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2010年04月12日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


5.初老期における認知症



介護保険で第2号被保険者の障害の原因として認められている特定疾病のひとつが「初老期における認知症」です。アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(ピック病)、レビー小体型認知症、血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病などがあって、外傷性疾患、(頭部外傷、硬膜下血腫等)、中毒性疾患(有機溶剤、金属、アルコールなど)、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、栄養障害、(ビタミンB12 欠乏症など)を除いたものです。



①.アルツハイマー病

脳の神経細胞の萎縮と老人斑と呼ばれる神経細胞の変性が特徴です。頭部CT やMRIでは脳のびまん性萎縮が認められます。40歳後半から65歳未満に発症して、若年期認知症として最も多いものです。症状は記憶障害から始まり徐々に進行していきます。初期では塩酸ドネベジル(アリセプト)が有効な場合があります。



②.前頭側頭型認知症(ピック病)


前頭葉や側頭葉を中心とした脳の萎縮が特徴的。高度な判断と気持を集中させる働きを持つ前頭連合野の働きが低下するため、多動、徘徊、多弁、周囲への過干渉など活動性が亢進したり、抑制がとれ、性的逸脱行為、窃盗なども認められる症状を示すことが比較的多く見られます。逆に、非活動的、無関心になり、興味が失われ、自発性が減退するときもあります。記憶力は初期の段階では、比較的保たれています。発症年齢はアルツハイマー病とほぼ重なっています。出現頻度は、アルツハイマー病の1/10から1/15といわれています。




③.レビー小体型認知症


側頭葉と後頭葉(視覚中枢がある)の萎縮や活動性の低下が特徴。パーキンソン病の病変に見られるレビー小体という異常な構造物が、、認知機能に関わる大脳全体に見られることから名付けられました。記憶障害以外に、幻覚、特に生々しい幻視、及びパーキンソン症状が特徴です。さらに、便秘や失禁、起立性低血圧(立ちくらみ)などの自立神経症状を伴うことがあります。治療としては、パーキンソン症状に対しては、抗パーキンソン剤が有効な場合があります。精神症状に対してトランキライザーなどを使うと、パーキンソン症状を悪化させることがあるので注意が必要です。



④.クロイツフェルト・ヤコブ病


急速に記名・記憶障害、失見当識(人物・場所・時間などの見当がつかなくなること)が進行し、、ミオクロニーや舞踏病様{手足などが震えること)の不随運動を伴って、一年以内に死亡することが多く見られます。原因は感染性たんぱく質である異常プリオンと考えられています。プリオンとは、253個のアミノ酸から成る細胞膜の構成成分です。異常なプリオンは感染性をもち、正常なプリオンの構造を変化させて、脳の神経細胞を破壊します。遺伝性と孤立性とがあります。脳・脊髄・脊髄液・目などに異常にプリオン濃度が高い。社会的に問題となった牛海綿状脳症はプリオン病です。




若年期認知症介護の実態調査報告書(社団法人認知症の人と家族の会、2005.5)から認知症に気づいたときの症状(件数:重複回答あり)


●物忘れがひどくなった                         49件

●数字の読み違いやお金の計算ができない             24

●同じことを聞いたり言ったりする                    21

●仕事が出来なくなった(ミス)(能力の低下で退職させられた)  19

●言動がおかしくなった                          16

●料理が出来なくなった
{味が変わった・メニューが単調になった)               15

●無気力、無関心(趣味に興味がない)                14

●道がわからない(出かけて帰れない                 12

●お金を盗まれたなどの被害妄想                   11

●感情が不安定で怒りっぽくなった                   7

●うつ状態(閉じこもり、他人に会いたがらない)           7

●衣類がちぐはぐになったり身だしなみが悪くなった         6

●電化製品が使用できなくなった
 道具の使い方が分からない                      5

●電話が取れない、かけられない                    5

●言葉が出なくなった                           5

●同じものを何回も買ってくる                       5 




初老期における認知症では、介護の問題もさることながら経済的問題、就労の問題など様々な問題を抱えています。





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Posted by 2人3脚 at 19:29│Comments(0)医学講座
 
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