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2010年04月28日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


6.脊髄小脳変性症


小脳や、脳幹から脊髄にかけての神経細胞が変性することによって運動失調をきたす病気を総称して脊髄小脳変性症と呼びます。障害される部位と症状により、色々な形に分類されます。原因は不明で、遺伝性のものもあれば、遺伝性でないものもあります。常染色体優勢遺伝をする型では、親子、兄弟に発症する場合もしばしばあります。最近では遺伝子診断も行なわれるようになりました。出現頻度は、10万人に対して7~10人程度と推定されてます。




滑らかな運動を可能とする中枢である小脳の働きが障害されるため、酔っ払ったような不安定な歩行、ろれつが回らない話し方、ものをつかもうとしてもうまくつかめない失調症状などが特徴的な症状です。一般的に筋肉の力は低下しません。めまいや手足の震え、排尿障害、発汗障害などを合併することもあります。




病型によって違いはありますが、病気の進行はゆっくりしていて、生命に対する危険性が少ないことが、筋萎縮性側索硬化症や筋ジストロフィーなどの神経難病とは異なった特徴であるといえます。しかし、オリーブ橋小脳萎縮症や、パーキンソン症状を合併した病型のものは、進行が比較的速く数年から10年位で、寝たきりになって時に補助呼吸が必要になる場合があります。




原因が不明のため、根本的な治療方はありません。運動失調に対してTRH(甲状腺ホルモン分泌促進ホルモン)の静脈注射が有効である場合があります。パーキンソン症状に対しては、Lドーパなどの抗パーキンソン剤を使います。立ちくらみ、排尿障害などに対しては対象療法の薬が使われます。




症状が徐々に進行していきますから、その時々の状態に応じて筋力低下を防ぐためのリハビリテーションや適切な器具の使用転倒などの危険防止対策などが実施されなければなりません。しばしば転倒するようになると、ヘッドギアや肘・膝に厚手のサポーターをつけることも必要になります。手すりや段差の解消、適切な家具の配置など生活環境を整えることが非常に重要です。見守りや外出支援のための訪問介護などの介護保険サービスを利用することで、療養生活を豊かに積極的に送ることができれば素晴らしいことです。




失調性言語障害が進行すると、本人と周囲のものとのコミュニケーションが障害されて、本人の苦痛が非常に高まります。周囲のものは、根気強くコミュニケーションをとるように心がけてほしいと思います。病気が進行すると最終的に寝たきりになって、呼吸感染症、尿路感染症、褥創の予防や治療が大切になり、呼吸状態が悪化して気管切開や人工呼吸器装着、嚥下障害による胃瘻や経管栄養なども必要な状態になっていきます。




介護保険の第2号被保険者に発症した場合、仕事や家庭生活に深刻な影響が出てきます。遺伝的要素の強い場合には、子供自身の発病の恐怖や結婚への影響など、深刻な問題を引き起こします。様々な悩みに対するカウンセリングや利用できる制度を十分利用できるようなアドバイスが受けられるような総合的な援助の必要な疾患が脊髄小脳変性症なのです。










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2010年04月12日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


5.初老期における認知症



介護保険で第2号被保険者の障害の原因として認められている特定疾病のひとつが「初老期における認知症」です。アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(ピック病)、レビー小体型認知症、血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病などがあって、外傷性疾患、(頭部外傷、硬膜下血腫等)、中毒性疾患(有機溶剤、金属、アルコールなど)、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)、栄養障害、(ビタミンB12 欠乏症など)を除いたものです。



①.アルツハイマー病

脳の神経細胞の萎縮と老人斑と呼ばれる神経細胞の変性が特徴です。頭部CT やMRIでは脳のびまん性萎縮が認められます。40歳後半から65歳未満に発症して、若年期認知症として最も多いものです。症状は記憶障害から始まり徐々に進行していきます。初期では塩酸ドネベジル(アリセプト)が有効な場合があります。



②.前頭側頭型認知症(ピック病)


前頭葉や側頭葉を中心とした脳の萎縮が特徴的。高度な判断と気持を集中させる働きを持つ前頭連合野の働きが低下するため、多動、徘徊、多弁、周囲への過干渉など活動性が亢進したり、抑制がとれ、性的逸脱行為、窃盗なども認められる症状を示すことが比較的多く見られます。逆に、非活動的、無関心になり、興味が失われ、自発性が減退するときもあります。記憶力は初期の段階では、比較的保たれています。発症年齢はアルツハイマー病とほぼ重なっています。出現頻度は、アルツハイマー病の1/10から1/15といわれています。




③.レビー小体型認知症


側頭葉と後頭葉(視覚中枢がある)の萎縮や活動性の低下が特徴。パーキンソン病の病変に見られるレビー小体という異常な構造物が、、認知機能に関わる大脳全体に見られることから名付けられました。記憶障害以外に、幻覚、特に生々しい幻視、及びパーキンソン症状が特徴です。さらに、便秘や失禁、起立性低血圧(立ちくらみ)などの自立神経症状を伴うことがあります。治療としては、パーキンソン症状に対しては、抗パーキンソン剤が有効な場合があります。精神症状に対してトランキライザーなどを使うと、パーキンソン症状を悪化させることがあるので注意が必要です。



④.クロイツフェルト・ヤコブ病


急速に記名・記憶障害、失見当識(人物・場所・時間などの見当がつかなくなること)が進行し、、ミオクロニーや舞踏病様{手足などが震えること)の不随運動を伴って、一年以内に死亡することが多く見られます。原因は感染性たんぱく質である異常プリオンと考えられています。プリオンとは、253個のアミノ酸から成る細胞膜の構成成分です。異常なプリオンは感染性をもち、正常なプリオンの構造を変化させて、脳の神経細胞を破壊します。遺伝性と孤立性とがあります。脳・脊髄・脊髄液・目などに異常にプリオン濃度が高い。社会的に問題となった牛海綿状脳症はプリオン病です。




若年期認知症介護の実態調査報告書(社団法人認知症の人と家族の会、2005.5)から認知症に気づいたときの症状(件数:重複回答あり)


●物忘れがひどくなった                         49件

●数字の読み違いやお金の計算ができない             24

●同じことを聞いたり言ったりする                    21

●仕事が出来なくなった(ミス)(能力の低下で退職させられた)  19

●言動がおかしくなった                          16

●料理が出来なくなった
{味が変わった・メニューが単調になった)               15

●無気力、無関心(趣味に興味がない)                14

●道がわからない(出かけて帰れない                 12

●お金を盗まれたなどの被害妄想                   11

●感情が不安定で怒りっぽくなった                   7

●うつ状態(閉じこもり、他人に会いたがらない)           7

●衣類がちぐはぐになったり身だしなみが悪くなった         6

●電化製品が使用できなくなった
 道具の使い方が分からない                      5

●電話が取れない、かけられない                    5

●言葉が出なくなった                           5

●同じものを何回も買ってくる                       5 




初老期における認知症では、介護の問題もさることながら経済的問題、就労の問題など様々な問題を抱えています。











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Posted by 2人3脚 at 19:29Comments(0)医学講座

2010年04月05日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


4.多系統萎縮症


2006年3月までは「シャイ・ドレーガー症候群」となっていましたが、これに「線状体黒質変性症」「オリーブ橋小脳萎縮症」が追加されました。いずれも小脳、脳幹部、脊髄の一部の変性が認められます。原因は不明で、根治的治療はなく、対症療法が行なわれます。




「シャイ・ドレーガー症候群」は1960年にシャイとドレーガーにより報告。30歳代から60歳代にかけて、立ちくらみや失神、尿が出にくいなどの排尿障害で発症し、自立神経系の変成が徐々に進行する原因不明の疾患です。




主な症状としては、立ちくらみや失神などの起立性低血圧による症状が代表的で、その他、発汗異常(汗が出にくい、皮膚が乾燥しやすい)、排尿困難、尿失禁、便秘、インポテンツなどの自立神経症状が重なって出てきます。病気が進行し運動失調(ろれつが回らない、酔っぱらったようなふらつき歩行など)や、パーキンソン症状(筋肉のこわばり、手足のふるえ、小刻み歩行など)、睡眠時無呼吸症候群などの症状が加わってきます。




自立神経系の神経細胞だけでなく、運動神経系の小脳や脊髄運動神経細胞なども変性する広範囲の病変が特徴です。治療としては、起立性低血圧の管理が重要です。ひどい立ちくらみや失神による転倒事故や、脳の血流障害による多発性脳梗塞を起こさないために、昇圧剤を使用する場合があります。




多発性脳梗塞の予防にアスピリン製剤が有効な場合もあります。パーキンソン症状に対しては、L・ ドーパなどの抗パーキンソン剤が使われます。排尿障害や失禁、便秘などに対して薬物療法や、自己導尿、浣腸などの治療処置が行なわれます。いずれにしても、他の疾患による同様の症状と比べて効果が得られにくいようです。




介護の立場としては、急激な体位変換を避けることや、めまいや失神に対する精神的な恐怖感が強いので、精神的な支えをすることが必要です。非尿や排便がスムーズにできるように声かけや腹部マッサージなどが有効です。パーキンソン症状や運動失調が進行すると動けなくなり、最終的には寝たきりになることが少なくありません。










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Posted by 2人3脚 at 09:00Comments(0)医学講座

2010年03月28日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


3.骨折を伴う骨粗鬆症

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、老化により骨の内部がすきまだらけになった状態をいい、骨がもろくてつぶれやすくなるのが特徴です。女性に多い病気です。その理由は、女性は妊娠、出産、授乳などのためにカルシウム不足を起こしやすいこと。骨の形成維持にかかわっている女性ホルモンが閉経後急速に少なくなること、骨の基質をつくる蛋白質の合成が少ないこと、などです。



主な治療法としては、カルシウムの多い食事をとる食事療法、活性型ビタミンD・女性ホルモン剤・カルシウム剤などの内服やカルシウムの吸収・骨への沈着を促す注射などの薬物療法、コルセット作成・温熱療法などの理学療法などがあります。



成人のカルシウム必要量は一日600㎎と定められていますが、日本人の平均摂取量は52㎎といまだに不足気味です。牛乳をはじめ乳製品はカルシウム含有量と吸収率の両面からみて最も優れた食品です。チリメンジャコ・サクラエビ・ヒジキ・ワカメなどの小魚や海藻類、豆腐や納豆などの豆製品、コマツナ・チンゲンサイ・カブの葉などの緑黄色野菜もカルシウムが多く含まれていますので、献立に取り入れたいものです。



日光に当たると、ビタミンDが活性化され、腸からのカルシウムの吸収力や骨の形成力が増します。また、骨に力が加わると骨へのカルシウムの沈着が促進されます。閉じこもりがちなお年寄りを屋外に誘い出すようにすることが大切です。寝たきりは骨からのカルシウムの遊離を促すので、、座位や立位、室内歩行など寝たきり予防のケアに心掛けましょう。




骨折は、お年寄りの寝たきりの原因の20%を占めていて、その原因の大部分に骨粗鬆症が関係しています。もちろ、老化により筋力や反射神経が衰えて、転倒しやすくなっていることも背景の1つです。



骨折すると手術や固定のため、一定期間の安静が必要とされ、その間、筋力の低下と意欲の減退が起こり、回復しないまま寝たきりととなってしまいます。お年寄りの骨折中、最も多いのが脊椎の圧迫骨折です。自分の体重に耐え切れず、脊椎がつぶれてくるもので、、腰椎や下肢の痛みに対して、コルセットや鎮痛剤でおさえるのが普通です。



次に多いのが、大腿骨頚部骨折で、人工骨頭を入れたり、釘を打ち込んで固定したりする手術が行なわれます。そのほか、手首や上腕骨の方に近い部分の骨折があります。これらの骨折は、手術しないで、整復したりギブスで固定して、骨が自然にくっつくのを待つことがほとんどです。




骨折の予防には転倒予防も重要です。まず、つまずかないように環境を整えること、足元にまとわりつかないような衣服や履物を身につけること、体重を適正に保つこと、そして、体を動かすことや運動に心掛けることで反射神経を鍛えるようにすること、などです。










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Posted by 2人3脚 at 20:44Comments(0)医学講座

2010年03月18日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


2.後縦靭帯(こうじゅうじんたい)骨化症

介護保険で第2号被保険者の加齢に伴う障害の原因として認められている特定疾病のひとつで、脊椎の圧迫による症状が特徴です。私たちの体を支える脊椎は椎体と椎弓によってできていますが、その椎体後面と椎弓によって作られる空間(椎孔)を上下に脊髄が走っていて脊柱管を作っています。一つ一つの脊椎は靭帯と呼ばれる強い繊維性の組織で結びつけれています。



椎体の前面あるいは後面を結びつけている靭帯を前縦靭帯あるいは後縦靭帯と呼びます。後縦靭帯は脊髄に接しているため、老化などにより後縦靭帯が肥厚、骨化すると脊髄が圧迫され、しびれ、疼痛、運動障害などの神経症状が出現します。これが後縦靭帯骨化症です。




後縦靭帯の骨化は頚椎に最も多く、男性が女性より多く見られます。逆に胸・腰椎後縦靭帯骨化症は女性に多いといわれます。年齢的には中年以降の50歳代、60歳代に多くみられ、30歳代未満の発症はきわめて稀です。また、肥満の人に多くみられ、耐糖機能異常を示すことが知られています。



通常は、片側の手指のしびれ、肩、上肢の疼痛、上肢の脱力などの症状が徐々に出現します。進行すると、四肢・躯幹のしびれ、痛み、知覚異常、四肢・躯幹の運動障害、脊柱の可動域制限、膀胱直腸障害などが出現します。進行すると寝たきりの原因になります。首を曲げたりねじったりしたとき、運動が制限され、上肢などにピリットした痛みを感じる(根性疼痛)ことがあります。




5年以上経過すると、後縦靭帯の骨化は徐々に増大し、骨化病変の長さも厚さも増大するために脊柱管は狭窄し、脊髄がひどく障害されることになります。障害が著しくくなると、後方から脊柱管を拡大する手術が必要になります。長期的にみると脊髄麻痺の予後は不良です。




後縦靭帯骨化症患者の約20%は日常生活に介助を必要とし、約40%は介助不要でも日常生活は不自由であるといわれています。変形性脊椎症、脊椎圧迫骨折、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症等の疾患によっても同じような症状が出現します。



診断は脊椎エックス線撮影やMRIなどによって後縦靭帯の骨化像と脊椎管の圧迫像を確認するすることに行なわれます。日常診療の場では脊椎エックス線撮影をする機会がよくありますが、後縦靭帯骨化が認めれても、症状がまったくないことがよくあります。



介護にあたって、①.首や股関節を強く屈曲すると、神経症状が強くなり、時には四肢麻痺を引き起こす場合がありますので注意すること②.知覚障害と筋力低下のため手に持ったものを落としたり、ふらついて、転倒したりすることがあるので、注意深く観察すること、③.廃用性筋萎縮を防ぐため自分でできることは自分で行なうよう援助すること などが必要です。










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2010年03月14日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第3章 介護保険における特定疾患
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)



筋萎縮性側索硬化症とは、脳や脊髄にある運動神経細胞が変性することにより、筋肉の収縮力が低下し筋肉が萎縮していく進行性の神経難病です。英語名(Amyotrophic Latrral Sclerosis)の頭文字をとってALSとも呼ばれています。原因は不明で治療法はありません。介護保険では、第2号被保険者の障害の原因として認められている特定疾病のひとつです。



米国メジャーリーグのルー・ゲーリック選手や宇宙物理学者ホーキング博士がかかった病気として知られています。主に40~60歳で発病し、4~5000人の患者がいるといわれています。持っているものを落とす、足がもつれる、ろれつが回らなくなるなどの症状が初めに出現して、全身の筋力の低下がゆっくり確実に進行します。発病後3~5年で約80%の患者が死亡すると報告されていますが、人工呼吸器が使用されるようになって予後が大幅に延長してきています。



主な症状として

①.筋萎縮・筋力低下:四肢から始まり、駆幹呼吸筋まで進行します。動眼筋は最後まで冒されないので全身が雨後k泣くなっても目を動かすことができます。

②.球麻痺:咽喉頭や舌の筋肉が障害されると言葉が不明瞭になり嚥下が困難になります。

③.筋肉の繊維束性収縮:筋肉が細かく収縮を繰り返してピクピク動きます。

④.腱反射亢進:筋肉が突っ張りやすくなります。

⑤.陰性徴候:知的機能、知覚、直腸膀胱障害等はありません。意識は最後まで正常です。




このように、筋萎縮性側索硬化症は、筋萎縮と筋力低下が確実に進行して、歩行困難、言語障害、嚥下障害、呼吸障害を引き起こす深刻な疾患です。進行すると、嚥下障害のため胃痮設置などによる経管栄養が必要になり、痰の喀出もできなくなって人工呼吸器の装置を余儀なくされるようになります。在宅で療養している患者にとっては、頻繁に痰の吸引が必要なこともあり、患者及び患者を介護する家族にとっての負担は大変なものです。



このような環境をふまえ、患者のQOLの向上や患者及び家族の負担の軽減を図るため、在宅の筋萎縮性側索硬化症患者に対してホームヘルパーが痰の吸引を行なうのはやむを得ないという見解が「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」(報告書、平成15年6月9日)から出されました。「今回の措置は、在宅ALS患者の療養環境の現状にかんがみ、当面やむを得ない措置として実施するものであって、ホームヘルパー業務として位置づけられるものではない。」と限定されていますが、ホームヘルパーによる痰の吸引が厚生労働省管轄の委員会で公式に言及されたことは注目すべきことです。











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2010年03月08日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

7.在宅人工呼吸療法

在宅人工呼吸療法は、長期にわたり持続的に人工呼吸法による補助呼吸が必要で、安定状態にある患者さんに対して自宅という生活の場所で人工呼吸器を使って行なう治療法です。



対象となる患者さんは、病状が安定して、在宅での人工呼吸療法を行なうことが適当と医師が認めたものです。ただし、睡眠時無呼吸症候郡の患者さんは対象となりません




疾患としては、①筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどの神経・筋疾患②肺気腫・気管支喘息などの慢性閉塞性肺疾患③肺結核後遺症などによる肺の高度な換気障害④脳卒中などによる中枢性換気障害⑤胸郭異常⑥呼吸筋麻痺を伴う頚椎損傷などをあげることが出来ます。



人工呼吸が絶対的に必要な患者さんにとって、故障や停電等による呼吸器の停止は死に直結します。命の綱である人工呼吸器は十分な知識と細心の注意をもって管理されなければなりませんので、かつては入院しないと利用できないと考えられていました。しかし、疾病が比較的安定しいるものの、今以上回復の見込みのない患者さんが、人工呼吸療法のために、何時までも入院して人工呼吸器に縛りつけられることは、身体的にも精神的にも残酷な状況といわざるをえません。




自宅という最も安らげる場所で、患者さん自身のもつ能力を発揮しながら生活を送ることが出来るならこれほど素晴らしいことはありません。バッテリーで作動する人工呼吸器を利用すれば外出することも可能です。世界的な天文学者で、筋萎縮性側索硬化症の患者で、ある英国のホーキング博士が、人工呼吸器を装着しながら、素晴らしい研究発表を行っていたことを知っている方もいると思います。



在宅人工呼吸療法の問題点としては、(1)安全性の確保の難しさ(2)呼吸器管理や痰の吸引などの介護負担が大きいこと(3)訪問診療や訪問看護など地域の在宅医療の充実度に地域差があること(4)デイサービス、ショートステイなどの在宅サービスが利用できないため家族の介護負担が24時間365日にわたることなどが考えられます。



特に安全性の確保については、病院にいれば医師や看護師など常時スタッフがいて、対応が出来、呼吸器が故障しても代替の呼吸器を使うことができます。在宅ではそのようにはいきません。介護者は、主治医、訪問看護師、病院、レンタル会社など緊急連絡網を整備して、、緊急時には手動式蘇生機(アンビュ・バッグ)を使って呼吸確保が行えるよう普段から訓練を怠らないことが必要とされます。



ヘルパーとして関わる場合、人工呼吸器(小型になった)と、患者さんの気管切開部の気管カニューレとを接続している呼吸回路が外れたら大変ですから、介護しているとき、呼吸回路に触れないように注意することが大切です。




在宅呼吸療法の介護でもっとも大変なことは、痰の吸引を頻回に行わなければならないことです。5分おき10分おきにしなければならないことも少なくありません。家族が24時間続けることは非常に負担になります。「痰の吸引」の項でも取り上げましたが、今後ホームヘルパーなどが痰の吸引も可能になることが在宅人工呼吸療法の普及にとって非常に重要であると思っています。もちろんそのためには、法律上行政上の制限、研修、資格化、指導者なども問題が解決されなければなりませんが、1日も早く実現されることを私は望んでいます。










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Posted by 2人3脚 at 14:49Comments(0)医学講座

2010年03月03日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


2.経管栄養法、及び胃瘻(いろう)

経口からの栄養摂取が困難な患者に対して行なわれるのが、経管栄養法や中心静脈栄養法です。中心静脈栄養法は次回に取り上げることにして、今回は経管栄養法について考えてみましょう。経管栄養法には栄養注入の経路により、経鼻経管法と胃瘻増設がありますが、まれには小腸(空腸)に直接注入する空腸瘻もあります。それぞれの利点・欠点や予後(経口摂取できるようになるかどうかなど)を考慮して患者・家族に十分説明した上で選択が行なわれます。



自己抜去や嚥下性肺炎などのトラブルの発生しやすい経鼻経管法よりも、手術が必要ですが、肺炎などの合併症が少なく、外から見えにくい胃瘻が最近ではよく選択されるようになっています。経口摂取の併用の可能性や、将来抜去できる可能性などが志唆されると、経管栄養を受け入れること自体に非常な精神的な負担を感じている当事者にとって精神的な救いになることもあります。



経管栄養法の適応は、脳血管障害、パーキンソン病や神経変性疾患などの難病、口腔や食道などの消火器疾患などより、嚥下障害が起こっているものを対象としています。しかし、最近は老衰などにより、衰弱が進行して、点滴などの治療をしていても、食欲の改善しない患者さんも対象とされて範囲が非常に広がっています。




ホームヘルパーは医療的ケアである経管栄養などの管理はできないとされていますが、現場ではしばしば遭遇するもので、家族や看護師が対応しているものですから、管理に関する基本的な理解は必要でしょう。チューブの管理は、閉塞、脱落、抜去が重要です。




薬剤や高濃度の流動食を注入したときに閉塞が起こりやすいので、沈殿しやすい薬剤などの注入は注意しなければなりません。脱落を見逃して、流動食を注入すると、口内逆流や誤嚥を起こすので、カテーテルの位置を確認することや、注入時の抵抗感があるときには注入を見合わせることが必要です。



カテーテルが長期に留置されると圧迫による粘膜びらんや潰瘍を作りやすくなります。また、カテーテルそのものも汚れて感染を引き起こす原因にもなるので、経鼻経管カテーテルは2~4週間に1回程度の交換が必要です。胃瘻カテーテルはそれぞれの製品によって決められていますが3~4ヶ月に1回程度です。



胃瘻部位は皮膚が欠落しカテーテルの脇から胃液などが浸出してくるため、感染を起こしやすいため、浸出物の除去とイソジン綿棒による消毒を定期的に行なう必要があります。体外に出ているカテーテルの部分と皮膚とが密着して皮膚にびらんなどを起こすようであれば、切り込みガーゼなどをはさみます。



経管栄養法に合併しやすい呼吸器感染症に対する注意が必要です。誤嚥性肺炎の予防と、嘔吐したとき窒息にすばやく対応するために、吸引機の準備と適切な使用が必要になります。










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Posted by 2人3脚 at 09:00Comments(2)医学講座

2010年02月26日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


6.膀胱留置カテーテル、導尿法

膀胱に尿が溜まってくると、膀胱壁の進展受容体からの刺激が骨盤神経を介して大脳にある高位排尿中枢に伝達され、尿意が発生します。高位排尿中枢から脳幹部の上位排尿中枢を介して下位排尿中枢に指令が伝えられると、排尿反射がおこり、膀胱の筋肉が収縮し、内尿道括約筋が弛緩して尿が尿道を通って体外に排出されます。これが排尿のメカニズムです




尿の出方が悪くなり(排尿困難)、尿が出なくなる、(尿閉)になると、不快感、苦痛、不眠などの辛い症状が出現し、尿路感染症、水腎症、腎不全、膀胱破裂など命に関わる状態にもなる可能性があります。このような場合には、カテーテルを使って膀胱から尿を排泄する必要があります。これを導尿と呼びます。



導尿の必要となる疾患は、①.脊髄損傷・脳卒中・骨盤内手術後・糖尿病性神経症や神経難病などによる神経障害②.膀胱腫瘍、膀胱損傷などの膀胱疾患③.前立腺肥大、前立腺がん、尿道狭窄などの尿道疾患などがあります。また、薬物による排尿困難や、尿による汚染が問題になる場合(褥創など)、介護上の問題でおむつ交換が困難な場合などが、一時的あるいは相対的適応といえます。



導尿法としてしては、膀胱にカテーテル(バルンカテーテル)を留置する方法と、導尿後カテーテルを抜き去る間歇的導尿法があります。間歇的導尿法は、本人あるいは家族が1日5~6回実施しなければならない手間がかかりますが、感染症などの合併症が少ないこと、カテーテル留置する不快感がないこと、尿をためる膀胱機能が維持されることなどのメリットがあります。脊髄損傷などの患者さんなどが、使いやすい導尿キットを使って実施します。



一般的な方法が、抜けないように滅菌蒸留水を入れたバルンカテーテルを膀胱に留置する膀胱留置カテーテル法です。手間がかからないのですが、不快感があること、尿路感染症や膀胱結石をおこしやすいこと、カテーテルが詰まったり、接続部が抜けたりするトラブルが発生しやすいことなどのデメリットがあります。カテーテルの交換は2~4週間に1回で、医師あるいは看護師が行います。沈殿物の除去やカテーテルがつまらないように、生理食塩水などで膀胱洗浄する場合があります。



膀胱カテーテルを留置している利用者に接するヘルパーが留意しなければならない点をあげます。

①.認知障害や意識障害のある利用者が、カテーテルを引き抜かないように注意すること。
②.清拭や更衣、シーツ交換、移動などのケア中に、カテーテルや導尿チューブを引っ張らないこと。
③.カテーテルなどのねじれや折れ曲がりに注意して、スムーズに尿が流れていることを確認すること。
④.蓄尿バックなどを身体より高い位置に置くと、尿の流失が妨げられるだけでなく、尿が膀胱に逆流して感染症の原因にもなるので注意をすること。
⑤.尿が濁ったり血液が混じるようなことがあれば、速やかに医師・看護師に連絡をすること。
⑥.陰部の清潔に特に注意すること。
⑦.尿道口に膿や血液が付着している場合、速やかに医師・看護師に連絡をとること。











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2010年02月22日

杉山ドクターのやさしい学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


5.痰の吸引

慢性気管支炎、気管支拡張症などの呼吸器感染症、脳卒中の筋萎縮性側索硬化症などの神経や筋肉の障害、うっ血性心不全などの循環器疾患、がんをはじめ様々な疾患の終末期などでは、常に痰が出るようになります。自分で痰の喀出ができればよいのですが、全身の衰弱が進行して嚥下力・喀出力が低下してくると、喉に痰が絡むようになります。



痰は、気管支などに異物がある場合に、強い気流によって排出するための仕組みです。私は在宅の介護者に「咳き込むことができるうちは大丈夫です。咳き込むことやむせることもできなくなると吸引機が必要になる場合があります。軽い咳は薬で止めないほうが良いのです」と説明しています。



痰がたまったとき、口からださなければいけないと思っている介護者もいますが、痰を飲み込んでも胃で殺菌されますから、心配はいりません。喉に痰が絡んでいつまでも留まるようになると、①苦痛や不快の原因となる②肺の働きが低下する③衰弱の進んだ人にとっては、、窒息の原因となる。④食欲の低下⇒全身状態の悪化⇒痰の増加  という悪循環をつくる⑤痰が細胞の培地となって呼吸器感染症をさらに悪化させる などの問題が出てきます。



また、介護者にとっても、痰が絡んで苦しんでいるのに手をこまねいて見ているのは耐えられない気持ちにさせられます。川崎幸クリニックでは毎年40~50名を在宅で看取っていますが、在宅で痰の吸引ができるかどうかは、在宅看取りの重要な要因のひとつといってよいでしょう。訪問診療や訪問看護のとき、痰のからみで苦しんでいるのが分かれば、直ちに貸し出し用の吸引機を自宅に持っていき、介護者に吸引の指導をして、その日から、痰の吸引ができるようにしています。



どの介護者もはじめは不安で、カテーテルを喉の奥まで充分に挿入できないのですが、吸引することにより痰の絡みや、喘鳴が軽くなり、、苦痛が取れていくことを体験するうちに見事に吸引ができるようになります。






「痰をしっかり吸引していれば、抗生物質を使うのと同じ効果が得られます。発熱していても薬を使わないで、吸引だけでよくなった例がありますよ」「吸引の刺激でむせることがありますが、その方が肺の奥から痰が出てくるのでよいのです。吸引を止めないで続けてください。ご本人にとって苦しみは一時的で、最終的には呼吸が楽になります。「吸引カテーテルを充分深く入れてもかまいません。もし気管に入っても心配はありません」「粘膜を傷つけてカテーテルに血液がつくことが時々あるかもしれませんが、大きな出血につながることはありません」などと介護者に説明すると、介護者は安心して吸引を実行できます。




2003年6月9日の「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告所


(厚生労働省)により在宅ALS(筋萎縮性側索硬化症)に対して、2005年3月24日の厚生労働省の通達により、在宅におけるALS以外の療養患者・障害者にたいして、「家族以外のものが痰の吸引を実施することは、当面やむを得ない措置として容認される」とされました。



しかし、現実的には、ヘルパーの知識、技術の問題、、事故に対する不安、医師・看護師などとの連携の難しさなどのため、ヘルパーによる痰の吸引は余り行なわれていないようです。吸引の必要な利用者に常に接するものが吸引できることが一日も早く円滑に実施できるようになってほしいと思っています。









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Posted by 2人3脚 at 09:00Comments(2)医学講座

2010年02月17日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)



4.在宅酸素療法


肺の働きが慢性的に低下してきて、動脈血液中の酸素の濃度が一定以下に下がると、常に酸素を吸入しなければならなくなります。この状態を慢性呼吸不全といいます。かっては、酸素吸入をするためだけに何年間も入院する人がいましたが、1986年4月から社会保険診療報酬の改定で在宅酸素療法が認められて以来、自宅で酸素濃縮機や液体酸素ボンベを置いて酸素吸入しながら在宅生活を送ることが可能となりました。日本全国で10万人以上の呼吸不全患者がこの治療を受けています。



在宅酸素療法の適応として、(1)高度慢性呼吸不全 (2)肺高血圧症 (3)チアノーゼ型先天性心疾患が認められています。例数が圧倒的に多いのが高度慢性呼吸不全で、その基礎疾患としては、肺結核後遺症、肺気腫・気管誌喘息などの慢性閉塞性疾患、間質性肺炎などがあります。 



在宅酸素療法の導入にあたって、入院中に、状態に応じた適当な酸素酸素濃度(酸素流量)や吸入時間の決定、機器の扱い方、生活上の注意、緊急時の対応などの指導を受けます。医療機関を介して機器取り扱い業者から自宅に、酸素濃縮機(あるいは液体酸素ボンベ)、携帯用酸素ボンベ、フィルターなどの消耗品などが届けられます。




患者や周囲のものが注意しなければならないことをあげますますと、


(1)指示された酸素流量を厳守すること。苦しいからといって酸素流量を上げると、場合によっては呼吸抑制が起こり意識を失うことがあります。

(2)禁煙を守ること。呼吸機能を悪化させて、また、酸素の助燃作用で思わぬやけどをすることがあります。周囲のものも禁煙を守って患者がきれいな空気を吸えるように協力すべきです。

(3)加湿用水の補充、フィルターの交換、流量のダイアル確認、吸入用チューブの折り曲げ・ねじれなどの有無の確認など、基本的な管理を怠らないこと。

(4)呼吸器感染症や心不全などの症候に注意して、そのような症候が出れば速やかに対応すること。食欲、活気、表情などの全身状態の変化、息切れ・呼吸困難、むくみなどの呼吸器循環器症状、咳や痰、熱などの感染症候などがチェックポイントです。

(5)入浴や適度な運動は好ましいが、酸素を吸入しながら行うこと、慢性呼吸不全では、体を動かすと血中酸素濃度が急激に低下することがしばしばです。チューブを引っ張りながらの移動はわずらわしいといって、酸素チューブを外してしまう人が いますが、意識障害等の事故が最も起こりやすいことを知っておくべきです。特にヘルパーが身体を介助するときには注意しましょう。

(6)栄養は健康生活の基本なのでしっかり摂ること。ヘルパーは食べやすく、心負担の少ない減塩の献立を考えて、楽しく食べられるよう雰囲気作りも演出しましょう。

(7)在宅酸素療養日誌を書くこと。医師や看護師の訪問時に見せて、状態の変化を判断してもらいます。

(8)酸素吸入していても日常生活は積極的に行うこと、。買い物や散歩などはもちろん、旅行に行く患者もいます。業者が旅行先の宿泊所に濃縮機を設置してくれることがあります。











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Posted by 2人3脚 at 13:51Comments(0)医学講座

2010年02月13日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


3.中心静脈栄養法 



中心静脈栄養法は経口摂取が困難で静脈栄養以外には栄養維持が困難な患者を対象としています。診療報酬で在宅医療として認められ在宅でも実施されるようになってから、在宅サービスを受けている利用者の中に中心静脈栄養法を受けるものが見かけられるようになりました。直接管理するものは、看護師、医師、指導を受けた利用者や利用者家族であっても、訪問介護などの在宅サービスを提供するスタッフにとっても基本的な理解をすることは重要です。



中心静脈の適応は、経口摂取が不可能になったもので、。胃ろうや経管栄養法では栄養の補給ができないものです。悪性腫瘍疾患で胃ろうなどを留置できないもの、小腸を大幅に切除して消化吸収に障害が出ている短腸症候群などが対象になります。



高カロリーの栄養液を静脈から入れる場合、抹消静脈では欠陥炎を起こしてs舞うため、鎖骨下静脈などから上大静脈に直接カテーテルを留置して入れることになります。勝手は取り扱いの困難さが野ために退院できず入院したまま最後を迎える患者も少なくありませんでした。最近は取り扱いが安全で容易なカテーテルや調整された製剤が利用できるようになって、在宅で穏かな療養が可能となり患者のQOL(生活の質)は高まりました。



中心静脈栄養法は、必要なカロリーや栄養素、ビタミン、ミネラル、が調整された輸液パックの栄養液を、注入ライン(輸液バッグとカテーテルをつなぐ、輸液ライン、延長チューブ、フィルターなどで構成されるラインのこと)を経由して、鎖骨下静脈等に留置した中心静脈カテーテルから持続的に点滴注入する方法です。



皮膚にカテーテル刺入されているため、感染の危険性があります。最近、皮下に静脈カテーテルと一体となったポートが埋め込んでおいて、点滴のように皮膚から、ポートに針を刺して行なう方法が開発されて皮膚感染の危険性が下げられるようになりました。



中心静脈栄養法を維持管理していく場合の最も大きな問題がカテーテル感染です。原因としては、穿刺した皮膚付近の細菌がカテーテルを伝わって皮下組織や血管内に侵入する場合、あるいは細菌で汚染された輸液剤などから注入される場合があります。バッグ交換や注入ラインからの薬物注入などのとき感染予防の手技を守ること、皮膚刺入部位の消毒、感染兆候の観察が重要です。




その他のトラブルとしては、注入ラインに関して、血液の逆流、非違即、接続部のはずれなどがあります。感染症状に対する注意としては、最も良く見られる症状は、原因不明の発熱です。カテーテル刺入部の発赤、、硬結、浸出、出血、疼痛、などが伴っているか見ます。



カテーテルの皮下トンネルにそって発赤や痛みがみられることもあるので、普段から注意深く観察することが必要です。中心静脈栄養により患者・家族が穏かな在宅生活が可能になったことは素晴らしいことです。そのためには医療、看護、介護サービスが一体となって利用者の不安を軽くして、自信を持って生活が送れるように援助しなけれらならないと思います。










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Posted by 2人3脚 at 09:07Comments(0)医学講座

2010年02月10日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第2章 高度な在宅医療と在宅ケア
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)



1.高度医療と在宅ケア



最近歩いていると、小型の酸素ボンベから酸素を吸入しながら買い物や散歩している慢性呼吸不全の患者さんの姿を見かけることが少なくありません。また、在宅で人工呼吸器や24時間カテーテルをつけながら療養している人も多くなりました。酸素吸入、腹膜透析、中心静脈栄養、人工呼吸、抗癌剤や鎮痛剤の持続注入など、かっては入院しなければ受けられないと考えられていた治療法が、在宅で受けられるようになったのです。




本誌の読者が訪問介護や訪問入浴など在宅サービスを提供している利用者の中でも、、上記の在宅医療以外に、経菅栄養や胃瘻(いろう)、痰の吸入、膀胱留置カテーテル、導尿、気管切開など様々な医療的ケアを受けている人たちが少なくないと思われます。



このような高度な在宅医療が拡大している背景を考えますと、①.それぞれの治療法が患者・家族が実現を望んできた切実な治療法であったこと、②.ノーマライゼーションの考え方が社会的に浸透してきて、重度な障害をもっていても在宅生活を送ることが自然であると理解されてきたこと、③.酸素濃縮機や液体酸素吸入装置、小型の人工呼吸器など、安全性が高く、使いやすい機器や薬剤などが開発されたこと、④.訪問診療・訪問看護など在宅医療が充実するにしたがって、患者・家族の医療的不安が軽くなってきたこと、などの理由をあげることができるでしょう。



「治療は患者・家族と医療スタッフとの共同作業である」と考えて、私は、川崎幸病院で、血友病の自己注射治療(1977年から)、家庭透析(1978年から)、在宅酸素療法(1979年から)、CAPD(持続携行式腹膜透析、1982年から)、在宅人工呼吸療法(1986年)などの自己管理治療の試みを行ってきました。



医療機器を扱うことや中心静脈栄養法など専門家のみ認められている医療的ケアを患者や家族が行うことに不安を感じるかもしれませんが、どの人たちも見事に行ってきました。自分にとって必要な治療という認識と、いつでも相談でき援助を受けられる医療スタッフがいるという安心感があれば、誰でも素晴らしい介護者・治療者になれるものだと私は思っています。



どのような疾患、状態であっても、その人にとって望ましい療養生活が送れるような条件作りをすることが、医療や福祉の目的であり義務です。高度医療を受けながら、在宅療養を続けていく人たちは今後ますます増えていくと思います。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の痰の吸引は例外として、現在のところ、ホームヘルパーが医療的ケアに関わることは行政的に認められていません。しかし、医療的ケアを受けている利用者に密接に接触するホームヘルパーや入浴サービス担当者が、医療的ケアに関する基本的な知識を持つことは非常に重要です。



注:次のような通達が厚生労働省から出されました。


2003.6.9「看護師によるALS患者の在宅療養支援に関する分析会」報告書(厚生労働省



「家族以外のものによる痰の吸引の実施についても、一定の条件の下では、当面の処置として行うこともやむを得ないものと考えられる」
「今回の措置は、在宅ALS患者の療養環境の現状にかんがみ、当面やむを得ない処置として実施するものであって、ホームヘルパー用務として位置づけられるものではない。」と限定されているが、ホームヘルパーによる痰の吸引が、厚生労働省管轄の委員会で公式に言及されたことは注目すべきであろう。




2005.3.24通達[在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に関する痰の吸引の取り扱いについて


「ALS患者に対する痰の吸引を容認する場合と同様の条件の下で、家族以外のものが痰の吸引を実施することは、当面やむを得ない措置として容認される」


2005.7月通産

爪きり、湿布の貼り付け、軟膏塗布、座薬の挿入、薬の内服の介助、浣腸、検温、血圧測定などが原則的に医療行為から外された。容態が安定し、医師の経過観察が不要な患者であれば、目薬の点眼や軟膏の塗布、あらかじめ分包されている薬の服用、鼻の穴から薬剤を吸入するネブライザーの介助も認められた。軽い切り傷や擦り傷、怪我などのガーゼ交換ができるようになった。












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Posted by 2人3脚 at 13:46Comments(0)医学講座

2010年02月03日

杉山ドクターの優しい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


17.リハビリテーション10か条   
                知って得する身近な病気や症状  その4                                                          


リハビリテーション10か条
        川崎幸クリニック院長
                     杉山孝博



1.同じ生きるなら前向きに
2.生活習慣整えて 
3.楽しみながらリハビリを
4.仲間同士で励まして
5.根気と粘りでがんばろう
6.大切にするとは使うこと
7.寝込まぬためには歩くこと
8.日々の動きがリハビリだ
9.残った力をフル稼働
10.創意と工夫は頭のこやし



たとえ疾病や障害を持っていても、その人が自らの能力を発揮しながら尊厳ある生活を送るためには、生活しやすい環境づくりとともに、リハビリテーションの努力は欠かせません。在宅では、発症間もない急性期に行なわれる急性期リハビリではなくて、生活の中で行なう「生活リハビリ」が中心となります。そこで今回はリハビリがスムーズに行なわれるように、わかりやすい「リハビリテーション10か条」を紹介します。




1.同じ生きるなら前向きに

「リハビリ意欲は7割」と思っています。疾病や障害を持って気が落ち込んでいる人に対して、周囲のものは、「事故が起こってはいけない」「疲れすぎないように」などと行動を抑制しがちです。前向きの気持ちになるようにはげまして、その努力を評価することが大切です。




2.生活習慣ととのえて

生活にはリズムが必要です。仕事や社会活動、買い物など日常の決まった行動がなくなると、リズムが乱れます。生活習慣をととのえてリズムのある生活をしましょう。



3.楽しみながらリハビリを

誰でも好きなことには関心をもちます。映画もパチンコも植木の手入れも良いリハビリになります。周囲のものは、本人の好きなこと、やりたいことを上手に聞き出し、それが実現できるように持っていきたいものです。



4.仲間同士で励まして

同じ障害を持つ仲間がいることは励みになります。医療機関、福祉センターや保健所などで地域リハビリ教室などに参加したり、いつも行く公園で新しい仲間を作るのも楽しいことです。



5.根気と粘りでがんばろう

気落ちしたり挫折したりすることもありますが、自分自身のことですから、常に前向きの気持ちを持ち、根気強く続けましょう


6.大切にすることは使うこと

身体を使わないでじっとしていることは良くないことです。本当に大切にすると言うことは、実は身体をできる限り動かして機能を使うことです。



7.寝込まぬためには歩くこと

「寝たきりになるのは簡単です。数日間、ひたすら寝ていると歩けなくなります。」と、私は患者さんに話しています。手足のマッサージより、体重をかけた歩行のほうが筋力増強や関節拘縮予防になります。散歩を進めるコツとして、「疲れていても天候が悪くても会社には通勤しますよね。散歩は、『健康を保つための会社』に通勤することだと思って、出かけてみましょう」と誘ってみてはどうでしょうか。


8.日々の動きがリハビリだ

筋力訓練だけがリハビリと考えないで、トイレに行くや洗濯物をたたむといった日常生活動作のすべてがリハビリです。トイレの回数が多いときは「訓練の機会が増えた」と考えれば、面倒ではなくなるでしょう。


9.残った力をフル稼働

できないことを嘆くのではなく、できることを評価してそれを伸ばしていくことがリハビリの最も基本的なことです、。疾病や障害の程度によって、さまざまな福祉用具を有効に使いましょう。



10.創意と工夫は頭のこやし

創意や工夫をすると、リハビリを楽しく前向きな気持ちで取り組めるようになります。人から言われたことだけをするのではなく、自分で考え行動するようにしましょう。









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2010年01月27日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


16.味覚の変化と夜間頻尿
 知って得する身近な病気や症状  その3



〇夜間頻尿



一般に、年をとると夜間のトイレの回数が増えるといわれています。慢性疾患をもつ要介護者の場合、夜間頻尿は顕著になります。「昼間は回数が少ないのに、夜になると3回も4回もトイレで起こされます。毎晩こんな状態では、私が倒れてしまいます」という声がよく聞かれます。実際一晩4回も起こされると睡眠不足になるでしょうし、「夜に限って何回も起こされるのは嫌がらせではないか」との思いが介護者をますます疲労させます。



「水分のとる量が多いからではないか」と考えて水分の摂取を控えても、「睡眠が浅いから何度もトイレに行くのではないか」と考えて睡眠薬を投与しても、夜間のトイレ回数は変わりません。




加齢に伴う心機能、肺機能、腎機能などの低下により、昼間は活動している筋肉や内臓に優先的に血液が送られ、腎臓には十分な量の血液が送られないため尿があまり作られないのに対し、夜間は腎臓に十分な血液が送られるので尿が作られます。これが高齢者に夜間頻尿が多い理由です。夜間に尿が作られて、一日の正常な尿量となるのです。



もし夜間に尿が作れないとすると、腎不全となり大変な状態になるのです。「夜間に尿が作られるのはありがたいこと」と考えると、介護者の気持も少し楽になるのではないでしょうか。心臓や呼吸器などの疾患を持つ人、脳卒中で寝たきりの人なども夜間頻尿が見られますが、同じ理由によると考えてよいでしょう。



また、糖尿病、前立腺肥大、膀胱炎、神経因性膀胱などの疾患でも夜間頻尿が起こることがありますから、正しい診断が必要となります。夜間の尿の回数があまり近い場合には、昼間に尿が出るようにするための利尿剤や強心剤を処方する場合があります。睡眠薬はふらつきによる事故や排尿の失敗などにつながるため、お勧めできません。











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Posted by 2人3脚 at 12:50Comments(0)医学講座

2010年01月26日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


16.味覚の変化と夜間頻尿
 知って得する身近な病気や症状  その3




〇年齢と共に変わる味覚の変化


年をとるとともに生理的な機能は変化していきます。味覚についても、一般的に高齢者は塩味に著しく鈍く、甘味、酸味も衰えるが、苦味は若い人と変わらない言われます。「おばあちゃんの作った料理は塩辛くて食べれない」「若い者が作るものは、薄味でまずい」という声があがる原因はここにあります。




高齢者は塩味の味覚が低下していますので、塩辛い味付けでちょうどよいと感じます。そのため、若い人はしょっぱすぎると感じます。逆に、若い人にとってちょうど良い味付けは、、高齢者には薄味で物足りなく感じ、醤油やソースをかけ足すことになります。「私がせっかく味見してつくったのに、あのように味をかえてしまうなんて、嫌な人」となりかねません。



高齢者の味覚の変化の特徴を知っていれば、このような心の行き違いはなくなるでしょう。互いの本当の理解のためには、老年期の心身の変化に関する正しい知識が欠かせません。



この難題も調理の仕方などによって解決することができます。例えば、煮魚では塩分が多くなりますが、塩焼きにすると、少量の塩分でも、塩の小片が舌に触れた瞬間塩辛いと感じ、満足が得られるものです。そのほか、調味料をうまく使うことによっても塩分を抑えることができます。










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Posted by 2人3脚 at 08:00Comments(0)医学講座

2010年01月23日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


15.筋肉の牽引痛と、胸痛
 
知って得する身近な病気や症状  その2


○胸痛

強い咳をした後や、体をねじった後、あるいは胸を抱きかかえられた後などに、胸がずきんと痛くなることがあります。また、原因が思いあたらなくても、呼吸をしようとすると胸が痛くて呼吸ができないような苦しさが出る場合があります。起き上がろうとしたときや物を取るため体を曲げたときに胸痛の症状が現れることも珍しくありません。




左胸に症状を感じたときには、狭心症や心筋梗塞ではないかと疑って、心電図、胸部エックス検査、心カテーテル検査などの検査が行われる場合もあります。しかし、結果は異常なし、と説明されても症状が治まりません。また、骨折ではないかと疑って整形外科で肋骨などのエックス線検査を受けても、骨折はありませんと言われます。



このような患者さんの場合、肋骨を一本一本押してみますとはっきりした痛みを訴える場合が少なくありません。肋骨は、胸椎と関節を作り、胸骨とも動きの悪い関節を作っています。第6肋骨以下では肋骨どうしが肋軟骨によりつながっています。ところが肋骨と胸骨の関節は力を受けると変形して、ある程度の力が加わると小さながひびが入ってしまいます。



また、肋軟骨は高齢になると石灰化してもろくなり、ひびが入りやすくなりなります。骨の表面には痛覚が分布していますから、ひびが入ったところに力が加わると、痛みが発生するのです。



上記の症状が出ていて肋骨に圧痛が認められる場合には肋骨の亀裂骨折と診断して、バストバンドなどで肋骨の動きを固定すると、症状が見事に軽くなります。約3週間固定すると症状がなくなります。もちろん、狭心症、心筋梗塞、解離性大動脈瘤破裂、自然気胸、悪性腫瘍の骨転移等の可能性がありますから、医療的な診断は必要です。











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2010年01月22日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


15.筋肉の牽引痛と、胸痛
 
知って得する身近な病気や症状  その2




下肢の筋肉が突然突っ張って激痛に襲われるー硬くなった筋肉を伸ばそうとしても、マッサージしてほぐそうとしても、当分痛みが止まらないーこのような筋肉の牽引痛は高齢者では多くの人が経験します。心不全・腎機能障害などのため利尿剤を服用している人、肝臓疾患をもった人などは、特に牽引痛を経験します。



私たちが体を動かすとき、関節を曲げる屈筋と、伸ばす伸筋が収縮・伸展を見事に強調するようになっているので、スムーズな運動が可能となり、痛みも発生しません。ところが何らかの原因で筋肉が勝手に収縮すると、関節が固定して筋肉痛が発生するのです。




勝手に筋収縮するのは、脳卒中や脊髄損傷など中枢神経系の問題ではなく、おそらく筋肉自身の問題によって起こるものと考えられます。筋肉の収縮には、カルシウムイオンなどの様々な微量元素(*)がかかわっていることが知られています。



私は、微量元素の不足が筋肉を収縮させるのだろうと考えて、牽引痛の患者さんに市販の野菜ジュースを飲むように勧めました。その結果、筋肉牽引痛は劇的に改善しました。肝臓がミネラルの貯蔵庫であること、利尿剤の服用によりカリウムやナトリウムだけでなく微量元素も同時に排泄されることなどを考えれば、牽引痛の起こりやすい状態は(微量元素が影響していることは)十分納得できます。



野菜ジュースは容易にまた安価に手に入りやすいので、是非勧めてみてください。ただし、腎不全のためにカリウム摂取制限のある人には禁忌です。
*微量元素・体内に微量に存在するミネラルのことで、亜鉛、銅、ヨウ素、セレンなど20種類あります。





私もたまに足が夜中つることがあります。そんなときの対処方法を教えます。
つっている足首を時計と反対方向にぐるぐると廻して下さい。それでもダメながら足首の関節を持ち時計と反対方向に廻すとスート痛みがとれ、つっている足が楽になりますよ。一度試してみてください!










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2010年01月19日

杉山ドクターーのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


14. 下痢  
知って得する身近な病気や症状  その1




今回より、日常生活や介護現場でよく遭遇する病気や症状について、その基本的な知識と対応法を数回にわたってシリーズで取り上げていきます。



食べ物が体に取り入れられると、唾液、胃液、膵液、胆汁などの液体が加わって消化吸収が行なわれた後、ドロドロした状態で大腸に送られます。大腸で7~8割の水分が吸収された後、通常便として排泄されます。



下痢とは、排便中の水分量が異常に増加した状態をいいます。便に含まれる水分の量が60~80%であれば正常便、80から90%で軟便、90%以上であると水様便となり、この水様便が一般に下痢と呼ばれています。



下痢は、不快感、腹痛、全身倦怠感を伴い、排便の苦痛や排便回数が多くなるため辛い症状ですが、一方では、腸管内で病気を起こしている細菌や有害物質を強制的にすばやく体から排泄する仕組みであると考えることもできます。また、「下痢をしているときは、消化も吸収もできない状態であるので、食べたり飲んだりしてはいけないですよ」というシグナルととらえることもできます。




下痢に関する分類は教科書的には発症機序(病気の発症する仕組み)により細かく分類されていますが、ここでは身近な病気・症状として、急性期と慢性期に分けて考えて見ます。


(1)急性期の下痢     



風邪が流行する季節には下痢の患者が増えます。急に腹痛、水様下痢、全身倦怠、微熱などが出て、下痢止めの薬や消化の良い食べ物をとっても、下痢が止まらなくなります。下痢の原因はウイルス性腸炎がほとんどです。サルモネラや腸炎ビブリオといった細菌性腸炎と比べて全身状態が悪くならないのが特徴です。



しかし、食べたり飲んだりすると、約30分後にはきりきりとした腹痛と水様下痢が繰り返されます。薬を飲んでもそれが刺激になって下痢をします。つまり、食べた回数、飲んだ回数の合計が下痢の回数となります。下痢のときの飲食は苦痛を増すだけです。結局消化も吸収もされないので、絶食するのが最も良い治療法です。水分を補うために500ml程度の点滴をすると体がずいぶん楽になります。



24時間絶飲食を守ると下痢はほとんどとまります。下痢がとまってから、水分、粥、あるいはヨーグルト等を少量から摂るようにします。胃のもたれ感、腹痛、軟便が出るようであれば、もう少し絶食を続けます。最終的には空腹間が強くなって普通に食べられるようになります。下痢をしたため体重が数キログラム減少しても、必ず体重が元に戻りますから心配はありません。



(2)慢性期の下痢


精神的なストレスなどで大腸の蠕動が活発になります。便が大腸内を急速に移動し、水分の吸収が間にあわないまま、便が肛門に達するため下痢になります。これが過敏性腸症候群で、体重減少などがないこと、下痢と便秘を交互に繰り返すことが特徴です。



慢性下痢では、大腸がんや潰瘍性大腸炎など重大な疾患が原因となっている場合があるので注意が必要です。粘液や血液が混じった便,黒色、(タール)便、臭いの強い便等の場合は、特に詳しい検査をしなければなりません。










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2010年01月15日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


13.喘息性気管支炎

「風邪をひいて寝る前と明け方に咳がひどく眠れません」「横になると咳が出て苦しくなるので、コタツにもたれながら、夜を過ごしています」「咳が続くとのどがゼーゼー鳴って、呼吸が苦しくなります」このような症状を訴えて内科の外来を受診する患者さんが絶えません。



このような場合は、私は、喘息性気管支炎と診断して治療を開始します。喘息のようなアレルギー体質が背景になって、風邪によるのどの炎症が悪循環を形成して、ひどい咳の発作を誘発するからです。



初めは、のどの違和感・だるさ・微熱などの軽い風邪の症状であっても、その日の夜になると、咳が強く出るようになります。咳をする→のどが傷む→さらに咳が強くなる→のどの痛みがさらに強くなる、のようにたちまち悪循環を形成して、特に胃が飛び出るのではないかというほど強い咳が出るようになって、胸痛や腹痛を伴うようになります。また、喘鳴(のどがゼーゼー鳴ること)や呼吸困難を伴うことがしばしばです。



布団に入って横になると咳がひどくなり、起き上がると軽くなります。明け方になると強い咳のために目が覚めて、強い咳がしばらく続きます。一般的に昼間は咳が軽くなります。その理由は自律神経(交感神経)とホルモンの作用により、活動的な昼間は、気管支が拡張されて空気の通りが良くなり、夜は逆に副交感神経の作用のため気管支が狭くなるからです。



このような状態の人が、普通の風邪薬を飲むとかえって、痰が粘っこくなり苦しみが増すことがあります。多くの風邪薬に含まれている抗ヒスタミン剤が気管支の粘液の分泌を抑えてしまうからです。咳・のどの痛みの悪循環を断ち切るためしっかりした咳止めを使うこと、気管支拡張剤を使って空気の通りをよくすること、感染に対して抗生物質を使うこと、痰を切れやすくする去痰剤使うことが、治療のコツです。呼吸困難などが強い場合には、気管支拡張剤、抗生物質、副腎皮質ホルモンの入った点滴をする必要があります。




このような状態を経験した人は、「次に風邪を引いたら同じ状態になるのだ。普通の風邪ではないの」と思って、咳やのどの痛みが出てきたら、すばやく、咳止めと気管支拡張剤を服用して、悪循環に陥らないようにすることが大切です。ですから喘息気管支炎が治っても薬をいつも手元に持っていて、薬の残りが少なくなったら、処方してもらうため受診すべきです。




処方例
1)リンサンコデイン100倍液6.0g   3×朝昼夕
2)スロービット100mg 2カプセル 2×朝、眠前
3)ムコソルバン   3錠       3×朝昼夕
4)ペンクッド250mg  3錠     3×朝昼夕



私は、患者さんに、「体質を改善することは難しいことですが、発作を予防し軽くすることは、あなたの心がけ次第です」と話しています。










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Posted by 2人3脚 at 15:30Comments(0)医学講座

2010年01月13日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


12.食欲

「食欲=生命力」。在宅医療に取り組んで、食欲こそ生命力の現われだということをつくづく感じます。以前私が訪問診療していたGさんは、食事が取れなくなって朦朧状態になりながらも、自宅で点滴を数日間実施。そうすると食べられるようになって再び元気になりました。そういった経過を、約4年間で5回ほど繰り返し、「Gさんは不死鳥のようだね」と訪問看護師と話していた方でした。



熱が出ても食欲があればあまり心配することはありませんし、逆に、点滴などの処置を続けていても、食欲が改善しないと、その後の経過がよくないものです。




高齢者の疾病では、典型的な症状がでにくく、一旦発症すると急変しやすいことが特徴です。心筋梗塞になっても胸痛すら訴えないことや、肺炎でも熱や咳、痰が出ない場合が少なくありません。また、介護者が気づかないで突然、危篤状態に陥ることもしばしば経験します。





では、典型的な症状が出ないとしたら、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

「第1は食欲。何か大きな病気があるときは食欲が先ず落ちます。第2に表情や動作などが普段と変わっているかという点です。いつもと比べて元気がなくなり動作が鈍くなったら要注意です。第3は、脈拍、呼吸、体温などのいわゆるバイタルサインです。」と私は答えることにしています。そのくらい食欲は生命の指標になると、私は考えています。



施設ケアと比べて在宅ケアのよい点は、その人が好む食べ物をその人のペースで食べられることです。バランスの良い献立が用意されていても食べられなければ意味がないし、逆に偏りがあったり、たとえ同じものが毎日つづいていても食べられるのであればそちらのほうがよいのです。



衰弱が進行すると次第に食欲が低下し、飲み込むことが困難になります。飲み込むのを確認してから次の食べ物を口に入れる、むせやすくなったらとろみをつけるなどの工夫が必要になってきます。市販のプリンやヨーグルト、ゼリーなどを常に用意しておいて、適時食べさせることにより、元気になったケースが少なくありません。



また、痛みのために食欲が落ちて寝たきりになった末期がんの患者さんにモルヒネ(麻薬)による痛みのコントロールをしたところ、食欲が改善して意欲が出てきて、外出できるまでに回復した例を何例も経験しています。まさに、「食欲=生命力、生命力=食欲」です。



また、口の中の衛生状態も食欲と大いに関係します。近年、口腔ケアは高齢者の健康に関係するとして見直されています。訪問歯科診療や、訪問歯科衛生指導などは、健康保険や介護保険で認められていますので、利用すると良いでしょう。口から食べられるようになると表情が生き生きしてくるものです。このように食欲のチェックが在宅ケアでは欠かせません。









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Posted by 2人3脚 at 14:06Comments(0)医学講座

2010年01月09日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

11.薬の話

高齢者のケアや病気の治療については、薬を除いて考えることはできません。多くの生命を奪ってきた肺炎や結核が抗生物質によって治療できるようになり、麻酔薬の登場により高齢者の手術が安全に行なわれるようになりました。しかし、その一方で、血液製剤によるエイズ感染といった薬害は、薬が必ずしも安全なものばかりではないということを示しています。



薬というものは、長い歴史の中で人類が選択してきた食べ物とは本質的に違い、体に入るとどのような作用を示すか分からない性質を持つ「異物」です。多くの薬は人工的に合成されたものです。漢方薬に使われる生薬にしても、治療として使われるほど高濃度で体内に取り入れられたことはなかったものです。



ですから、薬を上手に使って病気を治すのが治療とは言うものの、期待する効果の「主作用」とともに、「副作用」も起こり得るものだという認識が必要です。




膠原病や湿疹、重い喘息発作などの治療では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)は非常に有効ですが、感染症や糖尿病の誘発・増悪、消化性潰瘍、骨租しょう症、高血圧症などの重大な副作用があります。鎮痛消炎剤による消化性潰瘍は決して少なくありません。痛み止めがよく効く人ほど副作用も出やすい印象があります。



認知症の相談に関わっていますと、高齢者には実にたくさんの薬が処方されているのに驚かされます。ご本人やご家族が、薬の効果に期待する一方、不安を感じる人も少なくありません。




高齢者は若い人と比べて、薬の副作用が出やすく深刻な問題につながりやすい傾向があります。その理由をあげると、①.肝臓や腎臓の働きが低下してくるため、薬の代謝・排泄がスムーズにいかない②.複数の病気や症状を持つため多種類の薬が処方されやすい。③.高齢者は若年者と比較して個人差が大きいため適量を決めるのが難しい。④.症状が出現しにくく、副作用による症状と本来の症状とが区別しにくい。⑤.服用の仕方や注意を守りにくい、などあげることができるでしょう。



「軽い睡眠薬を飲んだら食欲が落ち、酔っぱらったようにふらふらした」「吐き気を止め食欲を刺激する薬で、手が震えるようになった」「強心剤を指示通りのみはじめたら動悸や不整脈が出現した」などの例は良くあります。



★心がけておきたいこと


しかし、薬の副作用ばかり心配して大事な薬の服薬を中止してしまうのも困りものです。特に、心臓の薬や抗生物質、副腎皮質ホルモンなどをやめると致命的になる場合があります。ヘルパーは医療行為が禁止されているので、薬についての知識はさほど必要ないという人もいると思いますが、訪問している間に副作用などで身体状況が変ることもあります。



ですから、ヘルパーとして最低限、①.薬の作用を医師や看護師に聞く②.病気や症状について正しい知識を持つ③.家族が判断して管理する④.薬を飲んで変った症状が出たり、効果がなければ、医師や看護師に伝える⑤.漢方薬や民間薬といっても必ずしも安全ではなく、薬は体にとって原則的に異物であり、副作用があるものだということを理解しておく、といったことを心がけておきたいものです。









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Posted by 2人3脚 at 09:22Comments(2)医学講座

2010年01月03日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

10.便秘

腹痛・腰痛などと並んで、便秘はお年寄りの訴える最もありふれた症状の1つです。食物や空気を取り入れて、便や呼気として排出することは生きるための最も基本的な行為です。排便が傷害されると腸閉塞となって生死にかかわります。



私はよく、「便秘で問題となるのは、腹痛や吐き気などのつらい症状がある場合や、食欲が落ちて体重が減っていく場合などであって、苦痛もなく食欲もあるならば、心配することはありません。ただし、大腸の病気が増えてきましたので、最近になって症状が強くなっているようでしたら、大腸の検査が一度は必要です」と、患者さんに答えるようにしています。



ここで排便のメカニズムを考えて見ましょう。大便が直腸にたまって直腸の粘膜を押し広げると、骨盤にある神経中枢から直腸に分布している知覚神経が興奮して、脳に信号を送って便意を発生させます。それをきっかけに、一連の反射が起こります。大腸とくにS状結腸のぜん動(*)が活発となって便を直腸に送り、腹筋や横隔膜などが緊張して(力む)腹圧を上げて便を押し出そうとし、肛門を閉じている筋肉(肛門括約筋)がゆるみ、便が対外に押し出されます。このような一連の動きが協調し合って排便がおこなわれるのです。



便秘を防ぐためには、次のような注意が必要です

①.排便習慣:直腸に便がたまった状態が続くと、知覚神経の感受性が落ちて興奮しなくなり、便意が起こりにくくなります。直腸に便をためすぎないためには、毎日決まった時刻に排便する習慣が大切です。家庭にいていつでもトイレに行けると思って習慣づけない主婦が便秘しやすいのです。



②.運動:毎日便通のあった人でも、骨折などで臥床状態になりますと便秘しやすくなります。身体を動かす事は大腸のぜん動を促し、腹筋をきたえます。臥床でも出来る範囲で身体を動かすことが必要となるのです。



③.食べ物:便通をよくするには繊維物のあるものを多く摂るべきです。昔ながらの日本食、特に根菜類を食べることが、便秘だけでなく、最近増加している 大腸がんの予防にも良いのです。




上記の3つの注意を守った上で、それでも便秘が続くようであれば、薬などによる治療が必要なときがあります。しかし、毎日でないからといって薬を使う必要はありません。先に述べたような便秘による困った症状が出なければ、数日便が出なくても薬を使わなくてよいのです。ただし、過去に開腹手術を受けた既往歴がある方などは腸が癒着しているなど腸閉塞を起こしやすい人は毎日出すようにすべきです。



ところで便秘は、大腸や直腸の病変、糖尿病、など全身に関わる病気の1つとして現れることがあります。精神安定剤や、咳止めの薬などの副作用として便秘が出現することがあります。定期的な検診によって、貧血や便の潜血反応陽性などの異常が明らかになり、大腸がんが発見される例は希ではありません。このような可能性を考えて、薬を飲んでよしとするのではなく、早い時期に、一度は診察を受けるようにしたいものです。

*消化管に見られる運動の1つで腸管の一部が収縮し、その運動によって肛門側に腸内容を移送する働きを持つ。









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Posted by 2人3脚 at 16:17Comments(2)医学講座

2009年12月31日

杉山Drのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                  (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

9.MRSA

MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は多数の抗生物質に耐性をもった細菌で、化膿性皮膚疾患をはじめ多様な感染を引き起こすため、病院内感染や、施設内感染の原因菌として近年大きく取り上げられてきました。



黄色ブドウ球菌は、化膿性皮膚疾患、中耳炎、肺炎、食中毒・腸炎、敗血症、尿路感染症などの広範な感染を引き起こす代表的な化膿性菌です。1940年代以降、ペニシリンG、クロマイ、テトラサイクリンなどの抗生物質の登場により、黄色ブドウ球菌に対して目覚しい効果がえられるようになりましたが、それらの抗生物質に耐性をもつブドウ球菌も次々と出現しました。1980年なって多種類の抗生物質に耐性をもったMRSAが急速に増加したのです。





MRSAの検出例としては①.鼻腔や咽頭に定着しているが、臨床症状は示さない例(キャリー:保菌していても発生していないこと)、②.気管、尿路、褥創表面に定着し、慢性の軽度の炎症を持続するもの、③.深部膿瘍を形成し敗血症を繰り返したり、手術後の致死的な感染症に発展するもの、などがあります。介護サービスで関わるのは、①と②の状態でしょう。どのような病態をとるかは感染部位やその人の感染を防御する力によって決まってきます。



一般的に健康な保菌者が重篤な感染症に陥った例はありません。MRSAに対しては、バンコマイシンをはじめ、いくつかの種類の抗菌剤が有効ですから、体力のよほど低下したものでなければ、また治療の開始が遅れなければ治療は可能です。




感染予防法としては、まず手洗いです。通常は流水と石鹸による手洗いのみで十分です。流水による手洗いが不可能な場合に、消毒剤による手指消毒を行います。消毒剤としては、短時間殺菌効果が強い消毒用エタノールを基礎とした消毒剤の使用が基本となります。ウエルパス(0.2%塩化ベンザルコニュウム+消毒用エタノール+皮膚保護剤)などが市販されています。



排泄物、その他の取り扱いとしては、痰や膿などが付着したものは、ビニール袋などに密閉して捨て、洗濯物ものは、熱湯などで一度殺菌してから、洗濯するとよいでしょう。分泌物が多い場合には、使い捨てのシーツ等を使用します。



時には手袋などを使用しますが、膿や痰等に直接接触しないように注意していれば、福祉サービスを利用しているMRSA保菌者に対しては、個室管理、ガウンテクニック、手袋着用は原則として不要です。



室内の清掃を確実に遂行することは、重要ですが、むやみに消毒剤を使うことは逆にその消毒薬に耐性をもつ細菌を作ることもあるので控えるべきです。最後にMRSAなど感染症保菌者であるという理由だけで、サービスを利用できない状況が現実にあります。



正しい知識をもち、過剰な対策を取ることなく困っている利用者の立場に立って必要なサービスを提供することが、私たちの使命であるとことを思い起こすことが必要です。



最後までブログを読んでいただき有難うございました。
来年もどうぞ宜しくお願いいたします。寅(とら)







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Posted by 2人3脚 at 12:02Comments(2)医学講座

2009年12月26日

杉山ドクターのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                  (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

8.疥癬(かいせん)



疥癬とは体調0.3ミリ程度の疥癬虫(ヒゼンダニ)にの寄生にによって生じる皮膚炎で、強いかゆみが特徴です。指の間、腕の内側、臍部の周り、陰部、わきの下などに湿疹のような発疹、疥癬トンネルと呼ばれる数ミリの細長い皮疹、掻き壊し、ひどい場合(ノルウエー疥癬と呼ぶ)には、皮膚が肥厚し細かくはがれて落ちる落屑(らくせつ)などの症状が見られます。



痒みのために夜間眠れなくなり、掻き壊して、食欲が低下して全身衰弱が進行します。高齢者の利用する施設や、病院に蔓延して、部屋やフロアが閉鎖になって大変な混乱を引き起こすことがしばしばあります。



小さな赤みのある境界不鮮明な発疹が湿疹と欲にているため、好ヒスタミン軟膏やステロイド軟膏が使われることがありますが、、一次的に痒みが軽くなっても、発疹が改善せずむしろ拡大します。特に高齢者、寝たきり老人、アルコール依存症、など全身状態の不良な人に、治りにくい発疹が見られる場合には、疥癬の可能性を考えることが必要です。



その場合、痒みのある他の利用者に接したことがあるか、ショートステイなどの施設サービスを利用したことがあるか、それらの施設で疥癬が問題になっているか、疥癬者などの周囲のものにも痒みの強い発疹が出ているかなどが参考になります。



診断は、強い痒み皮膚トンネルなど発疹の特徴、皮膚の削りくずからダニや虫卵の検出(顕微鏡で見つける)などにより行なわれます。早期診断して早期治療や感染の拡大を防がなければなりません。



治療方・対応法としては、まず、利用者に対して、疥癬の疑いまたは、診断の確定が、なされた場合、一般的には次のようなことを行ないます。


①.風呂に入ってよく体を洗います。ムトーハップ(六十ハップ)(硫黄浴)が有効です。硫黄かぶれを起こす人もいるので注意しましょう。
②.オイラックス軟膏が名度を全身にくまなくと付します。
③.シーツ、下着、衣服は毎日取り替えます。疥癬虫は熱に弱いので50度Cnoお湯に10分つけてから選択しうると良いでしょう。熱風乾燥も効果的です。布団やマットレスは日光消毒をこまめにしましょう。シーツ交換時、埃をたてないようにするためできるだけベッドクリーナーを使用します。




④.居室は毎日丁寧に電気掃除機をかけます。掃除機のパックは毎日取り替えましょう。スミチオン乳剤1000倍液などを散布して部屋の消毒を行なうことも必要な場合があります。
⑤.同室の利用者、家族には過敏な不安を与えないように、配慮した上で、事前に説明し、感染の症候が出ているかどうか注意して観察します。
⑥.スタッフに対して疥癬の利用者と接する物は、予防衣を着用する、強い痒み、発疹などの症候に注意。手洗い(石鹸)施行、嘱託医、看護師、寮母、施設長との間で連絡を密にするなどの注意を促します。




近許可された、内服薬 イベルメクチン(商品名ストロメクトール)1回経口投与は有効ですので皮膚科に受診して治療を受けるべきでしょう。いずれにしても早期診断を受け、早期治療や感染の拡大を防ぐことが大切です。








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Posted by 2人3脚 at 10:22Comments(0)医学講座

2009年12月21日

杉山Drのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                  (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

7.食中毒


年間3~4万人かかっているといわれている食中毒は、細菌などの病原体や有害物質で汚染された飲食物を摂取することによって引き起こされます。嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの胃腸症状が主な症状ですが、原因によっては、しびれや麻痺などの神経症状を伴うこともあります。



高齢者や体力の低下している人は、食中毒にかかりやすく、また、特に重症化しやすいので、特に注意しなければなりません。予防するには、食材の鮮度、食品の低温冷蔵(ただし冷蔵庫を過信しないこと)、調理人の手指の消毒(手洗い励行、負傷した手では調理しないこと)、包丁、まな板、などの調理器具の洗浄・消毒(熱湯をかける、乾燥して日光にさらす、好塩性の腸炎ビブリオに対しては真水でよく洗う)、加熱調理、調理後速やかに食べることなどの心がけが必要です。



直中毒の原因は、細菌やウイルスが最も多く、きのこやふぐなど自然毒もあります。原因菌の種類では、腸炎ビブリオが最も多く、サルモネラ菌、病原大腸菌ブドウ球菌と続きます。

①.腸炎ビブリオ菌

魚介類食べてから10~24時間後に冒頭のような胃腸症状が出現したら、腸炎ビブリオによる食中毒が考えられます。。予防には食材の水洗いを十分にして、よく火を通すことです。夏季には刺身などの生食を避けることも予防の1つです。





②.サルモネラ菌

サルモネラ菌による食中毒では、ひどい下痢や嘔吐、高熱などの激しい症状を伴い、鶏卵、うずら卵、あるいは肉類等が感染源となります。卵などの加工食品がサルモネラ菌に汚染されて、全国的な規模の食中毒を発生させることがあります。





③.病原大腸菌

大腸菌は人の腸管に常在していますが、ベロ毒素などを出して病原性を示すのが病原大腸菌です。野菜サラダや井戸水などが汚染されて広がることがあります。腸内出血性大腸菌の場合は、強い腹痛と血便が特徴で、尿毒症などを併発して重症化することもあります。





④.ブドウ球菌

手指、特に化膿した指によってブドウ球菌に汚染された食品を食べると、数時間後には吐き気、嘔吐、下痢などが出現します。この菌の毒素は耐熱性があり、普通の加熱調理では破壊されません」。細菌が産生した毒素による食中毒では、症状の発現が早いのが特徴です。





細菌感染で起こる食中毒では、一般的に重症化せずに数日程度で改善することが多いものです。
しかし、嘔吐、下痢、腹痛、脱水などの症状が激しく、血便や神経症状などを伴う場合には、速やかな治療が必要です。医療にかかる時には原因となる食品を「いつ」「どこで」「誰と食べて」「同じ症状を示している人がいるかどうか」を説明できるように心がけたいものです。




腸管出血性病原大腸菌O-157 による食中毒は死亡例も出て一時期世間を大きく騒がせましたが、現在では余り話題になっていません。しかし、「災害は忘れた頃にやってくる 」といいます。健康を保つために取り入れる食品が、かえって健康障害を起こすという矛盾をなくすために、日ごろから食品の摂取と、その取り扱いに用心することが大切です。







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Posted by 2人3脚 at 09:00Comments(2)医学講座

2009年12月18日

杉山Drのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                  (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)


6.花粉症について



「そろそろ季節になりましたね。早めに治療を始めましょう。」「頭が重くてボートするし体もだるくなりま巣。この状態が3ヶ月間も続くかと思うと嫌になります」「私はゴールデンウイークが待ち遠しいです。レジャーへ行くためではなく、症状がすっかり取れるからです。このような会話が診察室で交わされる場合、スギ花粉症のことと主って間違いありません。はじめは毎週1~2回、その後つき1回程度の頻度で数年間と、長期にわたって治療を続けなければなりません。



花粉症ではクシャミをしたり鼻をかんだりすると粘膜がただれやすくなり、粘膜がただれると花粉をより吸収されやすくなるため、さらに症状が強くなる、という悪循環を断ち切ることが重要です。そのためにはまず、マスクや防御眼鏡をつける、衣類や布団など付着した花粉を除去するなどの予防、早めに治療を開始して中断しないことが重要です。
クシャミ、鼻水、鼻づまり、さらに目のかゆみや涙などが花粉症の典型的な症状です。敏感な患者さんが1月終わりごろから症状が出始めて、5月初旬、ちょうどゴールデンウイークの終わりに症状が消えます。



花粉に対するアレルギー反応によって鼻や目などの粘膜が炎症を起こし、腫れて浸出液が出るためつらい症状が出るのです。スギ花粉症が代表的ですが,ヒノキ、ブタクサ、カモガヤなどが原因となる場合があります。




診断としては症状、発症の時期、持続性、アレルギー体質の有無などを考慮しながら、アレルギー反応の強さや、原因物質確定のための検査を進めていきます。原因物質の種類と度合いをしらべるためには、皮膚テスト(スクラッチテストや皮内反応)や、血液中の抗体を調べる検査gああ理ます。後者は血液検査だけで沢山の種類の物質について反応の強さの程度が分かるので、よく行なわれています。





花粉症の治療は、「予防的治療」「対象療法」「減感作療法」があります花粉シーズンの少し前からするのが、粘膜の感受性を抑える薬を使うことにより、花粉が粘膜に付着しても強いアレルギー反応が起こらないようにするのが予防的治療です。対症療法はクシャミ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を抑える薬により症状を軽減する治療法です。抗ヒスタミン剤、消炎剤、ステロイド剤、鎮咳剤などを内服、点鼻、点眼、噴霧などの方法で使いますが、これらの薬は眠気注意力低下、胃腸障害などの副作用が出ることあるので注意が必要です。





最近は副作用の少ない薬も出てきましたし、内服薬と点鼻薬などを組み合わせて使うとより効果的です。
減感作療法は、抗原(アレルゲン)エキスを、低濃度から徐々に高濃度に増やしながら注射することによって身体の反応性を抑えていく方法で、体質改善とも呼ばれています。はじめは毎週1~2回程度の頻度で数年間と、長期にわたって治療を続けなければなりません。



花粉症は、クシャミをしたり鼻をかんだりしていると粘膜がただれやすくなり」、粘膜がただれると花粉がより吸収されやすくなるため、さらに症状が強くなる、といった悪循環を断ち切ることが重要です。そのためにはマスク、防御眼鏡、をつける、衣類や布団など付着した花粉を除去するなどの予防、早めに治療を開始して中断しないことが重要です。




つまり、「予防と治療は早めに、そして根気強く」が花粉症対策のポイントです。







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Posted by 2人3脚 at 09:36Comments(0)医学講座

2009年12月15日

杉山Drの優しい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                   (認知所の人と家族の会 副代表 杉山孝博医師より)

5.肺炎ほか呼吸器の病気


高齢者の肺炎は、化学療法の発達した現在でも、体の予備能力や細菌に対する抵抗力の低下、心臓疾患などの合併症を伴っている場合が多いこと。寝たきり状態になりやすいことから、治りにくく致命的になりやすいのが特徴です。65歳以上の死因では、第4位を占めています。



さらに、自覚症状が少なく、咳、痰、発熱などの症状を訴えるものが半数程度で、だるさや食欲不振などが唯一の症状の場合が少なくないこと、不眠、幻覚、錯乱、不安などの精神症状を伴うことがあること、脱水、貧血、心不全などの全身状態を悪化させる要因を伴うこと、誤嚥性肺炎など寝たきり状態と関連の深い肺炎があること、などさまざまです。



つまり、典型的な症状でないため発見が遅くなり、合併症のため重症化しやすいのが特徴といえます。
痰や咳胸痛などがなくても、食欲・活気・表情・話し方・からだの動きなど全身状態が普段と比べて悪化しているようであれば、呼吸器感染症などを疑っ受診することが必要です。




高齢者の呼吸器疾患はこの他、慢性気管支炎、肺気腫、肺結核などがあります。これらの病気は、初めは咳や痰程度の症状でも、慢性化すると、呼吸機能が低下して日常生活が大きく障害されるなど、家に閉じこもる原因の1うにもなります。



慢性呼吸器感染症の背景として、体力が低下して、嚥下障害が起こりやすいことや、口腔衛生の不十分なことなどがあります



嚥下障害が進行すると、唾液や、食物を気管に吸い込み窒息や誤嚥性肺炎などを起こします。確実に飲み込んだのを確認して次に口に入れる。期間に吸い込みやすいピーナッツ大の食物を避ける。トロミをつけて飲み込みやすいようにする、頭の位置をあげるなどケア上の工夫が必要です。




歯周病やむし歯、あるいは口腔内の残りかすなどが感染源となり慢性気管支炎を引き起こすことがしばしばあります。適切な口腔衛生により痰が少なくなった例をよく経験します。在宅療養中であれば、訪問歯科診療、訪問歯科衛生指導など活用するとよいでしょう。口腔内の観察を怠らないようにすることが大切です。



肺の働きが慢性的に低下してきて、動脈血液中の酸素濃度が一定以下に下がると常に酸素を吸入しなければならなくなります。
この状態を慢性呼吸不全と呼びます。



かつては酸素吸入をするためだけに何年間も入院していた人がいましたが、1986年4月から社会保険診療報酬の改定で在宅酸素療法が認められて以来、自宅で酸素濃縮機や液体酸素ボンベを置いて酸素吸入しながら在宅生活を送ることが可能となりました。日本全国で約8万人の人がこの治療を受けています。90年4月からは、人工呼吸器を在宅で使うこともできるようになりました。





ホームヘルパーをとしても、様々な呼吸器疾患をもつ利用者と接することになるでしょう。十分な知識をもつようにしたいものです。









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Posted by 2人3脚 at 07:00Comments(0)医学講座

2009年12月11日

杉山Drのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状
                    (認知症の人家族の会 副代表杉山孝博医師より)

4.心不全とは



心臓の働きが低下して、全身に血液を十分に送り出せなくなった状態をいい、3大死因(がん、心疾患、脳血管疾患)の1つです。血液の循環が悪くなるため、動悸や息切れ、咳や痰、むくみ、食欲不振などの多彩な症状を示し、症状がさらに悪化すると、呼吸困難、意識障害を起こし死に至ります。



[心不全を起こす主な病気]

高齢者の場合、心不全の原因となる基礎疾患は、狭心症、心筋梗塞などの心疾患、呼吸器感染症、腎臓病、過労、貧血等となっています。「人は血管と共に老いる」と言われますが、老化に伴い動脈硬化が進行して様々な病気を引き起こします。心臓の筋肉に血液を供給している冠状動脈に動脈硬化が起こり、狭くなったり詰まったりすると狭心症や心筋梗塞が出現します。


高齢者は、老化による肺活量の低下、痰の喀出(痰を吐き出す)機能低下、さらに免疫力の低下などにより、肺炎等呼吸器感染症を起こしやすいのです。このとき心不全を起こしやすいのです。心不全を合併すると呼吸器感染症は治りにくくなるので、悪循環となりがちです。また、心機能、腎機能、呼吸機能などの予備力の低下から、輸液や輸血の量が適切でないと心不全を起こすことがあります。ステロイド剤や心臓の薬によっても心不全は発生します。




[心不全の治療]

ここでは専門的な治療(急性期の心筋梗塞など)については触れず、一般的な治療について考えて見ます。
肺炎など原因疾患がある場合、その治療が第1です。心不全は、水分や食塩の成分であるナトリウムが体内にたまっている状態ともいえますから、塩分制限が基本的には必要です。主な薬物療法は利尿剤、強心剤、血管拡張剤などの投与です。これらを適切に使用すれば症状は大きく改善します。呼吸困難の強いときには起座位(水平でなく体を起こした状態)をとると症状は軽くなります。急性期や慢性期の呼吸不全を合併した心不全では酸素吸入も必要になります。同時にタバコなどの悪化因子を出来るだけ取り去ることも大切です。





[介護ポイント]

(1).高齢者の心不全では、若い人と比較するといろいろな要素がからみあっているため、まず、心不全を疑う症状(息切れ、 咳、痰、むくみ、食欲低下、呼吸困難など)がでてきたら、正確な状態の把握と治療方針を立てるために医療機関を速やかに受診することが大切です。

(2).突然の胸痛、発汗・顔面蒼白・苦悶感などが現れた場合は、ためらうことなく救急車を呼ぶことです。

(3).高齢者ははっきりした症状を表さないことも多いので、元気がない、食欲が落ちた、尿が少ない、呼吸が荒い等の場合に は、一応心不全を疑ってみます。

(4).状態が安定したからといって、勝手にに治療を中断しないことです。

日頃から以上のことに注意して観察が行えるよう、医療チームのスタッフと連携しながら介護していきましょう。








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Posted by 2人3脚 at 14:31Comments(4)医学講座

2009年12月10日

杉山Drのやさしい医学講座

第1章 高齢者の疾病と主な症状 
                    (認知症の人と家族の会 副代表 杉山孝博Drより)

3.白内障

「物がはっきり見えるようになりました。色彩が鮮やかにおなり、世の中がが明るくなった感じです。テレビを見るのが楽しみになりました。」私が訪問診療をしていて、1ヶ月前に白内障の手術をされたばかりの患者さんの言葉です。



人は、すべての感覚情報のうちで約80%を視覚情報として得ているといわれています。そのため、視力障害は日常生活のうえで大きな支障をきたします。白内障は、カメラでいえばレンズの役割を果たしている水晶体が濁ることにより起こります。加齢に伴って水晶体に変化が起こって濁るのが老人性白内障です。糖尿病や肝臓病などの全身疾患により白内障が出現することがあります。これを併発性白内障と呼びます。外相によって水晶体が傷ついても白内障は起こります。




白内障は、原則として徐々に進行していきますから初期には自覚症状はありません。濁りが進行していくにつれまぶしさやかすむ感じが出現します。昼間に強い光を受けると水晶体の濁った部分で光が散乱するため、非常にまぶしく感じて視力が低下することがあります。すりガラスを通して物を見るのと同じですから、かすんで見えにくくなります。以上のような症状が出てきたら白内障を疑うべきでしょう。さらに進行すると失明に至るほど進行します。


白内障の症状は濁りの程度や分布などによってかわりますので、治療の仕方も視力だけでなく、生活上の障害をもたらす様々な症状を考慮して決められます。白内障の進行を遅らせる効果を持つ点眼液による治療も行なわれていますが、ある程度進行した白内障では効果が期待できません。そのような場合には手術が行なわれます。




白内障の手術は、濁った水晶体を取り除いて、眼内レンズを移植する方法が基本的になっています。白目と黒目の境を切開するだけで、安全に短時間で実施できるようになっています。眼科医院によっては入院しないで外来手術をしているところもあります。



糖尿病や高血圧症などの合併症を持っている人や、ブドウ幕炎などの眼疾患を持っている人は、硝子体や網膜などに病変があって、白内障になっている水晶体を除去しても視力が回復しない場合があります。眼科の主治医から術後の機能回復がどの程度期待できるかしっかり説明してもらっておくことが大切です。



かって、眼内レンズの健康保険の適応がなかった時代には、片眼デ20数万炎の費用がかかりましたが、現在は健康保険で認められておりますから、経済的な心配をしないで手術を受けられるようになりました。冒頭の患者さんの言葉にあるように視力が回復することは、生活の意欲を高めるものです。白内障の手術は前向きに考えたいものです。








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Posted by 2人3脚 at 09:00Comments(0)医学講座