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2010年07月03日

杉山ドクターの認知症を理解するための8大法則1原則パート1

認知症をよく理解するための
8大法則 1原則  
                    
                      (認知症の人と家族の会 副代表杉山孝博医師)



第6法則 こだわりの法則 パート1




「あるひとつのことに集中すると、そこから抜け出せない」。周囲が説明したり説得したり、否定したりすればするほど、逆にこだわり続ける」という特徴がその内容です。






ある人とある人の間に何らかのこだわりが生じた場合、普通、相手を説得したり、相手に説明したり、命令したりしてそのこだわりを解消しようとします。ところが認知症の世界ではこの方法はほとんど通用しません。





こだわりに原因がわかれば、その原因を取り去るようにする、そのままにしておいても差し支えなければそのまま認める、第3者に入ってもらいこだわりを和らげる、別の場面への展開を考える、などの方法が認知症の人のこだわりに対応する基本的なやり方です。





認知症の人の過去の生活体験がこだわりとして現れることがよくありますから、本人の生活体験を知っていると、こだわりに対して上手に対応できます。





例えば、お金や物に対する執着は醜く、他人には話せないと家族は思い、どのように対応していいか家族は戸惑ってしまいます。私の経験では、金銭に対し強く執着している認知症の人は、多くの場合、かって経済的に厳しい体験を持っています。女手ひとつで子供を育てた人、倒産や詐欺にあった経験をもっている人、長い間一人暮らしをしていた人など、どの人も、生きていくのに最も重要な手段である金銭や物に執着するのは無理もない人たちであるといえます。





また、道に落ちているものを収集している場合、家がゴミの山になることはたまらないことですが、もったいないと思って拾ってくる認知症の人のほうが、貴重な資源を平気で捨てる人よりよほどノーマルではないでしょうか。




具体的な例を見ていきましょう。私が担当している保健所の認知症相談(老人精神保健相談)に、初老期の女性が次のような相談に来られました。「私が外出から帰ると主人は私のところにやってきて、“今までどこに行っていたのだ。どこで男と逢っていたのだ”と毎回言うようになりました。先日、息子と一緒に帰宅しましたら、息子と関係しているとまで言い出しました。情けなくて・・・。どうしたらよいでしょうか」さらに話を聞きますと、1年ほど前から物忘れがひどくなり物を紛失するようになったため、印鑑や預金通帳を奥さんが保管することにして、夫が請求しても渡さないことにしたということでした。






「自分にとって大切なものをあなたがもっていってしまったと考えて、ご主人はあなたに対し猜疑心を持ったのです。請求されれば通帳や印鑑を渡しなさい。無くくなっても再発行や改印届けを出せばよいのですから」とアドバイスをしました。







翌月の認知症相談に奥さんがやって来て、「先生の言われたとおりにしましたら、浮気妄想はきれいになくなりました。荒れは本当に認知症だったのですか?」






こだわり続ける認知症の人に対して、その場しのぎの対応や虚偽の言葉で納得させることがしばしば必要となることがあります。「第2法則=症状の出現強度に関する法則」にあるように、よその人に対してしっかりした態度を示すことから、第3者がかかわると、こだわりが軽くなることが少なくありません。





認知症に人は、警察官や役所の人、郵便局や銀行の職員、医師など信頼度が高い人には、認知症が相当進んでも信頼するものです。





「私の年金を嫁が勝手に引き出している」と疑い続けている人に対して、預金通帳を見せながら、「1円も引き出されていない」と家族が説得しても聞き入れませんが、郵便局員から「○○さん、年金は間違えなく振り込まれていますよ、安心して下さい」といわれると素直に信じ安心した表情を見せてくれます。残念ながら一安心しても、記銘力低下(ひどい物忘れ)のためしばらくすると再び心配し始め郵便局へ行くことになります。そのときも郵便局員は同じように安心する言葉をさらりとかけてほしいと思います。





杉山ドクターの認知症を理解するための8大法則1原則パート1




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