動神経系の小脳や脊髄運動神経細胞なども変性する広範囲の病変が特徴です。治療としては、起立性低血圧の管理が重要です。ひどい立ちくらみや失神による転倒事故や、脳の血流障害による多発性脳梗塞を起こさないために、昇圧剤を使用する場合があります。




多発性脳梗塞の予防にアスピリン製剤が有効な場合もあります。パーキンソン症状に対しては、L・ ドーパなどの抗パーキンソン剤が使われます。排尿障害や失禁、便秘などに対して薬物療法や、自己導尿、浣腸などの治療処置が行なわれます。いずれにしても、他の疾患による同様の症状と比べて効果が得られにくいようです。




介護の立場としては、急激な体位変換を避けることや、めまいや失神に対する精神的な恐怖感が強いので、精神的な支えをすることが必要です。非尿や排便がスムーズにできるように声かけや腹部マッサージなどが有効です。パーキンソン症状や運動失調が進行すると動けなくなり、最終的には寝たきりになることが少なくありません。










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