杉山ドクターのやさしい医学講座

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2010年05月28日 11:42

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


9.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症


糖尿病とは、身体を構成している細胞のエネルギー源であるブドウ糖を細胞内に取り入れるため欠くことのできないインスリンの働きが低下して起こる病気です。血液中にはブドウ糖が余っているのに、(高血糖)、細胞内は飢餓状態なのです。このような状態が長く続くと、細胞や組織の機能に特徴的な障害が出てきます。



特に最小動脈の変性が進行して、3大合併症といわれる、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症が発症します。さらに、全身の動脈硬化が進行して、虚血性心疾患、脳血管性障害、下肢の閉塞性動脈硬化症なども問題になります。



今回は、特定疾病の1つとして上げられている、3大合併症を取り上げます。


1)糖尿病性神経障害



糖尿病発症後比較的早くから認められる合併症で、知覚神経や自立神経が障害され安いため、足先や足底のしびれ感、痛み、冷や汗、胃腸障害、残尿感、下痢、便秘、インポテンスなどがあります。


心臓自立神経障害では致死的な不整脈を引き起こすことがあります。スリッパが脱げても分からない、つまづきやすく転倒しやすい、立ちくらみが起こることのため、転倒防止に注意しなければなりません。感覚低下のため低温やけどや褥創を起こしやすいので、アンカなどを使うとき直接身体に接触しないように注意することが必要です。



2)糖尿病性腎症

腎臓血管の臓器といわれるほど毛細血管が豊富です。糖尿病になって10~15年経過しますと、毛細血管が変化を受けて糖尿病性腎症が発症します。はじめは蛋白尿が出てきます。(尿があわ立ちやすい)が、この段階では自覚症状はありません。次第に進行しますと、浮腫、体重増加、高血圧、全身倦怠感、などの腎不全症状が出てきます。




最終的に尿毒症の状態になったら、人工透析療法を受けることになります。人工透析療法の原因疾患としてかつては慢性腎炎が圧倒的に多かったのですが、最近は糖尿病腎症が第1位になりました。腹膜透析(CAPD)は自宅で透析ができますが、血液透析は原則として週3回透析施設に通院して治療を受けなければなりません。他の合併症を併発しているケースが多いため、通院介助が必要となる場合が少なくありません。




3)糖尿病性網膜症


糖尿病性網膜症は成人における失明の原因の上位を占めているため、その対策は非常に重要です。血糖の厳密なコントロールと網膜症を早期に診断して光凝固術などの眼科的な治療を適切に実施することで、多くの場合失明を防ぐことが出来るようになりました。




網膜の毛細血管に変化が起こると血管が破れたり詰まりやすくなります。閉塞した血管を補うように新生血管が作られますが、この新生血管は破れやぶれやすいためさらに出血を起こしやすくなります。このような悪循環が進むと、網膜の病変は急速に進行します。物を見るとき焦点が合わされる黄斑部に出血が及ぶと、視力が低下する、視界がぼやける、目の前を虫が飛んでいるように見える、物がゆがんで見えるなどの症状が出てきて、最終的には失明に至るのです。










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