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2010年09月04日

家族の接し方10か条・第5条意欲の活性化について

家族の接し方10か条
                                 (ボケ予防協会より)

第5条 意欲の活性化
本人を 生きいきさせる よい刺激





人は誰でも快い環境や雰囲気、ほどよい刺激を受けると、気分がよくなり、気持ちが晴れやかになります。認知症老人も同じです。認知症だから何も感じないのではありません。新しいことを記憶することは困難ですが、気持ちは豊かです。






特に、昔の歌や踊り、長い間行なってきた料理や仕事などは“手続き記憶”といって、認知症になってもかなりの部分が残っています。理屈ではなく体で覚えているのです。






昔の場面が好きな人は、グループ活動している場面へ参加し、興味のある場面で自然に溶け込んで楽しむ機会になります。参加することで他者との交流も広がり、他者との関係ができたり関係の中で快い刺激も出てきます。例えばいろんなグループ活動をしている場面に接していくうちに、今まで経験したことがなくても、絵などを描いたことがなくても偶然描いた作品から褒められたりすると、そのことがきっかけで味のある作品が生まれてくる場合があります。





認知症になっても、“隠れた能力を発揮”することができるのです。それらの機会を上手に作ることが大切です。また、一人が好きな人は昔習った楽器や好きな音楽を聴くのもよいでしょう。縫い物が好きなようであれば簡単な小物などを作り日常生活の中で使用し役に立っていることを伝え、感謝の気持ちを表すことも一つの方法です





失敗感を持たせないように配慮し完成した作品から可能性をみいだせる様にするとともに他者が評価することで、自信も取り戻せ、新しいことへ挑戦できる糸口にします。





安全で穏やかな生活の中に、心が動くような楽しい生活環境をつくることなのです。感覚は健康な人と同じです。精神的な部分に触れるような働きかけが意欲を引き出し、生きいきするのです。よい刺激を絶えず与える工夫をしましょう。








<ホーム長のつぶやき>


生きる意欲、食べる意欲
歩きたいという意欲から
関わりを通して変っていったB様



2人3脚に入居したB様は開所して1ヶ月が過ぎた頃でした。入院している病棟で初めてお目にかかりました。ほとんど喋らずうつむきかげんでヨチヨチと歩いていました。グループホーム入居前に尿路感染症に罹り一気に歩行困難、その後尿路感染症は改善したものの、自らの足で歩こうとしませんでした。車椅子でグループホームへ入居してきました。ほとんど日中も寝たきりの状態で、腰にも寝だこ(褥創)ができかけていました。歩けるのに歩けない。何とか歩けるようにしよう!





●外に目を向けていったことによって変わってきた


まず、自室に閉じこもっている時間をできるだけなくしていこうとケアプランを立案しました。生きる意欲がなく声を掛けても拒否的な言葉ばかりで、精神症状の方が強く一日中ベッドの生活です。ある時、地域の生涯福祉推進委員のお誘いで、保育園児と過ごす老人会に招待され、B様をお連れしました。園児達と接しているうち笑顔も見られました。その頃から明るい兆しが見えてきたのです。





●外にお誘いするプランを多く取り入れて


次は小学校・地域との合同運動会、地域の文化祭や福祉展にお誘いしていくうちにベッド上で過ごす生活から徐々に車椅子でディールームで過ごす時間が増えてきました。しかし、歩く意思は全くありません。整形外科に受診しましたが異常なし。次の目標は自分の足で歩くこととしました。





●歩けるようになったきっかけ


食事は3食とても早く、ほとんど噛まずに口の中に詰め込みながら食べてしまうため、職員はそばに寄り添い少しずつ小分けにしながら食べていただきました。しばらくすると危険な食べ方がなくなり落ち着いて食べられるようになったため、見守りで食べられるまでになりました。食事に対する意欲がとても強かったので食事前、車椅子を徐々にテーブルから遠ざけ椅子まで歩く練習を始めました。何ヶ月か繰り返ししているうちに車椅子を使用しなくてもつたい歩きで歩けるようになりました。





●意欲につながったきっかけは行動範囲が広がってきたこと



生活リハビリをコミュニケーションによって積極的に関わっていただけるように気を配りしました。自分の食べた茶碗を片付ける、洗う、洗濯を干す。お絞りをたたむ、セットする。役割をつくっていったところ長い時間立っていることができるようになってきました。自分の趣味活動の編み物にもチャレンジ。2人3脚のすべての椅子カバーを編んでいただきました。「私の終の棲家は2人3脚です」嬉しい言葉が聞かれました。






意欲を出すことによって自分自身の体(精神面・肉体面)のバランスも正常化し、こんなにも変わってきたことを実証された例です。あきらめずにあせらずにコツコツとチャレンジしてみましょう!














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2010年09月01日

医師の目・人の目 パート15 問題なければそのまま

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症 」パート13

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




問題なければそのまま


こだわって同じ症状を繰り返す認知症の人に対する対応の仕方を、前回に続いて考えてみたい。全部で八つある方法の2番目は「そのままにしておく」だ。介護者は誰でも、認知症の症状を軽くしようと工夫しながら対応している。介護専門職は、一つ一つの症状を「問題」としてとらえ、その解決のため努力する。





それぞれは決して間違っていないが、効果が得られないことも少なくない。そのような時、努力や工夫が足りないと考えて働き掛けを強めても、これまで述べてきたように、認知症の症状がひどくなる場合が多い。「このままにして何が問題か。命に別状がなければこのままにしておいてもよいのではないか」と発想を変えるのも一つの方法である。





真冬でも薄着で平気な人がいる。着物を着せてもすぐ脱いでしまい、着せても脱ぐを繰り返すので、家族はイライラしてくる。認知症のある状態では、薄着でも風邪をひかないし、寒さを感じないこともある。だったら、そのままにしておけばよい。半年経過すれば真夏になって「冬の薄着」という「問題」は解決する。





認知症になることは、さまざまな規制・規範から抜け出て自然人に戻ることである」と考えれば、エアコンのある今の生活のほうが異常で、認知症の人の世界の方が自然であるととらえられるのではないだろか。道端に落ちている、使えなくなった道具を拾ってきて、庭にゴミの山を築いた認知症の男性がいた。家族が注意するが、収集癖は直らない。結局、本人のいない時にゴミの山を適当に処分するほうが楽だとわかって、注意しないことにした。





しかし、ある時、自分が集めた物がなくなっているのに気付いて「お前が隠したのではないか」と家族に詰め寄った。「みっともないから処分した」と言わないで、「知らない人が庭に入ってきてもっていったと思うよ。これからは私が見張っているから安心して」と言ったら興奮がおさまった。





ちなみに、その男性がかって職人だったという。道具を大切にすることを徹底的にたたきこまれた人だからこそ、大切な道具が無造作に捨てられている状態に我慢できなかったのだろう。幅広い考え方と症状が変化するという見通しをもっていなければ、「そのままにしておく」ことは案外難しい。介護に関わる人は認知症に関する知識を深め、経験のある仲間などのアドバイスを受けることが大切だ。












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2010年08月29日

認知症介護・家族の接し方10か条第4条 理屈より納得を

家族の接し方 10か条 
                                          (認知症予防協会)

第4条 理屈より 気持ちを通わせ 納得を




認知症高齢者は、勘違いや間違ったことを言ったり、したりすることが多いものです。この際に介護者は、正しい事実を示しながら理屈による説得をするのが普通です。しかし、中等度以上の認知症の場合には、それではなかなか納得しません。





それは、認知症高齢者は、以前に起こった知的体験や、出来事を広範囲に忘れているので、今の問題とそれに関係する忘れられた過去のものとの比較や関連付けができなく、また批判や反省もできなく、知的な判断が悪いと言えます。





さらに、事柄の内容の小さな個々のものは分かっても、それを組み合わせて全体として認識しないので、意味が分からず不問視されて、そのため矛盾というものがなく非倫理的な考え方なのです。したがって、理屈による説得には通じないことが多いのです。この際には、なじみの関係の中で、共感的な(相手と同じような考え方になり、心の面から通じる)納得を図ることが重要です。






中等度以上の老年認知症の80歳の女性のケースで説明しましょう。彼女は食事をして10分もすると食べたことを忘れて、介護者にご飯を要求していました。介護者は彼女の唇にご飯粒がついていて、食卓におかずのかけらが落ちていル事実を指摘しながら、、ご飯を食べたことを理屈による説得を続けましたが、「それは他人が食べたもので知らない」と否定し続けました。






押し問答を繰り返していると、「私のご飯を食べさせないで殺すきか」と怒りだしてきました。その時、いつも食堂で並んで食べているなじみの女性高齢者が戻ってきて、「さっき私と一緒に食べたでしょう」と言うとそれは簡単に受け入れて、食事の要求はしなくなりました。





なじみの人のいう言葉には気持ちが通じて、心で分かるような納得のしかたをしているのです。これはそう難しいことではありません。なじみの関係をつくっておけば、容易にできることです。そうでなく高齢者の勘違いを、注意・叱責・監視・是正をし続けると、高齢者は困惑や混乱をしやすく、認知症の進み方を助長したりします。






<ホーム長のつぶやき>



2人3脚の理念は家族の協力


「ゆっくり時間をかけ、視線を合わせて語り合い家族と協力しがら、共に笑い、共に泣き、安心できる暮らしをつくっていきましょう。」と掲げています。この中には上記で掲げている―第4条 理屈より 気持ちを通わせ 納得を―について考えてみましょう。





K様は毎日のようにせん妄が出現し、我々介護者を困らせます。2人3脚のスタッフは演技派で色々と納得してもらうために、あの手この手を使って納得させるように演技をしています。ある日、「どうしても用事があるので家に帰らなければなりません。お金がないのでタクシー代1000円貸していただけないでしょうか」と車椅子をこぎながら事務所にやってきました。





「ハイ分かりました。1000円でよろしいですか。今、お帰りなっても家に誰もいないとずーと家に入れず外で待っていなければなりませんので、家に誰かいるか確認してから帰りましょうか」と納得していただきます。よく2人3脚では携帯電話を本人に持っていただき直説家族の声を聞いてもらっています。





家族が電話口にいれば今の状況を説明し演技を依頼します。家族もとても演技上手です。家族がいない時はうそ電話を掛けます。「もしもし、ちょっと風邪気味で声がおかしいのですが、私嫁の〇〇です。今日はどうしても用事があって出かけてしまうので、明日帰って来てもらえないでしょうか。申し訳ありません」と誤りますと「そうか仕方がないなー、明日帰ることにするよ、今日はこの病院に一泊とめてもら得るように頼んでみるよ」と返事が返ってきます。その後は落ち着いて過ごされます。





家族の力はすばらしい!私たちは家族の変わりにはなれないので、2人3脚を利用してもらうときは理念を説明します。そして家族の協力を依頼しています。長い長い間培ってきた家族の絆・愛情に勝るものはないと思っています。また、上記のように利用様同士の会話で納得できることも多々あります。利用者やスタッフ間でなじみの関係ができているからこそ納得することができ、落ち着いた穏かな日常生活が送れているのです。














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2010年08月25日

医師の目・人の目 パート14 こだわり、抜け出せない

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症 」パート14

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




こだわり、抜け出せない




こだわり、抜け出せない認知症には「一つのことに集中すると、そこから抜け出せない。周囲が説明したり説得したり否定すればするほど、こだわり続ける」という特徴もある。これを「こだわりの法則」と呼ぶ。『買い物に行くと毎日同じものを買ってくるし、夕方になると家に帰るといって出かけようとします。毎日毎日繰り返されるのでたまりません。この状態がいつまで続くかと思うとますますイライラしてきます」。この言葉に共感しない介護者はいないだろう。





こだわりに対してどのように対応したらよいだろうか。まず丁寧に説明する、説得する、駄目なものは駄目と禁止する、という普通の方法を試みる。この方法でうまくいくならばそれでよい。しかし説得してもすぐに忘れて効果がない、説得に一切応じない、駄目というと興奮する。という反応であれば、別の方法が必要になる。





本人のこだわり続ける気持ちを理解しこだわりを軽くするにはどうしたら一番よいのかという観点で、割り切って対応するのがよい。それには次の八つの方法がある。
①.こだわりの原因を見つけて対応する ②.そのままにする ③.第三者に登場してもらう ④.場面転換をする⑤.地域の協力理解を得る ⑥.一手だけ先手を打つ ⑦.本人の過去を知る ⑧.長期間は続かないと割り切る―という方法だ。






それぞれ具体例を通して考えてみよう。まずは「こだわりの原因を見つけて対応する」。認知症の人がこだわりを示すとき、その背景となる原因が見つかる場合がある。原因に対して適切な手を打つことで症状が軽くなることがある。「夫が私に浮気妄想を持つようになりました。先日たまたま息子と一緒に帰宅したら、息子と関係しているとまで言いだしました。どうしたらよいでしょうか」「何かきっかけはありませんでしたか」「心あたりはありません。ただ、物忘れが目立ってきたので、預金通帳を私が管理することにしましたが、最近、通帳を返せと強く言ってくるようになりました」







「大事な財産を妻が勝手に使っている、浮気をしているに違いないとご主人は考えたと思います。紛失しても再発行すればよいので、こだわりの原因である通帳を渡したらどうでしょう」1カ月後、再度受診して「先生の言う通りにしましたら、浮気妄想がすっかりなくなりました。本当に認知症の症状だったのですか」と報告してきた。













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2010年08月24日

認知症介護・家族の接し方10か条 第3条心のゆとりについて

家族の接し方10か条 
                                      (認知症予防協会より)



第3条 心のゆとり
怒らずに 相手に合わせる ゆとり持つ





在宅介護は日常生活の一環です。介護は家事や自営の場合は仕事、時には育児と平行して行なわなければなりません。ですから、介護者は理にかなった介護をと心がけても、なかなか思うように行かない場合が多くあります。認知症老人の意に添った介護を続けるためには、介護者は心に余裕を持ちたいものです。





認知症老人の行動には、介護者にとって迷惑なこと、驚くこと、いやがらせめいたことがあります。いわゆる問題行動といわれる行動です。しかし、その行動を問題と表現するのは介護者側であって、認知症老人にはそんなつもりはありません。皆さん目的や要求など、それなりのわけがあっての行動です。認知症老人の行動に対して、介護者側の価値観を押し付けて、行動を制することは、老人のプライドを傷つけたり、不安をかきたてたりします。そのことがストレスとなり、状態を悪くすることにつながります。





家族介護者は、認知症老人と毎日24時間一緒の生活では心理的に追い詰められ、良い介護が望めない場合があります。そのためには在宅介護は家族構成や環境などが異なりますが、可能な限り家族は介護の役割分担することです。そのことは介護者を孤立させない配慮となります。





さらに、介護者は完全主義はやめ、介護をオープンにし、多くの、特に近隣者の協力を得るようにしましょう。そして介護保険の通所サービスを利用し、時間的にも、精神的にもゆとりを持ちサービスなどを利用するのも良いでしょう。





自分の現状や日頃の思いを話し、相手が受け入れてくれることにより、自然に自分の立場を客観視することができます。そのことがゆとりにつながり、認知症老人の心を思い優しさが生まれます。そして相手に合わせる対応ができるのです。







<ホーム長のつぶやき>


心にゆとりを持つと
意に添った介護につながります。



●心を開くということは



ゆとりを持つということは自分一人で介護を抱え込まないことです。認知症であることをオープンにし、隣、近所、親戚また、組合いの方にも知っていただき協力をお願いしましょう。認知症が病気であることを地域の皆さんが理解されることで、奇異な目で見られることが少なくなり、自分達が病気になったとき地域の仲間が私を支えてくれるという気持になれば最高に素晴らしいことですね。地域の皆が支えあう、住み慣れた地域で認知症になっても穏かに生活できることがこれからの認知症介護です。




●認知症という病気を理解するということとは


今認知症の本人が自分の気持を伝えています。認知症という病気を理解すると、本人が伝えようとしたくても上手に伝えれない気持の感情が分かるようになってきます。さらに言葉の掛け方が違ってくるのです。「何故そんなことが分からないの!」「何度言ったら分かるの!」「さっき言ったでしょう」できないことを言われると言葉や態度 顔面の表情がきつくなります。そして言われたその人を嫌な人と捉えコミュニケーションが取れなくなります。




できない部分をさりげなく、プライドを傷つけないように支援すると、その人が持っている本来の力を発揮することができます。本人が落ち着いた穏かな生活ができてくると、必然的に介護家族にもゆとりが生まれてきます。本人の気持を理解することで、またできない部分をさりげなく上手に支援することで良い関係を築くことができ、ゆとりにつながってくるのです。














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2010年08月23日

「家族の会」認知症新時代を招き寄せた奇跡と希望パート5

「家族の会」30年
認知症新時代を
招き寄せた奇跡と希望

                    (認知症の人と家族の会代表理事 高見国生)


本人と家族と専門職の結びつき


●“専門職その他の人たちを包含する組織”



昨年の総会で決定した「家族の会の理念」の「組織と活動」の中に次の1項目があります。「認知症の人と家族の会」は、本人同士家族同士が励まし合い助け合って、生きる勇気と力をわかせる、認知症の人と家族の自主的な全国組織である。と同時にそのことを理解し、共に歩もうとする専門職その他の人たちも包含する組織である」。




「家族の会」は、名称どおり、本人と家族の当事者組織ですが、当事者だけの組織ではありません。専門職の人の中には「私たちは入ってはいけない組織」とか「入れない組織」と思っている人がいるようですが、そうではありません。専門職の人には是非「家族の会」に入会していただきたい。その理由は二つあります。





●当事者だけで組織は運営できない


まず第1の理由は、当事者組織といっても当事者の力だけで組織の運営ができるものではないことです。30年前に「家族の会」をは結成したときも、介護に明け暮れていた私たち家族に代わって組織づくりの実務や会場の手配、当日の運営をしてくれたのは専門職やボランティア人たちで舌。それ以来今日まで、本部の運営においても支部活動を進めるあたっても、この人たちと共に歩んできているのは、ご承知のとおりです。しかし大切なことは、その人たちは「家族の会」が当事者組織であることを十分に認識して行動してもらっていることです。




●双方が交わることに大きな意味


第2の理由は、本人と家族が生きること介護することにとっても、一方、せんもんしょくの人たちがプロとしての見識や実力を高めるためにも、双方が交わることに大きな意味があるからです。このことについて、30年を振り返って考えてみましょう。私が初めて三宅貴夫医師(現顧問)に出会ったのは、母の介護の最も大変な1979年秋のことでした。失禁と何でも食べる、私に向かって「どちら産です?」と尋ねるじょうたいに疲れ果て、もう限界だと思っている時期でした。




三宅医師はわが家を訪ねてくれて、母の状態を観察した後「大変ですね」といってくれました。租の一言が私を救ってくれました家族の苦労を医者が知ってくれた―それだけで私はもう少し頑張ってみようという気になったのです。




それと共に、母の症状が認知症という病気からくるものであること教えてくれました。母だけの特別な“奇行”ではないこと、同じような苦労をしている家族は大勢いることを医者から教えてもらうことは家族にとっても大きな励ましになるのです。認知症の人を介護する家族は、この先どうなってゆくのだろうと不安をかかえています。「命の専門家」である医療職や、「介護の専門家」である介護職が寄り添ってくれることは家族に勇気と安心を与えてくれるのです。





●家族から学び、家族に教える


一方、専門職の人にとっても、家族と交わることはプロとしての見識と実力を高めることになります。それは、仕事として働いているときは、患者である認知症の人とは接しますが、家族と接することは意外に少ないものです。しかし、認知症の人を日常的に支えている家族のことを知らずして、認知症問題は理解できません。




専門職が「家族の会」に関わることは、認知症の人と家族の生活実態を知ることになります。家族は介護の素人ですが365日、24時間の世話の中で、素人なりに工夫してづく時の介護方法を編み出したりしているものです。「家族の方から学ぶことが多い」「家族の方の頑張りを見たら、私はもっと頑張ろうと思った」などといわれる専門職は、教科書や講義で得られないスキルアップを図られたのだと思いますし、そういう人を私は尊敬します。




家族から学んだ専門職は、家族に与えるのも多くなります。例えば、杉山孝博意思(『家族の会」副代表)が提唱する「認知症をよく理解するための9大法則、1原則」。租の大2法則は、「症状の出現強度に関する法則」で、認知症の症状は身近な人にほど強く出るというものです。「なぜ私だけにつらく当たるのか」と嘆いていた家族はこの法則を知って安心します。




これらの法則や原則は、多くの家族と深く接する中で共通する悩みを発見し、医学的治験を加えて生み出されたものです。杉山医師は患者や家族から学んだのです。しかし、学んだだけではありません。そのことを基にして家族にも教えてもいるのです。




「家族の会」にはこれまでにたくさんの専門職が関わってくれています。それは、、家族と専門職がお互いに高まりあってきた歴史でもあるのです。ちなみに、現在20支部に37人の顧問がいますが、うち22人は医師・看護・介護の専門職9人。支部代表、世話人監事にも多くの専門職がいます。
                                                             つづく














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2010年08月22日

認知症の人と家族の会認知症新時代招き寄せた軌跡と希望

認知症新時代を招きよせた
軌跡と希望

                      (認知症の人と家族の会代表理事 高見国生氏)


愚痴を声に 声を社会に 要望と提言

●10ヶ月の一度に割りで国に申し入れ


6月の総会「介護保険制度改正への提言」が決定されましたが、同月21日にはさっそく厚生労働大臣へ申し入れをお行ないました。今回で厚労省への申し入れは37回目になりました。振り返るとほぼ10ヶ月に一度の割りで何らかの申し入れをしてきたことになります。




どうしてこんなに頻繁に申し入れをしてきたのでしょうか。それは、「家族の会」が、本人と家族の声を国に伝えることがとても大切だと考えているからです。私たちは、つどい、会報、相談を活動の3本柱として励まし合い助け合いの活動を行っていますが、それだけで本人と家族の困難がすべて解決するわけではありません。「人としての尊厳を守られ日々の暮らしが安穏に続けられ」(理念)るためには、社会的対策が必要です。社会的対策を進める大本は国ですから、国に対して私たちの願いや要望を伝え続けてきているのんです。




しかし、その要望の内容は、個人的な思いやわがままであってはいけません。誰が来ても「それはそうだ」納得してもらえるものでないと、社会的に受け入れられませんし、行政に対応してもらえません。「家族の会」は要望や提言は常にそのことを配慮しながら行なってきているのです。





●「家族の会」の要望の先見性


「家族の会」が初めて国に要望書を提出したのは、1982年8月のことです(この連載2回目で紹介)そのときの要望内容は次の7項目でした。①.相談窓口の開設 ②.定期的な訪問、援助の実施 ③.短期入所制度の核率、、ぼけ老人のも通所サービスを ④.特養ホームへの腸期入所 ⑤.介護手当ての支給 ⑥老人ぼけの総合的な研究。特定疾患治療研究事業の対象に ⑦.「家族の会」への援助




行政施策が一切ない時代の要望ですが、現在にも通じる基本的な要望事項がすべて網羅されているところがすごい、と今さらながら感心しています。「定期的な訪問、援助」という言い方で今日のホームヘルパーや訪問看護を、「短期入所制度」という言い方でショートステイを、「通所サービス」という言い方でデイサービスを表現しているところには、時代を先取りした先見性を感じます。




この要望はそれから12年後の1994年になって、厚労省の「新ゴールドプラン」の中で、「ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービスは在宅介護の3本柱」として位置づけられることになります。結成して間もない「家族の会」が、このような具体的な先見的な要望を伝えたのも、支部(当時は16支部)のつどいや相談の中で、家族の実態を把握していたことと、80年12月に行なった同調査の第二次調査の内容に基づいていたからです。





●すでに18年前に若年期の要望


要望の線形製といえば、若年期(当初は初老期と呼んだ)認知症に関する要望でも「家族の会」は先駆けでした。結成地氏は認知症といえば高齢者の問題でしたが、数年を経る内に65歳未満の人たちの問題が現れてきたのです。高齢者と同じ認知症の症状が見られるにも拘らず、65歳というだけで「痴呆性老人対策」から除外されるです。このことも、つどいや相談の中から問題を把握したものです。




88年2月の要望所に、「老人尾同様のサービスを適用すること」という1項目をいれ、92年8月には、「初老期(65歳未満)の地方性患者及び家族の関する要望書」を提出したのです。そこで、緊急対策として、①.sy徳保証、障害年金の拡充 ②.家族の不利益の防止 ③.若いことを考慮したサービスの促進 ④.医療機関、福祉施設の理解の促進 ⑤.総合的な研究を要望しました。この内容は91年に行なった「初老期痴呆介護実態調査等に基づいたものでした。



若年年認知症の問題は、その対象者数が少ないこともあって、行政施策は容易に進みませんでしたが、この間、「家族に会」は広島県支部の「陽だまりの会」など多くの支部で若年期のつどいを行って本人と家族を支えてきました。ようやく近年になって厚労省でも重視するようになってきた背景には、「家族の会」の長い取り組みがあるのです。




「家族の会」は、阪神淡路大震災に関する要望や介護保険に関する要望など、その時々に応じた様々な要望を行ってきましたが、すべての要望や提言は、つどいや相談の中で出された生の声や自体に基づいて作られています。しかも要望者や提言としてまとめる場合には、調査や時間を掛けた議論により、多くの人に共通する内容として整理を行います。そのことにより「家族の会」の要望・提言は、社会の人にも行政にも説得力があるものとして受け入れられてきたのです。このことは、本人と家族のつぶやきや愚痴をそれだけに終わらせずに社会の声として発展させ、社会と行政を動かしてきたと言うことができるでしょう。













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2010年08月21日

医師の目・人の目パート13 俳優のつもりで演技をしましょう

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症 」パート13

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




俳優のつもりで演技を

前回からの続きで、相手によい感情を与え、よい介護をする田ッ目の第3のコツは「共感」。「よかったね」を話の終わりに付け加えると「共感」になる。4つのコツの中で最も実践しやすい方法だ。イライラさせられているときに相手をほめたり、感謝したりするのはやりにくい。相づちを打つにも、タイミングを合わせることも難しい。




ただ第4のコツである「誤る。事実でなくても認める」ことは、最も難しい。それに比べると「共感」は容易である。「ご飯、美味しかった?よかったね」から始めてはどうだろう。さて第4のコツは「謝る。事実でなくても認める演技をする」だ。認知症の人では「忘れたことは本人にとって事実ではない」本人が思ったことは本人にとって絶対的な事実である」という原則がある。




食べたことを忘れてしまえば、「食べてない」のが事実。「100万円を貸した」と思い込んでいる人が「借りたお金を返さないのはけしからん。カネを返してくれ」と請求するのは当然だ。それを否定して「ご飯は食べた場仮でしょう」「借りてもいないのに変なことを言わないで」と言うと、こだわりがますます強くなって混乱が続くだけである。




それよりも「今、夕食の支度をしていますからもう少し待って下さいね」「今は手元にお金がないので、明日銀行からおろしてお返しします」と、本人の思い込みをいったん受け入れながら、結論を別の方向に持っていくほうが本人の納得を得やすい。つまり本人の世界にあわせてせりふを考え、演技する俳優になったつもりで対応するのがよい。




「ごまかしたり、うそをついたりするのは、両親がとがめて、とてもできません」と介護に慣れてない介護者は言う。そのような人に対して私は「ドラマで悪役を演じる俳優は、悪役を演じることを悩んでいないでしょう。あなたも認知症の世界で悪役を演じるつもりで割り切ってください」と放すことにしている。












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2010年08月19日

医師の目・人の目パート12 コツは「ほめる」「同情」

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




コツは「褒める」「同情」


「本人のことを受け入れて、穏かに対応するのがよいと先生は言われますが、介護する身にもなってください。言うことを聞かず、迷惑なことばかりする人にいい顔はできませんよ」と多くの介護者は訴える。それに対して、私は「毎日慣れない介護をし続けなければならない、あなたの気持ちはよく分かります。しかしこの時間は介護者にとっても、本人にとっても一番つらい時期なのです。良い感情を与えるようにしたほうが、結局、あなたにとっても楽になるはずです」と答えている。





介護に慣れてくれば多くの家族は感情をあらたてずに介護ができるようになるが、少しでも早く楽な介護をするには4つのコツがある。第1のコツは「ほめる、感謝する」。どのようなことをされても「ありがとう。助かったわ」などと言い続けていると、次第に本人の表情や言葉が落ち着いてくる。





ぬれた洗濯物を見て、「お母さん、乾いていないのに取り込んで!洗いなおさなければいけないでしょう。どうしてこんなことをするの」と言うと「手伝ってあげたのに怒るなんて、嫌な人だ」となってしまう。それよりも「お母さん手伝ってくれてありがとう。あとは私がしますから、居間でお茶でも飲んでいてください」と言った方がよい。





第2は「同情」で「ああそう」「そういうことがあったのですか」「大変ですね」のように相づちをうつこと。多くの家族や介護職は正しく答えなければいけないとまじめに思って、教え込んだり、聞き返したり、うるさい人、嫌な人だととらええられる場合も少なくない。それよりもいかにもよく聞いてているような印象を与えながら、適当に相づちをうつ方が楽であるし、本人も穏かになる。





本人が正気に返って「私の言うことを聞いてくれない」と言うときには「うっかりしてごめんね」などと、とぼければよい。施設などで認知症の2人が楽しそうに話している光景はよく見られるが、互いに自分の言いたい事を言って、話の内容が全く合っていないこともよくある。





「うんうん」「そうだ」と互いに相づちをうっているから楽しいのだ。だから私は介護する人に「介護者はすべからく認知症になるべし!」とも言っている。残る一つのコツは次回に紹介したい。














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2010年08月17日

家族の接し方10か条、第2条心の受容、意に沿って受け止める

家族の接し方10か条
                             (認知症予防協会より)

第2条 心の受容


意に添って 心受け止め 温かく




認知症老人の介護が上手にできるか、挫折してしまうかには、種々の要因が関連しますが、何より重要なことは介護者が老人の言動をいかに受け止めることができるかにかかっています。認知症老人は明らかに事実とは違ったことを口走ったり、間違った行動や理解できない行動をしばしば示したりします。






例えば、自分の家にいながら自宅に帰りたいと言って飛び出して行ったり、定年退職しているのにこれから会社に出勤すると言って身支度を始めたり、誰かが財布を盗んだと言って騒いだりします。また、執拗な要求や理由もなく突然怒り出したりすることもあります。






認知症老人とっては、たとえ事実とは違っていても自分なりの考えや思い込みががあってそのように口走ったり、要求したり、行動したりしているようです。そのような時に、間違っているからと言ってその度に強い調子で間違いを正したり、理屈で説明したり、頭ごなしに叱ったりすることは避けなければなりません。特に頼っている人からの叱責は認知症老人の心を強く傷つけます。叱られることによって認知症老人は、時に向きになって反発し興奮したり、あるいはどんな態度をとったらよいのかわからなくなり、途方にくれ遂には混乱してしまったりします。






落ち込んだり認知症が進むことさえみられます。少しぐらい失敗や問題があっても認知症老人が思っていること、行動しようとしていること、心配していることをよく聞いてあげ、その心をくみ取って納得が得られるような、意に沿った温かい対応をしてあげることが何よりも大切です。





それには、介護者が認知症老人にみられる特性を十分に理解し、少しくらいなら間違いは多めにみて上げるくらいの心のゆとりを持ち、本人の欠点ばかり目を向けないで、残された健康な心の部分を支えてあげましょう。








<ホーム長のつぶやき>


老人介護の決意



今から22年前「老人介護」をしてみたいとふと思った。自宅から近いこともあり老人介護ができる精神科単科の鷹岡病院に面接を受けに行く。当時の総婦長が面接をしてくれた。なぜ老人介護がしたいのですか?と質問されたが、自宅に老人がいるわけではないが、「特に理由はありません。老人介護がしたいのです」と答えた。今私がこのような福祉の仕事をしているのは、そのころからの思いがあったのだろう。





衝撃的な著書との出会い



クリステーンボーデンさんの著書「私は誰になっていくの」クリエイツかもがわ出版・若年性アルツハイマー病のクリステーンさんが本人の思いを言葉にした。当時看護課長の任務についており、スッタッフ指導に力を注いでいたが、目にうろこだった。自分がしてきた看護は何だったのか。今までの看護は患者中心の看護ではない、患者の本当の気持をどこまで理解していたのだろうか。読みながら涙が次から次へあふれてきた。そうだ患者中心の看護・介護をしよう!と私自身が変わった。




アルツハイマー病者からみた世界


アルツハイマー病が、患者よりもその介護者にとってもっとも辛いものであることを認めた人です。



私の患者の傍らにいてくださる方たちにも、私たちが上手くやっていけるように助けていただき、そして穏かに前向きの生活を送られるように励ましてほしいのです。私たちが認知症であっても、たとえそのために理解しがたい行動をとったとしても、どうか価値ある人として敬意を持って私たちに接してください。認知症は他の病気と同じように1つの病気であることを私は知っている。アルツハイマー病は私たち不治の病の中でももっとも理解されていないものの一つである。




この病気はその人がその人らしくあるものから多くを奪っていくが、もっと病気についてよく知ることによって早期に診断がなされ、患者や家族達がこの病気を理解し、上手く対処してゆけるように手助けできたらと望んでいる。なぜ、脳細胞の身体的故障を、体の他の身体的故障以上に恥じるのか。私たちは正気を失っているのではなく、病気なのである。どうか私たちが尊厳を保てるように扱い、私たちのことを笑いものにしたり、恥じたりしないでほしい。




認知症の方本人が綴った本です。今はアルツハイマー病が進行し世界中を講演した活動はできなくなりました。信仰と夫の愛情に支えられています。彼女の本に出合えたことから、私の人生も変わってきました。寄り添える介護を目指して3年前にこの事業を立ち上げたのです。心の受容 意に添って 心受け止め 温かく    ―いい言葉ですね―



















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2010年08月12日

家族の接し方10か条 第1条なじみの関係について

家族の接し方10か条
                                   (ぼけ予防協会より)

第1条 なじみの関係



顔なじみ 落ち着き与える 安心感




認知症というハンディキャップを持った高齢者に、認知症を一生の問題とし対応してゆくときには、その成果との援助や介護が大きな課題となります。これについては、日常生活の動作(食事、排泄、更衣、清潔、移動など)の介助は必須のものです。しかし、身近な人(家族、親戚、近くの知人等)との人間関係を主にした社会生活活動の援助も、少しでも人間らしく生きていく上で、欠かせない重要なものです。これらについて高齢者の生き方では、良く知り頼りになる“なじみの人”(普通は家族)とともに、安心した普通の生活が送れるようにすることが、基本的に重視されます。






中等度以上の認知症高齢者の場合には、常に身近にいて心が結びついている人は、他人でも昔から、知って分かっている人(身内、知人、世話になった人、、小学校の同級生)と勘違いして、全くそのつもりで、もっともらしい態度で頼りにして生きていったりします。






この際には、間違っていようが、親近感や同じ仲間という“なじみの心”で結ばれていて、高齢者に最も必要な安心・安住がもたらされていることが注目されます。これを特に施設入所の認知症高齢者で見ていると、その相手は名前は覚えてなくても顔は見知り覚えて、“顔なじみの関係”ができて一緒に暮らしていくと、入所の主な理由の問題行動や精神症状は自然に消えていったりします。






この“なじみの関係”の意義は、個々には安心安住の拠り所があり、一緒に生きいきと楽しげに暮らし、認知症高齢者の生きがいになっています。特になじみの関係に一番近く自然な姿は原則としていうまでもなく家族です。そこは高齢者が最も住みよく生きよい所で、これは在宅介護の基盤ともなっています。






この反対は、高齢者を冷たく不適切に扱うと、家は不安の場となり身内の人でも他人にされたり、忘れられていったりします。以上のことは、健常な高齢者にも全く同じようにいえることです。









<ホーム長のつぶやき>



A様は認知症が重度です。自宅にいて「帰る」と言って徘徊します。早朝目覚め、暗い中外に出ます。しばらく自宅の周りを歩きます。しかし最近は自宅に戻れなくなる時があります。また、毎朝早朝に自宅を出るため、家族は疲労が溜まり仕事にも影響が出てきました。




そんな折2人3脚を紹介されて小規模多機能型居宅介護をのお試しをご利用になられます。もちろんそこは始めてのところで落ち着く場所ではありません。落ち着きがなく、「帰る」と言い室内を歩きまわります。何回かお試しを利用されましたが、やはりいつも同じ行動で安心・安住の場でありませんでした。





丁度そんな時、グループホームに空きができました。即、小規模では支えていくことが難しいと判断し、グループホームの入居を提案し、入居されました。当初我々スタッフは一時も目が話せず、早朝外へ出られることを恐れていました。しかし我々の心配をよそにすぐに落ち着き2人3脚がなじみの場所となり、スタッフや他の利用者さんともなじみの関係が構築されました。





このようにすぐになじまれた理由は何だったのでしょうか。一番大きな理由は、そこがA様にとって安心・安住の場所だったことです。第二は環境が変わらず混乱が少なかったためでしょう。小規模多機能でしたら自宅から2人3脚と環境が変わることでますます混乱の世界に陥りBPSD(精神運動興奮)が活発化していたことでしょう。





第三の理由は寄り添える介護を徹底したためと思われます。A様の気持ちを理解しようと全スタッフが常に考え、不安の解消に努め、今できないことをさり気なく支援していることだと思います。A様らしく暮らしていけるように家族の支援を一杯受けながら支えています。













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2010年08月09日

認知症介護10か条 自尊心について

第10条 自尊心                              
                              (一部ぼけ予防協会より)
                               

自尊心 支える介護で 生き生きと



知的機能が低下した認知症老人は子供とお同じと思われているところがあります。家族の顔や名前を忘れてしまうような様子に接すれば、子供のように思ってしまうのかもしれませんが、認知症老人はどのように知的機能がおとろえようと、子供と同じではないのです。いままで長年生きてきた自信と誇り、自尊心を失うことはありません。





物忘れが激しいとか、思い違いが目立つといったことで、子どものように扱ったり、馬鹿にするような態度が見られれば、認知症老人は自尊心が傷つけられたと思い、強い抵抗や反発を示すものです。介護者の言葉が認知症老人の自尊心を傷つけることで、暴言や暴力が引き出されることは少なくありません。認知症老人の暴言、暴力の裏に、自尊心を傷つける介護者の言葉・態度がないかを謙虚に振り返って見ましょう。





知的機能が低下している認知症老人を人生の先輩として尊重し、日々の生活が快適に、豊かに過ごせるように手を貸すことが求められています。





認知症老人は自分が周りから尊重されていると、精神的にも安定し、自分の力を十分に発揮することができるようになります。認知症老人がおびえたり、落ち込んだり、傷ついたりするといった、精神的ストレスを不用意に与えてしまうことは、介護者として避けなければなりません。





そのようなことに陥らないようにするためにも、、認知症老人の現在の姿だけでなく、過去に歩んできた人生の軌跡にも関心を向けて、認知症老人の全人生を感じとるようにすることが大切です。認知症老人の可能性や潜在能力を信じてそれを見つけ出し、生き生きとした誇りを持てるように手助けしていきたいものです。





<利用者さんを尊重する姿勢>



介護者の接し方が適切でないと日常生活に悪い影響を及ぼし、問題となる行動を誘発しやすくなります。不安でたまらず大声をあげる認知症の本人さん。その様子を笑いながら観たりするとさらにエスカレートして怒りだします。「自尊心」を傷つけてしまったのです。そんなとき何が不安にさせているのか、という気持ちで接すると、その態度や声のトーン、顔の表情筋から認知症の本人はとっさに判断し不安な態度が消失するときがあります。感情面が非常に豊かなのです。





したがって、まず、「相手に何を言ってもどうせ分からない」「話が通じない」「自分で何でもできない」と言う理由で、卑下や無視するような態度をとったり、幼児扱いしないようにしましょう。特に高齢者の場合、このような介護者の態度は相手のプライドをひどく傷つけたり、残存能力までも低下させることになります。相手の価値観や過去の生き方を尊重した対応を心がけるようにしましょう!!














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2010年08月08日

医師の目・人の目 パート11 内容忘れても続く感情

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第11 内容忘れても続く感情


認知症の人は、「ひどい物忘れ」の特徴のように、自分が話したり、聞いたり、行動したことはすぐに忘れてしまう。しかし、感情の世界はしっかり残っていて、瞬間的に目に入った光が消えた後でも残像と残るように、そのとき抱いた感情は相当時間続く。このことを「感情残像の法則」と呼ぶ。出来事の事実関係は把握できなくても、感情の波として残るものである。





認知症の人の感情が敏感で変化しやすいことは、介護したことのある人なら誰でも経験している。注意したり否定したりすると、突然険しい表情になって「うるさい。余計なお世話だ」などと怒こりだすのは日常的だ。周り(特に一生懸命介護している人)からどんなに説明を受けても、その内容はすぐに忘れてしまい、単に相手をうるさい人、嫌なことを言う人、怖い人ととらえてしまう。良い感情も残るので、本人の気持ちを受け入れて合わせれば、穏かな表情に変わる。





これをどう理解したらよいだろうか。私たちが人から、忠告を受けた場合、その人に向かって「うるさい。余計なお世話だ」とは普通は言わないだろう。なぜなら「自分のことを思って忠告してくれたのだ」「同じ立場であれば自分でも同じ言い方をするだろう」などと、瞬間的に考えて、そのときの感情をコントロールするからだ。それが可能なのは、判断力や推理力などの理性があるからだ。





知的能力の低下した認知症の人は、一般常識が通用しする理性の世界から出てしまって、感情が支配する世界に住んでいる、と考えたらよい。周囲の人は、その人が穏かな気持ちになれるよう、心から同情の気持ちで接することが必要となる。認知症の人を介護するときには「説得よりも同情」である。





私は介護者に対して「お年寄りとの間に鏡を置いて、鏡に映ったあなたの気持ちや状態がお年寄りの気持ちです。あなたがイライラ、カッカしているときにはお年よりも同じように反応します。穏かに対応すれば、お年よりも必ず落ち着きます。介護サービスを上手に使って余裕を持つようにしましょう。その方があなたにとっても本人にとってもよいことです」と話している。





最初のうちは難しいかも知れないが「どうも有難う。助かるわ」「そう、それは大変だね」「それはよかったね」などと言えるようになれば、その介護者は上手にできているといえよう。














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2010年08月06日

医師の目・人の目 パート10 まだら症状割り切って

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第10 まだら症状割り切って


往診に行くと、娘に向かって「先生がいらっしゃったから早く座布団を用意しなさいよ」と指示し、「うちの娘が気が利かなくてすみません」と私に謝った。寝たきりでオムツを着けている重度の認知症の人と思えないほど見事に対応する。





他方、物忘れはあるものの、趣味豊かな日常生活では問題ない人から「私の大事な着物を隠したでしょう。返しなさいよ」と身に覚えのないことを毎日言われたら、誰もがパニック状態なるに違いない。本人の足音が聞こえてきただけでも、背中がぞくぞくするようなたまらない感じを覚えるものである。





認知症には、「正常な部分と、症状として理解すべき部分が混在する」という特徴があり初期から末期まで見られる。私はこれを「まだら症状の法則」と呼んでいる。認知症の人は常に異常な行動ばかりするわけではない。認知症の初期は大部分はしっかりしていて、時々異常な言動をする。そのため周囲の人はその異常な言動を認知症の症状ととらえることができず、混乱におちいり振りまわされる。





初めから認知症の症状なのだとわかっていれば、そして、対応の仕方をうまくすれば、認知症による混乱は軽くなる。お年寄りの言動が認知症の症状であるのか、そうでないことをどう見分けたらよいのか。「常識的なことならしないような言動をお年寄りがしているため周囲に混乱が起こっている場合、“認知症問題”が発生しているので、その原因になった言動は“認知症の症状である”」と割り切ることがコツだ。





「私の大事なお金をと盗ったんでしょう。ドロボー!」という「物盗られ妄想も、見かけは正常に近い認知症の人が言うのと、寝たきりで全面的な介助の必要な人が言うのとでは介護の混乱は全く違う。前者の場合は「どうしてそんなひどいことを言うのかしら。私をいじめているに違いない」ととらえるが、寝たきりの人の言葉であればまたおばあちゃんがおかしなことを言っている。どうせ本気で言っているわけではないので、聞き流しておこう」となる。





言動そのものよりも周囲のとらえ方で問題性が大きく変化するのだ。「まじめな人がどうしてこんなことを!」と意外に思われる事件などを考えれば、「まだら症状」は普通の人にも見られる特徴だと分かるだろう。















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2010年08月05日

認知症介護10か条 第9条 問題行動について

第9条 問題行動

叱らずに 受け止めて防ぐ 問題行動  

                                        (一部ぼけ予防10か条より)



認知症の症状の一つに、はたからみてとくに異様に思われる行動があり、問題行動といわれています。問題行動のうちで最も頻度が多く対応に戸惑うのは徘徊です。これはふっと家を出て、あてもなく歩き回り帰り道が分からなくなり、迷子になったりするもので、転倒したり、また、交通事故に合うことにつながりやすくなります。





徘徊をはじめたとした問題行動は、本人の危険も伴い周りもそのまま放置するわけにはいかないために、そのような行動が起こらないようにする対処が求められます。その場合、問題行動を起こすのは、本人が危険性や問題点を知らないためと考え、叱りつけたり、説得したりして行動を止めさせようと考えるものです。





しかし、本人には行動をとるにはそれなりの理由や目的(徘徊の場合は家に帰りたい、散歩に出たいなど)があるわけですら、叱られれば自尊心が傷ついて、行動を止めるどころか反発したり抵抗したりするものです。





したがって問題行動を止めさせるには本人の動機や目的は何かを考えて、欲求が満たされ、かつ危険性がないように対応する必要があります。





徘徊への対応として施設(病院も含む)では自分の部屋へ閉じ込めるのではなく、ホールや施設・病棟内を自由に歩けるようし、また、他の入居者などとコミュニケーションをもつようにします。家庭の場合は戸外に多く連れ出す機会を多くするために、散歩や買い物などに一緒に歩くことを試みます。





また、玄関のドアや門の戸などにベルや鈴をつけ、外へ出る場合を知りえるようにし、時間の許す限り後を追ったり、一緒に歩くことです。また、身元がわかるように住所、氏名、電話番号などを書いた名札を衣類などに縫い付けておいたり、ポケットに名札や名前を入れておきます。さらに近くの人々に一人歩きをしていたら教えてもらうよう、とくによくいくスーパーや商店街など、人々にお願いしておきます。








問題行動ってな~に




・病気によって引き起こす夜間せん妄や徘徊、暴力行為を障害行動と呼ぶようになってきました。また、BPSDともよばれます。我々介護者は障害行動と表現して、その対応やリスクの回避ばかりに目がいっていないだろうか。その人の思いをくみ取る努力をしているだろうか。




・認知症になってしまった人は何も分からなくて幸せだね、という人がいますが、そんなことはありません。今、認知症の人本人が苦しい思いや気持ちを大勢の前で(講演会など)話し訴えています。その先がけがオーストラリアの元高官だったクリスティ ーン・ブライディンさんです。本人の思いを書いた本を出版しています。「わたしは誰になっていくの?」




・認知症の状態にある人とは、何も分からなく、何もできない人ではありません。少し分からない、少しできないことがある「普通 の人」です。その人にあった関わり方をするだけで、その人らしく暮らすことができ、見違えるように変化してきます。














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2010年08月04日

医師の目・人の目「知ってますか?」認知症パート9

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第9 不利なことを認めない


「大事なものがなくなった」と大騒ぎするので、家族も一緒になって探したところ、本人が使っている引き出しの中から見つかったとする。家族が「おじいちゃんがしまい忘れたんじゃないの」と言うと、「いや自分はそんなところにしまった覚えはない。だれかがそこに隠したんだ」と必ず言い返す。




失敗して衣服が汚れていても、「汚れていない」「水をこぼして着物が汚れたんだ」と否定する。何ヶ月も掃除していないと思われる部屋を見た知り合いが、「お部屋が汚れているから掃除を手伝いましょうか」と親切に言っても「一日おきに掃除していますよ貧乏暇なしでね!」余りにもすばやくしかも難しいことわざや一般論としては正しい言い方などを交えて言い返してくるので、周囲の人にはその人が認知症であるとはとても思えない。




しかし言い訳の内容には明らかな誤りや 矛盾にが含まれている要るため、「都合の良いことばかり言う自分勝手な人」」「平気でうそを言う人」「やる気がない人」などと、低い人格の持ち主と考えて、そのことで介護意欲を低下させてしまう。家族も少なくくない。





自分にとって不利なことは一切認めないで、認知症があるとは思えないほどすばやく言い返してくる特徴を、私は「自己有利の法則」と呼んでいる。ちなみ「法則」と名づけたのは、この特徴が認知症の人に普遍的に認められるからだ。認知症になるとなぜこのような特徴が認められるのだろうか。





人には自分の能力低下や自分の責任を認めたくないという自己保存の本能が備わっている。普通の人があからさまなうそを言わないのは「うそと分かったら自分の立場がもっと悪くなる」と推理・判断できるからだ。しかし認知症の人は推理力や判断力が低下しているため自己保存の本能のままに言っているにすぎない。





つまり、うそを言うことでごまかすこと自体が認知症のj症状であるととらえるべきだ。子どもが高熱をだし、咳や痰で苦しんでいるとき、親が「どうして熱を出したのだ」「どうして咳をするのだ」と子どもを非難することはない。同じように本人の言動は認知症の症状だから。いちいち問題としないで、さらりと受け流そうと考えたほうがよい。





「自己有利の法則」を知り、認知症の症状だととらえることで、、無意味なやりとりや、かえって有害な押し問答を繰り返さず、混乱を早めに収拾することができるようになる。














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2010年08月01日

認知症介護10か条・第8条 精神症状について

第8条 精神症状

妄想は 話を会わせて 安心感  
  
                            (一部ぼけ予防協会より)

 
認知症老人にみられる症状の一つに妄想があります。妄想とは誤った考えを確信することです。妄想の中では被害妄想がよく見られ、物盗られ妄想、いじめられ妄想等の形で現れます。






妄想には「嫁がお金を盗った」「ダイヤの指輪を盗まれた」「隣の家の人が夜中に来て通帳を盗んだ」とか「嫁からいじめられる」「冷たく見捨てられる」などと訴えます。そんなことはしていない、どこかにしまい忘れたのではないかと説明しても納得してくれません。





時には興奮して相手を泥棒呼ばわりしすることもあります。家族が相手にしないと近所の家に行って訴えたり、近くの交番に行って訴えたりします。一般に身近な人が妄想の対象になることが多いようです。





このような妄想が何故生じてくるのか本当のところ分かりません。ぼけの影響に加えてお年寄りが拠りどころとしているもの、例えば、家族、健康、財産、生きがいなどを失うことが原因であることも多いようです。また、同居している家族から冷たく扱われたりし、見放されたと感じたときなどに生じたりします。





このような妄想を訴えたときには、頭ごなしに強い調子で否定したり、その考えを正そうとして理屈で説得しても理解してもらえません。かえって反発心生んだり、妄想がひどくなることがあります。むしろお年寄りの訴えにゆっくりと耳を傾け、話に合わせて受け止め、抱いている不満や不信感を和らげ安心感を与えることが何より大切です。





執拗に訴えるときには、一緒になって探してあげたり、興味ある話題に切り替えたり、好きな民謡を歌ったり、散歩に連れ出したりするなどの工夫をして見ましょう。身近で介護する人たちが日ごろから親密なかかわりをもち、心の通った介護を通してなじみの人間関係を築いていくことや、心安らげる場を作ってあげることが、お年寄りの安心感を生み、自然と妄想の軽減や解消につながるものです。





<幻覚の訴えの解消>



・幻覚は天井に虫などが這う等の幻視が多い。壁やカーテンのしみなど、幻覚を誘発するような環境は出来るだけ取り除きましょう。

・部屋の外での介護者同士、家族とのひそひそ話が、幻聴や妄想的誤認を起こす誘因になる場合もあるため、部屋の外での会話は注意しましょう。

・認知症老人にっとて幻覚は現実のものの中で言葉で否定しても、それを受け入れないばかりでなく、強く拒否するとその介護者の言葉の強さに反応して、かえって興奮する場合があります。

・何時間も幻覚(幻視や幻聴の)症状は続きませんので、受容する姿勢で安全を確かめながら見守ります。幻覚を訴えてきた場合は否定せず受け入れましょう。















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2010年07月31日

認知症介護10か条 第7条睡眠について

第7条 睡眠                (一部ぼけ予防協会より)


日中を 楽しく過ごさせ 安眠感
                                 

睡眠は、休養時間の大部分を占め、身体全体の活動を単に休息させるだけでなく、大脳も積極的に休ませる働きがあります。





そのため、睡眠が不足すると身体がだるくなったり、頭がボーとしてきます。また、頭と身体の疲れをとるには、この両方をバランスよく十分にとることが必要です。睡眠不足が続きますと認知症老人にとっては、いろいろな障害行動、(多動、被害妄想、不穏あど)身体症状(風邪を引きやすい)の誘因になります。したがって、夜間ぐっすり安眠できることは認知症老人が心身ともに快適な生活をおくるために大切なことです。






高齢者の睡眠は一般的に寝つきが悪くなったり、断続的に浅く早朝覚醒などの特徴があります。その要因はさまざまですが、全てが病的なものとは限りません。






不眠を訴える認知症老人に適切に対応する為には、不眠の特徴を知って、その要因を考えて見ることです。認知症老人は、夜間おきてゴソゴソし昼間眠るという昼夜逆転を示したり、睡眠覚醒の周期が乱れ、せん妄症状を起こす場合も多いものです。





睡眠を阻害する要因として、日中の運動不足が目立ちます。日中楽しみながらできる運動やリハビリ、アクティビティー、遊び、家事動作などの疲労感は睡眠を促します。




睡眠を生活リズムの一つとして捉え、夜の睡眠と午睡の取り方、また、運動や食事との関わり合いなどを総合して、考えることが大切です。安易に薬に頼ることは生活リズムを乱すことにもなるので避けなくてはなりません。






(睡眠障害とお年寄りの睡眠の特徴)




年をとると、脳が老化して満足に睡眠がとれなくなり、睡眠の質が悪くなります。睡眠が浅く夜中に何度も目が覚めるのはそのためで、夜の睡眠だけではたりず、昼間の居眠りも多くなります。また、覚醒を保つ力も年とともに衰え、いっそう昼間うとうとするようになります。これを睡眠障害といいます。





人間には25時間の体内時計があり、微妙にずれを調整しながら睡眠を保っています。午睡の時間は30分以内にしましょう。寝すぎると夜、眠れなくなります。朝日に浴びることも睡眠リズムを整えるのに役立ちます。明るいお日さまの光を浴びることが良いのです。不眠が続く時は試してみてください。2日間くらい寝なくてもよしとしましょう。気持ちにゆとりを持って介護をしましょう。翌日には眠れるかもしれません。安易に眠剤にはしってしまうと体内に蓄積されて過鎮静となってしまいます。また、フラツキ等により転倒し骨折してしまうケースもあります。






睡眠障害は、脳の老化に伴う自然の流れなので、防ぎようがありません。ただし、生活習慣を見直すことによって、ある程度は夜の睡眠の質を高めることは可能です。







若い人の睡眠では、寝つくまでの時間も短く、また、ノンレム睡眠が深い場合が多く見られます。これに対してお年寄りの場合は、寝つくまでの時間も長くなり、深い睡眠とレム睡眠が減り、浅いノンレム睡眠や夜中に目が覚める状態が増え、寝ついてから目が覚めるまで眠りが浅い傾向にあります。














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2010年07月30日

医師の目・人の目「知ってますか?認知症」パート8

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第8 夕方になり「家に帰る」


記憶を過去にさかのぼって失っていくという、「記憶の逆行性喪失」の特徴を前回に引き続いてみていきたい。認知症の人が夕方になると落ち着かなくなり、荷物をまとめて、家族に向かって「どうもお世話になりました。家に帰らせてもらいます」と丁寧に挨拶して家を出て行こうとする。夕方に起こるので「夕暮れ症候群」とも呼ばれています。





「どこに帰るの?」と聞くと、昔住んでいた古い家や実家に帰るという返事が必ず返ってくる。つまり、本人は古い家や実家に住んでいる時代に戻っているのだ。そうすると、今いるところは他人の家になる。他人の家に遊びに来ていると思っている人が、夕方になって「家に帰る」というのは自然である。そんなことが起こっていると思っていない家族は「もう10年以上住んでいる家でしょう」「古い家は取り壊してありませんよ」などと説得するが効果が得られない。





外に出ようとするのを止めようとすればするほどッ強い反発が帰ってくる。ドアに鍵がかかっていて監禁されたと本人が感じれば、暴れたり、ガラスを割ったり、窓から抜け出したりすることは、その状態に置かれた人であれば、誰でもする行動に過ぎない「この人は遊びに来ているつもりなのだ」と発想を変えて、本人の世界に合わせる方がうまくいく。「お茶を入れますからゆっくりしてください」「夕食を用意しましたから食べていってください」のように勧める。





どうしても出かけようとする場合には、「送りましょう」と付き添って行き、再び家に帰ると落ち着く場合が多い。10年前に亡くなった人が遊びにきたという場合も、幻覚・妄想と考えない。10年前の世界であれば、亡くなった人は生きていて、遊びに来てもおかしくない。旧制で呼びかけて始めて「はい」と答える場合も、結婚前にの時期に戻っていると考えれば当然だ。





夫が隣の家の奥さんと話しているのを見て、激しい嫉妬妄想を抱いて夫を非難する場合、若い時代に戻った嫉妬と考えればある程度納得できる。認知症の異常な行動に振り回されているとき、「記憶の逆行性喪失」の特徴に当てはまる症状に対して自分の対応がまずいのではないかと思ってほしい。






対応の原因は、本人の世界を理解してこちらが合わせて、ドラマの俳優になったつもりで演技をすることである。現実を正しく理解させようとすることは混乱を深めることになる。















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2010年07月27日

認知症介護10か条 第6条活動について

認知症介護10か条
                           (一部ぼけ予防協会より)


第6条 活動




できること 見つけて活かす 生きがいづくり                                             




認知症が始まると、ごく簡単なことでも新しいことを覚えるのは難しくなります。しかし、若いころからやっていた仕事や運動、趣味遊びなどは、多少不完全であっても介護者の適切な援助があれば出来ます。





活動はグループごとで行うことで、他者との交流が広がり孤立や不安などの改善につながります。プログラムとその内容は、高齢者の知っているもの、難しいルールのないもので、個々の高齢者が楽しめるものとします。





グループ活動が苦手な高齢者には個別のプログラムを作ります。例えば、さらしに麻の葉模様の線を引き、針に木綿糸を通して渡したところ、あっという間に花ふきんを縫い上げた人がいました。何事にも意欲がない高齢者も、得意なことを行なうときはいきいきと輝きます。





こうした活動を続けることが、精神症状や障害行動(BPSD)の予防や改善にもつながります。在宅での役割も単純な繰り返しの作業のほうが効果的です。例えば、毎朝新聞の取り込み、食器洗い、洗濯物をたたむなど、分かりやすい時刻を設定して、毎日繰り返し、作業が出来るようにパターン化しておきます。一人で行なうのが困難な場合は、介護者と一緒に行なうようにします。





認知症老人は毎日行なっていることでも、間違えたり失敗したりしますが、叱ったり、注意したり、指導したりしても無意味です。寸前に行なったことを忘れているからです。危険なことでなければ、「あら、良い方法ですね」と支持し、こんな方法はいかがでしょう」と正しい方法をやってあげると、正しい方法を思い出し行動できます。








2人3脚では生活リハビリをとっても重要視しています。日常の様子をブログでアップしています。その理由は観てる方に利用者様の表情を読み取ってほしいのです。一生懸命に生活リハビリに取り組んでいる姿は多分自宅では中々味わうことができません。役割を取り上げてしまう場面が多いからです。




できないとあきらめずにまずチャレンジしてみてください。そして感謝の気持ちを態度や言葉で表しましょう。できない箇所は共に一緒に行ないます。輝いているあなたがそこにいるはずです。















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2010年07月25日

小坂憲司先生が語る認知症への対応

認知症への対応
                         (ぼけ予防協会・新時代より)
                         小坂先生はレビー小体病の発見者です



わが国の認知症患者は全国で220万人アルツハイマー型認知症(発症頻度50%)、レビー小体型認知症(同20%)、脳血管性認知症(同15%)が3大認知症です。最近では早期発見・早期診断が重要視されるようになってきています。





その理由は早期に発見・診断し、早期の介入することで患者や介護者のQOL(生活の質)を高めることができるからです。さらに一歩進め、予防ができればもっとベターなわけです。





最も高頻度なアルツハイマー型認知症は、海馬を中心として脳が着実に萎縮、ベータータンパクからなる老人斑とタウタンパクからなる神経原腺維変化が脳にたくさん出現し、神経細胞が脱落することが特徴です。発症メカニズムが解明されつつあり、治療法も開発されています。





レビー小体型認知症は、私の研究グループの一連の研究で1976年以降、国際的に知られるようになった比較的新しい疾患です。特有な幻視などの精神症状や認知の変動、パーキンソン症状と自律神経症状などが起こり介護の上で最も大変な認知症ともいえます。大脳皮質と呼ばれる部分にレビー小体が多数出現することが大きな特徴です。





最近は診断技術の向上で認知症の早期発見・早期診断が可能になっています。中核症状である認知機能障害への対応は重要ですが、医療や介護の現場では周辺症状といわれるBPSD(行動心理額的症候)への対応に苦慮し、それらが患者や介護者のQOLを障害していることが多い。





早期に発見・診断・介入することで認知機能の低下をできるだけ遅くし、BPSDを予防、解消することで患者と介護にかかわる方々のQOLを向上させることができます。将来、認知症そのものへの本質的治療が可能になればますます早期介入が重要になります。





認知症、特にアルツハイマー型認知症の最初期に見られる「物忘れ」と加齢古くから注目されてきました加齢による生理的なそれとの鑑別は、古くから注目されてきましたが、最近は軽度認知障害(MCI)が注目されています。





アルツハイマー型認知症がの根治療法となる可能性をもつ新療法は早期であるほど効果があり、早期なら予防も可能であるという期待があります。そこでアルツハイマー型認知症の早期発見・診断・治療が重視されるようになってきたのです






予防に関し、一番大切なことは危険因子の対応です。脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症では最近、生活習慣病やメタボリックシンドロームが重要な危険因子として指摘されています。













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2010年07月24日

認知症介護10か条 第5条 身だしなみについて

認知症介護10か条
                                 (一部ぼけ予防協会より)


第5条 身だしなみ   

                  

身だしなみ 忘れぬ気配り 張り生まれ




認知症老人が一日中、寝巻きのまま着替えをしないで、起きたりしていることがよく見かけます。洗面をしても髪にクシを入れなかったり、ひげが伸びたままといったことも珍しくありません。介護する人も、認知症老人だから当たり前と考えています。





しかし、認知症老人が、「身だしなみ」に気配りしない様になれば、生活リズムや張りを失って、認知症状を進めるきっかけにもなります。また、身なりが乱れている様子は、周りの人から、さげすまれるもとにもなります。





したがって、寝間着から昼間着に着替え身づくろいして、日中活動的に過ごすようにすることは、本人の気分転換と快い緊張感、楽しい人間関係のために大切なことです。






人間は文化や生活習慣を背景に持った社会的存在です。老人が周囲から疎外されないで、自分なりに培ってきた文化や、生活習慣を持ち続ける手助けをしてあげることが、認知症老人のQOL(生活の質)のために必要です。





老人の人柄や生活習慣をよく知って衣類の色やデザインの好み、着慣れた服装を把握し、その人なりの身だしなみができるように援助していきましょう。





認知症老人に化粧を取り入れたところ、生き生きしてきたという報告もあります。朝の洗面、歯磨き、髭剃り、髪をとく、化粧をする、好みの服に着替えると言った身だしなみの基本を守っていくことは認知症介護の基本のひとつです。






ファッションは心のリハビリ




☆時々化粧をしかっりとして通ってくる利用者さんがおられます。そういう時はとっても明るい。色々な職員や利用者さん達から 「きれいね、若くなったみたい」と声を掛けられています。ほめられると嬉しいものです。


☆化粧の仕方はしっかり覚えています。若返り、表情も生き生きし、いつもと違った雰囲気となり、穏やかな顔つきで一日を過ごされます。


☆お年寄りが生活の意欲を失い、人とのつながりを持とうとしないとき「衣」の工夫はお年寄りを元気にしてくれます。


☆女性は美しく、男性はかっこよくありたいものです。そんな配慮や気配りをしてあげましょう。















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2010年07月23日

医師の目・人の目「知ってますか?認知症」 パート7 

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第7 昔の世界に帰っている


認知症のおばあちゃんが、朝早く台所で、ガスコンロの上に電気炊飯器を置いてガスの火をつけようとしている。それを見た家族が「何をしているの!」悲鳴に近い声をあげると、「今日は息子が遠足に行くんで、お弁当を作ってやろうと思ってな」という答えが返ってくる。





「ガスコンロに電気炊飯器」「息子の遠足」―常識的に理解できないことが認知症介護の現場では日常的に起こっている。認知症の記憶障害の第3の特徴が「記憶の逆行性喪失」。これは「記憶を過去にさかのぼって失っていき、最後に残った記憶の世界が本人にとって現在の世界となる」という特徴だ。





このおばあちゃんの世界を、息子が小学生のころまでさかのぼらせたらどうだろう。ガスコンロでご飯を炊いていただろうし、遠足にいく息子のために張り切って弁当をを作ることは当然だ。そう考えると、それ自体は異常な行動ではなくなる。そんなことが起こっていると理解できない家族が「家事になったらどうするの」「息子は先月会社を定年退職した大人よ」と教え込んでも、効果がないばかりか、混乱を深めるだけだ。





その世界を認めて「〇〇ちゃん、遠足楽しみにしているでしょうね。私も手伝いますから、お母さんはおかずを作ってください」のように、話を合わせながら、ガスコンロから引き離すのが良い対応である。配偶者の顔が分からなくなり、嫁を妻と思い込んでトラブルを引き起こすことがある。医学的には「人物に対する見当識障害」と呼ぶが、そのような捉え方では、本人の世界が消えてしまう。





昔に戻って「自分の妻は30代の若い女性」と思い込んでいる本人にしてみれば、目の前の老婆は自分の妻ではありえないし、イメージに一致する嫁が自分の妻であると考えるのは当然であろう。「何十年も連れ添った私を忘れるなんて!お義父さんは嫌な人!」家族は嘆き、気持悪がるが、それよりも、「奥さんは何をしていらっしゃるの」「ご飯の支度をしなければならないので、また後でね」と言ったほうがうまくいく。





本人がしっかりしていたかっての状態を知っていて、認知症になったことを認めたくない家族には、本人の状態に合わせて演技することは難しいかもしれない。本人が変なことを言っていると感じたとき、「記憶の逆行性喪失」の特徴を思い起こすことで、混乱が早く収まるのは間違いない。















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2010年07月22日

認知症介護10か条 第4条入浴について

認知症介護10か条
                                 (一部ぼけ予防協会より)



第4条 入浴 

                         

機嫌みて 誘うお風呂で さっぱりと




身体の清潔保持は誰にとっても健康保持のために欠かせないことですが、認知症老人は特に清潔観念が乏しいところもあるので、身体を清潔にすることはとても大切なことです。






もともと入浴は心理的にも爽快感をもたらすうえ、国民性もあって喜ばれるものですが、認知症老人の場合には嫌がる場合もあり,手こずることも少なくありません。






認知症老人が入浴を嫌がる理由の1つには、裸になることを警戒する心理が考えられます。いわゆる、理由なく身ぐるみをはがされてしまうことへの抵抗です。また、入浴が億劫に思えることもあります。ですから入浴をスムーズにしてもらうためには強制してもうまくいきません。入浴への動機づけを考えてその時、その状況の中で上手に誘ってみることです。機嫌の良いときに、「温泉に入りましょう」というように、心地よい思いをもたせたり、場合によっては、「一緒に入りましょう」といった誘い方が効果を上げることもあります。






介護する側の都合(早く入浴を済ませたい)を前面に出せば、抵抗感を強めてしまうだけです。誘う側も余裕を持ってどのようなタイミングで、どのような言葉をかけていこうかを工夫してみる姿勢が求められます。






<入浴について>




・ざわざわした雰囲気が認知症のお年寄りを不安にさせます。一人の職員が一人のお年寄りを脱衣場まで誘導し、服を脱ぐのを手伝い、お風呂に入るのを援助することが理想です。

・お風呂は体を清潔にするために入るものでもありますが、楽しむためやリラックスするために入る目的もあります。

・服の脱ぎ方が分からな九なり嫌な思いをしたり、洗い方が分からなく不安に思ったりすることが風呂嫌いの原因になることもあります。

・風呂の湯(水)が怖くて入れない方もいます。昔、水におぼれて怖い思いをしたことが蘇ってしまう。


・ベルトコンベアー方式や物のように脱衣場から浴槽に手渡しリレーされては、のんびりとした気持ちは味わえません。

・人前で裸になるのは恥ずかしいものです。なじみの関係が出来ていない人に服を脱がされたり、風呂に入れられたり、体を洗われたりすることは、楽しいわけがありません。逃げ出したり、大声ををあげたり、暴れだす人も出たりします。知った人であること、顔馴染みの人がずっと付き合ってくれることで、安心して落ち着いて入ることが出来ます。















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2010年07月20日

認知症介護10か条 第3条 排泄 ぼけ予防協会より

認知症介護10か条              
                          (一部ぼけ予防協会より)

第3条 排泄  

                         

排泄は 早めに声かけ トイレット




認知症介護の中で、手のかかるものの1つが排泄介護です。尿失禁をはじめとして、トイレ以外の所に排尿する行為(放尿)やオムツを勝手に取り外してしまう。また、便をこねたり、壁にこすりつけるなど、さまざまな行為に介護する人は振り回されてしまいます。





このような排泄の問題は頻繁に時を選ばず起きてくるうえ、本人や周りの環境を汚染し、臭気を伴うだけに深刻です。排泄の失敗が起きてしまうと、本人の自尊心を失わせる上に、周りの人の認知症老人の評価を下げてしまうことにもなります。排泄の問題について適切に対応していくことは、認知症老人の尊厳を守るためにも大切なことです。





尿失禁や放尿など排泄が関わる問題は、行為の背景や行動の目的を理解することで介護の方法の手がかりが得られます。尿失禁の場合も尿意を感じてウロウロしたり、オムツを外したりといった行動をとっていることも少なくありませんし、トイレが探せなくて廊下の隅やゴミ箱などに排尿していることも多いものです。したがって、尿失禁や放尿がみられた時には、認知症老人一人ひとりの排尿パターンや排尿行動の特徴を良く知って、排尿時間に合わせたり、また、排尿サインを早めにキャッチしてトイレ誘導すれば、失敗を防ぐことが出来ます。





トイレの位置がよくわかるように目印(大きな字で「便所」と書いたり、矢印をつける)をつけることもトイレ誘導に有効です。トイレに誘う時の言葉のかけ方は、自尊心を傷つけないように命令口調はさけ、「トイレはこちらですよ」といった言葉のかけ方をすると良いでしょう。



<排泄ケアのポイント>


排便、排尿障害に関する観察事項


①.日ごろの排尿排便パターンを把握


・排便排尿の回数    ・感覚    ・便の色、尿の色(日中薄い尿のおしっこをすると毒素の排泄が少ないため夜間毒素を排泄しようと尿の回数が多くなる傾向があります)    
・尿や便の量    ・便の硬さ(有形便、軟便、泥状便、水様便)



②.症状の観察

・残尿感    。残便感    ・腹痛の有無


③.水分、食事摂取量の観察


④.咀嚼(噛む)の状態を観察

・義歯は合っていますか→咀嚼に問題がある場合には消化吸収にも影響があり、排便障害の原因にもなります。



⑤.下痢の場合→肛門周囲の皮膚のトラブルをおこしやすい



便秘にさせないための工夫



・水分摂取させやすい体位の工夫(頚部が後ろにそらないように、クッションなどで工夫)
・十分な水分補給(一日1200ml~1500ml)をしましょう
・体操などのリハビリ(何かにつかまり肛門をひき閉めながらかかとをあげる)
・腹部マッサージ(のの字マッサージ)
・腸の活動を活発にする食材(食物繊維の多いもの)・食後トイレにすわり気張る訓練
・仙骨部を軽くたたいて刺激を与える
・常時おむつの方は定期的にトイレで座位姿勢をとりましょう







緩下剤は出来るだけ使用せずに自然に排便が出るように上記のことで工夫を図りましょう















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2010年07月19日

医師の目・人の目「知ってますか?認知症」 パート6

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第6 食べた直後、食べてない


認知症の人は、ある時期、異常な食欲を示すことがある。そのようなとき、食べた直後に「まだ食べていないから、早くご飯を用意しろ」「食事をさせないで殺すつもりか」などと言って、食べ物を要求する。家族は、「食べていない」という本人の言葉が理解できず、「今食べたばかりでしょう。これ以上食べると、おなかをこわすから駄目よ」「夕方まで待ちましょうね」と説得に努めるが、本人は納得しないばかりか、ますます興奮する。






このような症状に振り回されている介護者が少なくない。異常な行動をどのように理解し、対応したらよいか考えよう。




過食の時期は一人分食べても空腹感が残っていて、しかも細かい献立の内容を忘れるだけでなく、「食べたこと」を忘れる。「記憶になければ事実ではない」「本人の思ったことは本人にとっては絶対的な事実である」という原則のため、食べ物を要求するわけだ。




「食べていない」という本人の思い込みを認めて、「今、準備するから待っていてね」「おなかがすいたのね」。おにぎりがあるからこれ食べてね」と対応したほうがうまくいく。それでも本人が納得しなければ、もう一食食べさせてもよい。この時期に二人前を一度に食べてもおなかを壊すことも太ることもないから、安心して食べさせればよい。




不思議に思えるかも知れないが、動きが非常に活発でエネルギーの使い方が多い、栄養の吸収の効率が悪いと考えれば、異常な食べ方ではなく、必要なカロリーを摂取しているにすぎないと思えるだろう。いずれにしても体の動きが少なくなると、確実に食べなくなる。




認知症がさらに進行すると、物を飲み込むことができなくなり、食事の介護に1時間も2時間もかかるようになる。そうなったとき、介護者は、かつての過食のことを思い出して、「あの時は自分一人で食べてくれたし、服を着ることも、風呂に入ることも自分でできていた。病気もしなかった。よく考えれば、あんな楽なときはなかったな」と思える。




夜中に台所で音がするので見に行ったら、、過食の時期の本人が食べ物を探し回っていた。食べ物を隠せば隠すほど、一晩中探しまわるので家族はよく眠れないという相談を受けることがある。食卓に食べ物を置いておけば、それを見つけて食べるので、早く寝てくれるものだ。


早くから正しい知識を持つと介護は楽になるものである。














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2010年07月18日

認知症介護10か条  第2条 食事 ぼけ予防協会より

認知症介護 10か条
                            (一部ぼけ予防介護より)

第2条 食事


工夫して ゆっくり食べさせ 満足感           



認知症老人は、自分で食べるという行為はできていても、必要な量をバランスよく、安全に摂取することが難しくなります。そこで、老人の好みに合った食事を規則正しく摂れるような援助が必要です。





激しい徘徊のある人と、自発的に身体を動かすことが出来ない人とでは、エネルギーの消費量が異なります。個人差を考えながら、エネルギーの摂取と消費のバランスを保つよう食事の量を調整しましょう。





食事の内容は歯がなくても、胃腸が悪くなければ家族と同じ物を柔らかく調整したり、細かく刻んだり、のどごしをよくするなど工夫をします。たとえばトンカツなど、薄切りの豚肉を2~3枚重ねて作り、食べやすい大きさに切って出します。食事は見た目が大切です。歯がない高齢者は粥と細かく刻んだお菜と決め付けないことです。粥食を毎回残す人でも、おむすびや好物のうな重などは残さないものです。





認知症老人は水が欲しくても訴えられません。食事の時の汁やお茶以外に1日1000ml~1200mlを目安に与えるようにしましょう。食事を美味しく食べるには、落ち着いてゆっくりと出来る環境が大切です。異臭のない明るい場づくり、小鳥の声や心の和むような音楽を静かに流すようにしましょう。





食事をこぼしたり、時間がかかってしまうような時でも、しかったり注意したり、お節介をし過ぎないようにしましょう。食事の前後はうがいを進めましょう。うがいが出来ない人には番茶を与えて口の中の清潔が保てるようにします。2人3脚では食事の前に必ず口腔体操をします。又食後の口腔ケアも重要で必ず行っています。





食事を食べようとしないときには、熱があるか、身体の調子が悪い、便秘、義歯が合わない、口内炎があるなど、口の中のトラブル、不安や落ち着かない気分、他のことに気を奪われている、食べ物であることが分からない、食べ方を忘れている、すでに食事をしたと思い込んでいる、介護者の食事の勧め方が適切でないなどが考えられます。また、食事中や食後にむせたり激しい咳き込みがあるときは誤嚥の危険が有りますので注意しましょう。






<脱水について>





脱水とは、身体から水分や塩分(電解質)が失われて、それまで正常に保ってきた体のバランスが崩れることです。お年寄りや子供には脱水になりやすい傾向にあります。




(観察ポイント)


・口渇(口が渇く)、口の中の粘膜の乾燥、口唇のひび割れ
・皮膚の乾燥、皮膚の弾力性の低下
・尿量の低下や尿の色が濃くなる
・顔面紅潮、発汗、発熱




<チェックポイント>


・お茶や水などの水分摂取量はどの程度か
・食欲低下の有無、食事摂取量の低下はないか
・排尿回数は減っていないか
・下痢はないか、下痢後の飲水は十分足りているか
・嘔吐はないか
・多尿はないか
・寝ダコからの多量の浸出液はないか















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2010年07月16日

認知症介護10か条 第1条コミュニケーション

認知症介護 10か条  
                                (一部ぼけ予防協会より)

第1条  コミュニケーション    

        

語らせて 微笑 うなずき なじみ感



認知症老人の介護は、老人とよいコミュニケーションを築き、人間関係をつくって働きかけをしてゆくことが基本です。会話を主とするコミュニケーションは、よいふれあいの中で相手の人柄の理解や、情緒的な結びつきのもとともなります。家族や社会の援助に依存しなければ生きていけない老人が、そのことで生きる頼りのよりどころを得て、安心、安住することが出来るようなります。老人は不安の時には、要求や主張を一生懸命に訴えてきますが、普段は一般に受動的で消極的で、言葉の話しかけは決して多くはありません。






したがって老人に、こちらから話しかけて思いのまま語らせ、耳を傾け受け止めて、訴えには逆らわず間違いは許容して、その心を知ることが大切です。また、心身の障害が重いほど、非言語的(表情、身振り、言葉つき、態度など)な心づかいが必要です。老人と心を通わせ、信頼関係を築くためには、温かいまなざし、微笑み、受容を示すうなずき、心を伝える手のぬくもりが大切です。






すなわち、長い人生を歩み社会に貢献し、現在気力も体力も衰えた人を、優しく労う心で接することに尽きます。話しかけるときには、目をよく見て(難聴者には耳元で)穏やかに、わかりやすい言葉で簡単にはっきりと話しましょう。老人を馬鹿にして叱り続けたり、その言葉を抑えたりするなどは、もってのほかです。






こうして同じ仲間になれたという親近感と安堵感が老人の側に生まれて、「なじみ」の人間関係ができると、老人とのコミュニケーションが図れます。介護も円滑にゆくのです。「対応次第でよくも悪くもなるのが老人」です。老人の良い点を認めて、良い付き合いをしていくことが大切です。






<介護の現場で必要なコミュニケーションづくりとは>




・利用者さんの傍らにいて同じ方向を向く時間を持つようにしましょう。一緒に同じことに気持ちを向けようという姿勢で寄り添うことが大切です。



・受容することとは、利用者さんの現実をそのまま事実として批判したり、疑ったりではなく、認める気持ちで受け止めましょう。利用者さんが「受け入れられた」と認めてくれなくては、受容するとはいえません。私は、独りではなく、”なかま”がいるという思いにつなげていきましょう。



・受容は癒されると言うことにつながります。防御を解いて楽になりくつろいでいる状態になります。



・コミュニケーションは挨拶から始まります。



・メッセージをうまく共有するためには、技法(テクニック)が必要で、さらに心(マインド)と技能(スキル)を身につけましょう。認知症の利用者さんは感情面が豊かです。心(マインド)が伴っていないと語調やしぐさなどで伝わってしまいます。又技法(テクニック)にのみで技能(スキル)にかけると受容共感が伝わりません。














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2010年07月15日

医師の目・人の目「知ってますか?認知症」 パート5

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。



第5 出来事の全体を忘れる


普通の人は細かいことは忘れても、重要打と思うことは体験したことを忘れることはないが、認知症では「出来事の全体をごっそり忘れてしまう」ことがある。これを「全体記憶の障害」と呼んでいる。「ひどい物忘れ」に続く、認知症の記憶障害の第二の障害。訪ねてきた日が帰った直後に「そんな人は来ていない」と言い、デイサービスから帰った後「今日はどこへ行ったの」と尋ねられて「どこにも出かけないで一日中家にいた」などというのはこの特徴からくる症状だ。





周囲の人は、明らかな事実を本人が認めないことに驚き、正しいことを教えこもうとする。「隣のおじさんが来て、先ほどまで楽しそうに話していたでしょう」とか「これはお父さんが作った作品だけど、どこで作ったの」などと手掛かりを与えて思い出させようとするが、上手くいかないことが多い。






逆に「誰も尋ねてこなかったし、デイサービス言った覚えがないのに、この人はどうして私に間違ったことをお見込ませようとしているのか。ペテンに掛けようとしているのではないか」疑念を増し、混乱に拍車を掛けることになりかねない。





それよりも「体験したことを忘れるのが認知症の特徴だから、思い出せないのは仕方がない。でもデイサービスで楽しく過ごしたのだから、思い出せなくても、それでよいのではないか」と割り切るのがよい。 





認知症の人が電話を受けた場合、上手に対応するので相手も安心して「何日何時から会合があるので、お家の方に伝えてください」と頼む。すると「分かりました。間違いなく伝えます」としっかりした対応をする。しかし、電話を切った瞬間、電話がかかってきたことを忘れてしまうので、用件が家族に伝わらないことが少なくない。その場合には電話をかけてくれそうな人全員に「母が出たときは、用件は伝わらないと思ってください。お手数ですが、あらためて私たちに直接お電話下さいね」と話して協力してもらうのがよい対応である。  





特に認知症の初期の場合、普段はしっかりしているので、「こんなことを忘れるはずがない。とぼけているのではないか。正しいことを教えないといけない」と考え、事実を確認し、教え込もうとしても、混乱を一層拡大しがちだ。そんな時「全体記憶の障害の特徴による症状に振り回されているのではないか」と考え直すことが大切である。














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2010年07月13日

医師の目・人の目「知ってますか?認知症」 パート4

医師の目・人の目

「知ってますか?認知症」

        公益法人認知症の人と家族の会・公益法人認知症の人と家族の会副代表
        神奈川県支部代表・公益法人認知症グループホーム協会顧問
        川崎幸(さいわい)病院  杉山孝博

共同通信社の配信で、下記の地方紙に平成21年4月以降1年間にわたって毎週連載されました。杉山先生の許可を得まして連載52回シリーズをお届けいたします。(高知、中国、埼玉、上毛、徳島、千葉、下野、佐賀、岐阜、新潟日報、山陰中央新報、山梨日日、宮崎日日、熊本日日中部経済、日本海、秋田魁新報、山形、愛媛、琉球などの新聞社から配信されました。




第4 最大の特徴は、もの忘れ


年とともにも物忘れが目立つようになると「自分も認知症が始まったのか」と心配するように、記憶障害が認知症にの最大の特徴であることはよく知られれている。そして認知症には例外なく見られる症状だ。






普通のもの忘れと違い、認知症の記憶障害には、「記銘力低下」(ひどいもの忘れ)「全体記憶の障害」(体験を丸ごと忘れる)「記憶の逆行性喪失」(現在から過去に向かって記憶を失っていく)という特徴がある。この3つの特徴を頭に入れておけば、認知症の症状がよく理解できるようになる。




ところで、まず私たちが心得ておかなければならないことは「記憶になければ、その人にとって事実ではない」ことだ。見知らぬ人から「先日貸した金を返せ」と言われても、記憶になければお金を借りたことを決して認めないだろう。しかし、交通事故やてんかんの大発作などのために逆行性健忘になり、金を借りたという記憶を失った人は、実際にはお金を借りていても、借りたことを覚えていないため、同じ態度をとるはずだ。





周りの人にとっては真実であっても、本人には記憶障害のために真実でないのが、認知症では日常的であることを知っておくことは大切だ。今見たこと、聞いたこと、話したことを直後に忘れる、つまりひどい物忘れが、記憶障害の第1の特徴だ。同じ話を何回も繰り返すのは、そのたびに忘れてしまい、毎回初めてのつもりで話しかけているにすぎない。





しかし同じ話を聞かれている人はたまらないので、、「何度も同じ話をしないでよ」と言うと、本人はまだ一言も話してないのに、私が何回も話したなんてうそを言うのだろう。嫌な人だ。」と反応してしまう。それよりも、「ああ、そう」と適当に聞いていれば穏かな状態が続く。






物忘れのために同じことを繰り返すのは、認知症の人ばかりではない。「年寄りの話はくどい」と言うが、話したことをふっと忘れて二、三回繰り返すにすぎないでのあって、相手の頭が悪いので何度も言っておかなければならないと考えてのことではない。外出のとき、ガスの元栓を締めた邪道か気になり、、占めてことを思い出せなかったら、必ず台所に戻って確認するはずだ。





気になることを忘れた場合に繰り返すのは人間の本性である、と知ることは重要だ。「同じ状態になれば自分も同じことをする」と思うことで、認知症の人の気持ちが理解でき、イライラが軽くなるのは間違いない。














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