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2010年01月13日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


12.食欲

「食欲=生命力」。在宅医療に取り組んで、食欲こそ生命力の現われだということをつくづく感じます。以前私が訪問診療していたGさんは、食事が取れなくなって朦朧状態になりながらも、自宅で点滴を数日間実施。そうすると食べられるようになって再び元気になりました。そういった経過を、約4年間で5回ほど繰り返し、「Gさんは不死鳥のようだね」と訪問看護師と話していた方でした。



熱が出ても食欲があればあまり心配することはありませんし、逆に、点滴などの処置を続けていても、食欲が改善しないと、その後の経過がよくないものです。




高齢者の疾病では、典型的な症状がでにくく、一旦発症すると急変しやすいことが特徴です。心筋梗塞になっても胸痛すら訴えないことや、肺炎でも熱や咳、痰が出ない場合が少なくありません。また、介護者が気づかないで突然、危篤状態に陥ることもしばしば経験します。





では、典型的な症状が出ないとしたら、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

「第1は食欲。何か大きな病気があるときは食欲が先ず落ちます。第2に表情や動作などが普段と変わっているかという点です。いつもと比べて元気がなくなり動作が鈍くなったら要注意です。第3は、脈拍、呼吸、体温などのいわゆるバイタルサインです。」と私は答えることにしています。そのくらい食欲は生命の指標になると、私は考えています。



施設ケアと比べて在宅ケアのよい点は、その人が好む食べ物をその人のペースで食べられることです。バランスの良い献立が用意されていても食べられなければ意味がないし、逆に偏りがあったり、たとえ同じものが毎日つづいていても食べられるのであればそちらのほうがよいのです。



衰弱が進行すると次第に食欲が低下し、飲み込むことが困難になります。飲み込むのを確認してから次の食べ物を口に入れる、むせやすくなったらとろみをつけるなどの工夫が必要になってきます。市販のプリンやヨーグルト、ゼリーなどを常に用意しておいて、適時食べさせることにより、元気になったケースが少なくありません。



また、痛みのために食欲が落ちて寝たきりになった末期がんの患者さんにモルヒネ(麻薬)による痛みのコントロールをしたところ、食欲が改善して意欲が出てきて、外出できるまでに回復した例を何例も経験しています。まさに、「食欲=生命力、生命力=食欲」です。



また、口の中の衛生状態も食欲と大いに関係します。近年、口腔ケアは高齢者の健康に関係するとして見直されています。訪問歯科診療や、訪問歯科衛生指導などは、健康保険や介護保険で認められていますので、利用すると良いでしょう。口から食べられるようになると表情が生き生きしてくるものです。このように食欲のチェックが在宅ケアでは欠かせません。




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Posted by 2人3脚 at 14:06│Comments(0)医学講座
 
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