がんを知る~最新医療と暮らしの応援~パート2
がんを知る
~最新医療と暮らしの応援~
静岡県立静岡がんセンター公開講座・静岡新聞パート2
痛みを和らげる方法
~くすりの話~
(県立静岡ガンセンター薬剤部薬剤長 篠 道弘)
痛みは我慢しない
薬には病気を治すものと症状をコンとロールするものがあり、がんの痛みを和らげる薬は後者に当てはまります。痛みを我慢すると食欲が落ちたり、睡眠不足になったりと体力を消耗します。また、放射腺治療に必要な姿勢がとれない、痛みで動けず寝たきりになり、床ずれ(褥創)ができるなど患者さんの生活の質(QOL)が低下します。
しかし痛みの場所や程度は検査では分かりません。痛みのコントロールのためには、患者自身が医師や薬剤師らに「どこが、どのくらい、どのように痛いのか」また、処方された痛み止めがどのくらい効いたのかを積極的に伝えることが重要です。
1986年WHO(世界保健機構)が痛み止めの使い方ガイドライン「WHO3段階除痛ラダー」を発表し、現在世界中にこのガイドラインに沿った治療が行なわれています。痛みの増強に対して、利用する薬を3段階に分類し、痛みに応じて適切な処方をする仕組みになっています。
第1段階として、アスピリンなどに代表される麻薬成分を含まない「非オピオイド系」痛み止めを、それでも痛みが残るようであれば、モルヒネなどの麻薬成分が含まれる「オピオイド系」の痛み止めを使います。
オピオイドを正しく知る
オピオイド系の痛み止めは鎮痛作用が強力でがん以外にも、心筋梗塞の痛みなどに使用されています。オピオイドは痛みをとる作用が強力なだけで、ほかの感覚には影響しないので「服用すると何もかもわからなくなる」わけではありません。また、依存症、いわゆる麻薬中毒を心配される方もいますが、がんの痛みにオピオイドを使っている限りは中毒を心配する必要はありません。
また、非オピオイド系薬は2~3倍に増量すれば効果の上限に達してしまいますが、オピオイドは患者さんそれぞれの痛みに応じて、桁が違うほどの投与量を処方することもあります。飲み薬をはじめ、座薬、注射、貼り薬など形もさまざまなので、病院側が、患者さんの状態に合わせた処方を考える必要があります。
効果の高いオピオイドですが、副作用もあります。オピオイドが消化管の「蠕動運動」を遅くし、便秘が起こります。程度に合せて下剤も一緒に使用して対処します。吐き気も代表的な副作用の一つです。成分が脳の吐き気を感じる部分に作用するのです。気持ち悪くなったり、実際には嘔吐したりする患者さんには、、吐き気止めを投与しコントロールします。
眠気は、薬本来の成分と、痛みが取り除かれたことにより、それまでの睡眠不足を解消するための眠気が重なって起こります。副作用を上手にコンとロールしながら使用するオピオイドですが、一度服用を始めたら一生使い続けなければいけないと誤解している患者さんも見受けられます。目的が痛み止めなので、痛みそのものが和らいだり、痛みの原因が解消されたりした場合は、医師の指示に従って、徐々に量を減らし、最終的には投与を中止する場合もあります。
痛みの波に合わせて服用
飲み薬には、成分がゆっくり放出され、長時間効き目が続く「除放性製剤」と効き目は短いもののすぐに効果を表す「速効性製剤」があります。痛みを波、薬を防波堤に例えると、普段の波は、適量の除放性製剤で防ぎ、突然の強い痛みは速効性製剤を緊急救助的に追加して防ぎます。これを「レスキュー・ドーズ」と呼びます。波が常に防波堤を越えるようになると、薬の量を増やして痛みに対応するのが最近の治療です。
オピオイドを正しく理解すれば、痛みが和らぎ、患者さんの毎日がより意義深いものになります。静岡がんセンターは「痛みを和らげる方法」というガイドブックを作成しオピオイドが初めて処方された患者さんへの説明に活用しています。さらに、自らの痛みを正確に把握し、適切な疼痛治療に生かすために「痛み日記」を用意し、飲んだ薬の種類、痛みの改善具合、副作用の程度などの記録を促しています。現在多くの病院で、医師、看護師、そのほかの専門家を加えた緩和ケアチームが活躍しています。痛みがある場合は我慢せず、緩和ケアチームに相談してください。
<ホーム長のつぶやき>
痛みは我慢せず、医師と相談しましょう。いま、麻薬の使い方によって痛みをコントロールしてくれる医師が多くなってきました。怖がらず痛み止めを使える時代になってきました。痛みの波に併せて服用するレスキュー・ドーズに感動しました。知識をたくさん得ることが必要ですね。
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