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2010年01月20日

認知症の人の心理を理解しましょう

認知症を理解しましょう
                            (認知症の人家族の会顧問 三宅貴夫医師より)

認知症は治らないことが多いので、認知症の人の介護をするためには、認知症の人の心理を理解することが重要です。その心理の特徴は4つあります。

・もの忘れ

もの忘れは、認知症の人の基本的な症状です。もの忘れのない認知症はありません。もの忘れとは、新しくて大切なことを覚えにくく、忘れてしまうことです。認知症のない健康な高齢者は、新しいことが覚えにくくても、新しくて大切なことはことは覚えることができます。また、覚えにくいと自覚してメモをとるなど、自分のもの忘れを補うことができます。



健康な高齢者は、夕食をすませた後、何を食べたか食事の内容をすべて覚えていなかったとしても、食べたこと自体忘れることはありません。しかし、認知症の人は夕食を食べたこと自体、すっかり忘れてしまうのです。



こうしたもの忘れのある認知症の人は、数分前にみたこと、聞いたたこと、言ったこと、したことまで忘れてしまっているので、「さっきいったでしょう?」とか「同じことを何度聞くの?」と言っても困惑するだけです。



・判断力の低下


もの忘れと共に判断力が低下します。その1つとして、時間の流れの中での判断力(時系列的判断)の低下が見られます。例えば認知症の人は、「今朝は掃除をしたので、昼は買い物に行き、夜はテレビを見よう」といった判断ができにくくなります。時間の概念に頼らずに、その時々で対応する必要があります。



抽象的な判断力も低下します。なぜここにいるのか。世話をいつまでしてくれるのかなど、抽象的なことがよく分からなくなります。交差点の信号を見て、赤青黄色の3色を言うことはできても、その色が何を意味するかまでは理解できにくくなり、赤でも道を渡ってしまうかも知れません。



さらに、物事を総合的に判断することができにくくなります。たとえば、尿意をもよおしたとき、どの程度我慢できるか、トイレはどこか、どのくらいの時間にたどりつけるかなどを、総合的に判断して行動することができにくくなります。



・過去に生きる


認知症の人が退職して、かなりの年月が経っているにも関わらず、朝になると「会社に行く」と言い張って出掛けようとして、家族を困惑させることがあります。また子供たちが独立して夫婦二人だけの生活している認知症の女性が、夕方になると「子供が帰ってくる。夕食の用意をしなければ」と落ち着かなくなることがあります。




こうした言動は、認知症、特にアルツハイマー病の人に特徴的な「過去に生きる状態と考えられます。アルツハイマー病を発病すると、発病後の記憶を保持できません。また、病気の進行と共に発病前にさかのぼって記憶が曖昧になり、失われるようになります。




「過去に生きる」という認知症の心理を知ることで、言動をより理解できるかも知れません。また、「過去に生きる」認知症の人を現実に引き戻すことが良いとばかりは言えません。むしろ「過去に生きる」状態を受け入れたほうが良いこともあります。





たとえば、認知症の夫にとって、歳をとった現在の妻は妻ではなく、「世話をしてくれる親しい女性」となることがあります。それは寂しいことですが、頭から否定したり訂正するのではなく、妻はそのふりをして対応するほうが、認知症の人の精神状態が安定することもあるのです。




・感情は残る


認知症で認知機能の低下は起こりますが、それ以外の心の活動である「感情」「思い」「期待」「プライド」「正確」は残っていることが多くあります。好きなものを食べたことは忘れても、食べていることの満足感はありますし、花見に行ったことは忘れても、桜うを見てきれいだと思う感情は残っています。



この残っている感情に十分配慮することが、認知症の介護にはとても重要です。一方で感情からむことで、認知症の介護はより難しくなるとも言えます。



感情が残っている認知症の人にとっては、話の内容よりも、話の仕方や、言葉づかいが大切です。また、和める雰囲気づくりも心がけましょう。なお、性格については、認知症の状態によって、変化しないこともありますが、より鈍くなる、より穏やかになるなど、さまざな変化があります。



認知症の人の心理を理解しましょう







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