杉山ドクターのやさしい医学講座

2人3脚

2010年06月18日 08:00

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)




12.閉塞性動脈硬化症


閉塞性動脈硬化症は、四肢、特に下肢の動脈硬化が進行して、動脈が狭窄・閉塞を起こして、血行障害を起こす疾患です。慣れない正座を続けた時、足がしびれてきて痛みが出てきます。また、立ち上がろうとしても力が入らないことがあります。これは正座より下肢の動脈が圧迫されて血行障害がおこったためです。




この場合足を伸ばせば症状が消失しますが、閉塞性動脈硬化症は、冷感、しびれ感、疼痛などの症状が持続します。その結果、足の切断の可能性もある怖い病気です。




「人は血管とともに老いる」といわれるように、動脈硬化は年齢とともに進行しますが、促進要因としては、喫煙、糖尿病、高血圧症、高脂血症などがあげられます。予防と悪化防止のためんは促進要因の対策は重要です。最も特徴的な症状は、ある程度歩くと下肢に筋肉痛が出現し、しばらく休むと痛みが消失して歩けるようになるというような間歇性歩行です。





このような症状が出現した場合には閉塞性動脈硬化症を念頭においた詳しい検査や治療が必要です。症状・状態により、重症度は4段階に分類されます。(Fontaineの分類)。介護保険の特定疾病では、Ⅱ度以上に該当するものを対象としています。 Ⅰ度 冷汗、しびれ感   Ⅱ度 間歇性跛行(びっこを引く)  Ⅲ度 安静時痛   Ⅳ度 潰瘍、壊死





安静時の下肢痛や潰瘍形成、壊死は動脈の血流が著しく低下した状態です。指趾の壊死部には痛みがありませんが、そのやや中枢側では激烈な痛みが発生してモルヒネなどの鎮痛剤が必要になったり、下肢の切断がおこなわれる場合があります。診断方法には、動脈拍動の減弱消失、皮膚温の低下、チアノーゼの出現、皮膚の黒色化などの理学的な所見や、四肢の血圧を測定するABI法、ドップラー検査、血管造影法などの検査があります。




治療法としては、禁煙の徹底、適度な運動など生活習慣を整えること、糖尿病、高脂血症、高血圧などの合併症の治療につとめることが基本で、次に、薬物療法や、外科的治療を行ないます。薬物療法には、血管拡張薬や抗凝固薬があります。抗凝固薬を使っている場合には、鼻や歯茎、消化管などからの出血に注意することが大切です。




重症例には、人工血管や自己静脈を利用したバイパス術、カテーテルを利用した経皮血管拡張術やステント留置術などの外科的治療が行なわれます。四肢の切断(指趾の小切断も含めれば)にいたる例は全体の5~10%といわれています。筆者の経験でも、切断手術が1回に留まらずに、何回か繰り返して大腿部以下を切断した例もあります。患肢は血流が少ないので、感染に対する抵抗力や創傷治癒力が低下していますから清潔保持やけが予防に気をつけなければなりません。














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