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2010年09月01日

医師の目・人の目 パート15 問題なければそのまま

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症 」パート13

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




問題なければそのまま


こだわって同じ症状を繰り返す認知症の人に対する対応の仕方を、前回に続いて考えてみたい。全部で八つある方法の2番目は「そのままにしておく」だ。介護者は誰でも、認知症の症状を軽くしようと工夫しながら対応している。介護専門職は、一つ一つの症状を「問題」としてとらえ、その解決のため努力する。





それぞれは決して間違っていないが、効果が得られないことも少なくない。そのような時、努力や工夫が足りないと考えて働き掛けを強めても、これまで述べてきたように、認知症の症状がひどくなる場合が多い。「このままにして何が問題か。命に別状がなければこのままにしておいてもよいのではないか」と発想を変えるのも一つの方法である。





真冬でも薄着で平気な人がいる。着物を着せてもすぐ脱いでしまい、着せても脱ぐを繰り返すので、家族はイライラしてくる。認知症のある状態では、薄着でも風邪をひかないし、寒さを感じないこともある。だったら、そのままにしておけばよい。半年経過すれば真夏になって「冬の薄着」という「問題」は解決する。





認知症になることは、さまざまな規制・規範から抜け出て自然人に戻ることである」と考えれば、エアコンのある今の生活のほうが異常で、認知症の人の世界の方が自然であるととらえられるのではないだろか。道端に落ちている、使えなくなった道具を拾ってきて、庭にゴミの山を築いた認知症の男性がいた。家族が注意するが、収集癖は直らない。結局、本人のいない時にゴミの山を適当に処分するほうが楽だとわかって、注意しないことにした。





しかし、ある時、自分が集めた物がなくなっているのに気付いて「お前が隠したのではないか」と家族に詰め寄った。「みっともないから処分した」と言わないで、「知らない人が庭に入ってきてもっていったと思うよ。これからは私が見張っているから安心して」と言ったら興奮がおさまった。





ちなみに、その男性がかって職人だったという。道具を大切にすることを徹底的にたたきこまれた人だからこそ、大切な道具が無造作に捨てられている状態に我慢できなかったのだろう。幅広い考え方と症状が変化するという見通しをもっていなければ、「そのままにしておく」ことは案外難しい。介護に関わる人は認知症に関する知識を深め、経験のある仲間などのアドバイスを受けることが大切だ。





医師の目・人の目 パート15 問題なければそのまま






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