杉山ドクターのやさしい医学講座

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2010年04月28日 09:00

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


6.脊髄小脳変性症


小脳や、脳幹から脊髄にかけての神経細胞が変性することによって運動失調をきたす病気を総称して脊髄小脳変性症と呼びます。障害される部位と症状により、色々な形に分類されます。原因は不明で、遺伝性のものもあれば、遺伝性でないものもあります。常染色体優勢遺伝をする型では、親子、兄弟に発症する場合もしばしばあります。最近では遺伝子診断も行なわれるようになりました。出現頻度は、10万人に対して7~10人程度と推定されてます。




滑らかな運動を可能とする中枢である小脳の働きが障害されるため、酔っ払ったような不安定な歩行、ろれつが回らない話し方、ものをつかもうとしてもうまくつかめない失調症状などが特徴的な症状です。一般的に筋肉の力は低下しません。めまいや手足の震え、排尿障害、発汗障害などを合併することもあります。




病型によって違いはありますが、病気の進行はゆっくりしていて、生命に対する危険性が少ないことが、筋萎縮性側索硬化症や筋ジストロフィーなどの神経難病とは異なった特徴であるといえます。しかし、オリーブ橋小脳萎縮症や、パーキンソン症状を合併した病型のものは、進行が比較的速く数年から10年位で、寝たきりになって時に補助呼吸が必要になる場合があります。




原因が不明のため、根本的な治療方はありません。運動失調に対してTRH(甲状腺ホルモン分泌促進ホルモン)の静脈注射が有効である場合があります。パーキンソン症状に対しては、Lドーパなどの抗パーキンソン剤を使います。立ちくらみ、排尿障害などに対しては対象療法の薬が使われます。




症状が徐々に進行していきますから、その時々の状態に応じて筋力低下を防ぐためのリハビリテーションや適切な器具の使用転倒などの危険防止対策などが実施されなければなりません。しばしば転倒するようになると、ヘッドギアや肘・膝に厚手のサポーターをつけることも必要になります。手すりや段差の解消、適切な家具の配置など生活環境を整えることが非常に重要です。見守りや外出支援のための訪問介護などの介護保険サービスを利用することで、療養生活を豊かに積極的に送ることができれば素晴らしいことです。




失調性言語障害が進行すると、本人と周囲のものとのコミュニケーションが障害されて、本人の苦痛が非常に高まります。周囲のものは、根気強くコミュニケーションをとるように心がけてほしいと思います。病気が進行すると最終的に寝たきりになって、呼吸感染症、尿路感染症、褥創の予防や治療が大切になり、呼吸状態が悪化して気管切開や人工呼吸器装着、嚥下障害による胃瘻や経管栄養なども必要な状態になっていきます。




介護保険の第2号被保険者に発症した場合、仕事や家庭生活に深刻な影響が出てきます。遺伝的要素の強い場合には、子供自身の発病の恐怖や結婚への影響など、深刻な問題を引き起こします。様々な悩みに対するカウンセリングや利用できる制度を十分利用できるようなアドバイスが受けられるような総合的な援助の必要な疾患が脊髄小脳変性症なのです。










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